ミッドナイトスワンのレビュー・感想・評価
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なぜ自分らしく生きてはいけないのか。
ストーリーはシンプルです。登場人物の心情に沿って観ていくだけで、言葉にしない思いがビンビン伝わってきました。ナギサさん、イチカちゃん、友人のリンちゃん、イチカのお母さん...etcどんな境遇であれ、自分らしさと責任(期待されている役目)のズレがある。優しい人ほど期待を優先し、応えてあげようと無理めに頑張る。自分らしさがどんどん遠去かっていく。
でも自分らしさを出すのは、勇気が要ります。自分を出せば、嗤われ、蔑まれ、嫌われる。誰かを困らせ、失望させ、不機嫌にさせる。そしてついには犠牲にし、幸せを壊してしまうかもしれない。自分を出すのは、わがままで反社会的で、調和を乱す行為なのか。そう問いかけられている気がします。ジェンダーがテーマのようで、実は人類共通の問いです。
自分が望む自分と、みんなが望む自分。
中身と外見。
本質と世間体。
ズレが大きいと苦しみも大きい。どう重ねればいいのでしょう。
ナギサさん、はじめは意地悪な人。イチカちゃんは、変な子(全く口をききませんから)。でもなぜ意地悪か。なぜ口をきかないのか。
世の中に、人間に、突きつけている。
どうせみんな優しさも愛も人間らしくありたい気持ちもないんでしょう。
人に酷いこと言っても恥も感じないんでしょう。
同じじゃなきゃ許さないんでしょう。
それならこっちも期待しない。完全防備。ガチガチの鋼鉄並みのシールドで、心を覆い隠す。
やられたらやり返すだけ。
でも、同じように、自分にも突きつけている。
やられるからやり返す、そんなこと本当はしたいわけじゃない。傷付いたからって誰かを傷付ければ、そんなことをしている自分がもっと嫌になる。
袋叩きにあわないよう強く見せるしかない。一人でも生きていけるように。
でも頑張っても頑張っても、楽にならず光も見えない。自分を守る殻だけどんどん頑丈になっていく。
「どうしてわたしばっかり...」夜更けの部屋で、絞り出すように泣くナギサさん。
辛いねぇ..と胸が詰まり、思わず声をかけたくなりました。
あなたばっかりじゃないよ。
ジェンダー関係ない。これは誰にでも共通の問いかけです。肌の色や国籍、職業、学歴、年収、外見、出自。差別したい人がいる限り、なんでも差別の基準になり得ます。
なぜ自分が自分らしく生きるのを、認めない人たちがいるのか。
自分らしく、いていいよ。
なりたい自分に、なっていいよ。
ナギサさんはなかなか自分に言えなかった、でも誰かに言って欲しかったその言葉を、イチカちゃんには言ってあげられたのだと思いました。無言の言葉で。
無言の言葉を聴く耳を持つ人は少ない。でもイチカちゃんにはちゃんと届きました。白鳥は美しい佇まいの下で、必死で水を掻いている。ナギサさんもイチカちゃんも、誰でも、スワンなんだと思います。
たすきは渡されました。こんな形のハッピーエンドがあろうとは。自分らしく生きる、という聖火はまだちゃんと灯っています。国内だけでなく、世界の皆さんに観てほしい作品でした。
女性と母の話
草彅君とバレリーナの子との関わり合いが素晴らしい!
ツヨポンのスワンレイクの踊りは優れもの。
凄い
心を揺さぶる作品
久しぶりに心から涙が溢れるような作品に会いました。生きているとなんで自分だけ苦しいのかという思いになる事がありますが、凪沙の苦しみは深く悲しくも避けられない不条理に被さるもの。だけれどもまだ幼い一果を守るために持てるもの全てをかけて生きようとする姿が、痛みを分かる人間だからこその愛と優しさに満ちていて、ただ心が震えるばかりでした。
草彅さんのことは国民的スターの頃から良く知っていたはずなのに、全く元の存在を意識させない演技で圧巻でした。本当の女性になりたかったひとりの人間の人生の苦悩を細やかに演じていて、映画を見終わっても悲しいのか分からない心の震えがまだ残ります。苦しい時、何処かで誰かも苦しんだり頑張っているんだろうかと、生きる悲しみは皆背負っているのだと、これからはそう思えるのかも知れないです。
珠玉の名作
心揺さぶられる映画は今までいくつか見ましたが、魂に突き刺さって、突き刺さったものが未だに抜けない経験をしたのは生まれて初めてだ。
これほど切なく美しい映画は見たことがない。
そして、温かい。
心がいっぱいになり、時に心がしめつけられ、自然に涙が溢れ 泣きっぱなしだったが、悲しい涙だけではなかった。
スクリーンの中に俳優 草彅剛はどこにもいなかった。凪沙が精一杯 全力で駆け抜けたその人生をノンフィクションで見ているようだった。
愛おしい我が子を見つめる慈愛に満ちた優しい眼差し、全身から溢れる幸福感。
凪沙は母そのものだった。
どんな人にも「なんで私だけ・・」と悲しい思いをした事があるだろう。自分の生い立ちから今までの人生について深く考えさせられた。人生観さえ変えられた気がしている。
何より、とにかくこの作品は素晴らしい。
映画史上に残る珠玉の名作で、見た人々の心にずっと残るそんな作品だと思う。
私はこの映画に出会えた事を心から感謝している。
まさかの全裸監督繋がり
「半世界」観たのでねえ。
まだ上映してたので草彅剛さんの主演作も観ようかと。(だからって「こち亀」は観ないぜ)
ジャニーズ時代から演技には定評の有った草彅剛さん。ドラマだが癌患者や父性の無い父親やヤクザからフードファイターまで演じて来た演技の幅有ればこそ、今回のLGBT役も引き受ける事が出来たのだろう。
でも流石にジャニーズのままなら今回の役は無理だったかなあ?そう思えるほど今作では凄い演技を観せてくれた。
同じ元SMAPの木村拓哉さんはホッケー選手やパイロット、レーサーにボディガードに宮本武蔵と、正にHEROを演じて来たわけだが、真逆と思える作品に出演して来たのは、きっと偶然では無いんだろうなあ。
そんな彼の集大成とも言える演技を、この作品では観る事が出来ます。
あちらの世界は色々複雑らしく、単なる女裝、男装趣味から、異性への憧れから異性を真似る方。異性の服装をした上で同性を好む方。自分の性を受け入れ同性を愛する方。
その中でもおそらく1番大変なのが、今作の主人公の様な自分の性を受け入れられない性同一性障害の方たちだろう。
この作品でも週イチでホルモン注射を打ち、そのせいで情緒不安定になり精神安定剤を飲んで号泣。というリアルで生々しいシーンが有る。
更には性転換手術までがリアルに描かれているので、観る方はなかなかの覚悟が要ります。
自分は想像していた内容とはかなり違っていたので、結構な衝撃を受けました。
残念ながら差別や偏見が無くなる事は無い。突き詰めれば好きか嫌いかだからだ。
しかし今は多様性を受け入れる時代だ。自分の様な昭和のオジサンはその事を夢々忘れない様にしないといけない。何処かの会長さんみたいにならない様に。
少し話が逸れたな。
今作のもうひとりのヒロイン、服部樹咲さんは、きっとこの先スケジュールは埋まっている事だろう。こんな新人を放っておくなら、日本の映画界は本当の阿呆だ。
非情に重い話を、この新人の輝きが救った作品だと思う。
その他にも、このところ振り切った演技を観せる水川あさみサン。憎たらしい役を憎たらしく演じた佐藤江梨子さん(キューティーハニーだよ)。ヒロインに嫉妬しながら惹かれるという難しい役を演じたもう1人の新人、上野鈴華さん。
内田英治監督は女性の演出が上手い方なのだなあ。とてもそうは見えないが。(いかん、これは偏見だな)
インパクトの有る、間違い無く女性映画だが、性別関係なく観て貰いたい作品。
覚悟は要るが、
オススメ。
追記
このレビュー書いていて無性に「フードファイト」が観たくなった。なんでこのドラマが封印作品なんだ。
作品には全く罪は無いだろうに。
この辺にも差別や偏見に繋がるものが有る気がするな。
2度は見れない儚い物語
非支持。
リアルの叫び
絶品です
つよぽんおめでとう
丁度草彅剛が結婚の日にレビューします。
この作品見逃していて「まあいいか」と正直スルーするつもりでしたが、いろいろな人がこれを観なければ映画ファンじゃないといわれ滑り込み観賞。
内田英治監督素晴らしい作品をつくりました。LGBTものとしては金字塔じゃないでしょうか。草彅剛のナギサはリアルに彼はジェンダーと思ってしまいました。他のキャストも素晴らしく水川あさみもはまり役だったし、ニューハーフの同僚のミズキ役の田中俊介は初めて知った役者でしたが良かったですね。ジェンダーの母性たるものを繊細に描く脚本も秀逸でした。
いちかのLUMINE ESTの前での二度の上京シーン。対比の演出になりますがこのシーンが個人的に大好きです。好き嫌いはわかれるかもしれない作品ですが心に響くことは請け合いです。
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