ミッドナイトスワンのレビュー・感想・評価
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ヒリヒリするコミュニケーション
描きがちな恋愛描写は一切排除
あくまで個として女性であると描くことでより彼女の信念の強さを感じました。
少女との絆が深まって行くところも非常に感性揺さぶられます。
公園でのダンスシーンは心から美しいと思いました。
最後、結末を迎えエンディングが終わっても、涙で席を立てない方が周りにチラホラと見掛けられました。
素晴らしい作品です。
引き込まれた
久しぶりに映画館に行きましたが、最初から映画の世界に引き込まれました。演技ではなく草彅さんに憑依したとしか思えない凪沙が確かに存在し、一果への愛情ある微笑みは、とても奇麗でした。大切な人の為の決断が悪い結果を生み、自分の為に苦しむ姿を見て互いを思うと、切なく苦しくなりボロボロに泣きました。でも、一果の心の中には生き続ける凪沙の姿が見え、この映画を観た人の心には二人は存在し、忘れない限り一緒に生き続けるのでしょう。映画ではなくドキュメンタリーのようで、出演者のみなさんが素晴らしく、内田監督の作品の原作本も読んでからもう一度観たいと思います。この作品を通して、自分には想像出来ないくらいの悩みを持った方が存在し、それは人によって異なり、自分にとっては何でもない発言も人にとっては死にたくなるほどの悩みがあったりする。色んな気付きがある深い映画で、この作品に出会えたことに感謝です。
心に響いて優しい気持ちを余韻に残す映画
主人公がトランスジェンダーという事情で生き辛さを抱えているのだが、この作品の登場人物殆どの人が何らかの生き辛さを抱えながら懸命に足掻きながら生きていると感じた。脚本を書いた内田監督始めキャスト、スタッフ全てが、この登場人物…特に凪沙と一果を愛していて、2人の優しくて儚いラブストーリー(男女愛だけがラブストーリーじゃない)を美しさと残酷さと至極なバレエシーンで表現している。
中盤からの展開に賛否両論あり、トランスジェンダーを感動ポルノ扱いだという方も居るが、監督キャストスタッフ皆、凪沙と一果を愛し、彼女らの物語の中から色んな想いを馳せてほしいエンターテイメントと感じた。
私個人としては『感動ポルノ』は某チャリティ番組のようなドキュメンタリーで実在の人物を出演させて人々の感動を呼ぼうとする行為の方に感じてしまう(個人的意見)からだ。
キャスト陣のドキュメンタリーを感じてしまうような演技に『感動ポルノ』と表現してしまいそうだが、演出意図として音楽や役者の如何にもの芝居から泣かそうとしているように感じられない。
その為か、観賞後の余韻が登場人物の行く末や幸せであってほしいという優しい気持ちになってしまうのかもしれない。
キャスト…主演の草彅剛さん、期待以上の素晴らしさ、御本人は見当たらず、男性の扮装になっても凪沙の眼であったのに驚き、対するヒロインの一果役服部樹咲さんが素晴らしい…初演技とのことだが、初めから一果の心情の変化や態度、服装、眼や表情から伺えて、監督の演技指導、順撮り、本人の真摯な吸収しようとする姿勢、共演者との芝居なキャッチボールの賜物ではないか…特技のバレエは素人の目から観てもなかなかのモノ(下手な所から上手くなっていく段階も絶妙)とお見受けし、今後も活躍が楽しみな俳優の一人となった。
一果の友人りん役上野鈴華さんも素晴らしいバレエと一果との友情や嫉妬心を描いて、いてとても良かった。
バレエ講師実花役真飛聖さんは、今作一フラットで偏見の無い役柄で、台詞のさりげない一言から作品の優しい空気をより一層高めてくれた。凪沙の笑顔を引き出した時のセリフがもう絶妙。
一果の母早苗役水川あさみさんのやさぐれて僅かに残る一果への愛情が独りよがりで…絶妙な心情を上手くやっていて、憎らしさもとても良かった。
出演キャスト皆さん素晴らしく違和感無く作品に没頭できる演技と言えないくらいに自然でした。
渋谷慶一郎さんの音楽も素晴らしく、要所要所に演技に寄り添って世界観を高めてくれる。サントラが売れていると聞くのも頷ける。
映画の後半の展開が早く観る者の想像の余白が多いので、気になる者は小説を購入してもいいかも…
が、私は映画の終わり方が好きではある。
キャストの感情が揺れ動く眼の芝居、圧巻のバレエシーンを考えると、このコロナ禍でも劇場に脚を運んで観ることを是非ともお薦めしたい映画であることは確実です。
ミッドナイトスワン(再掲、訂正、考察など追記あり)
劇場から出た時、色んな衝撃が大きくて、地に足が着いてないような浮遊感にクラクラして暫くぼーっとしてしまった位余韻が凄かった。
メイクは当然しているのですが、骨格などは草彅剛そのままで、この日は舞台挨拶があったのでご本人を見てからの本編でした、あっこれ本人見てからじゃ失敗したかな、集中できるかなと過ぎったんですけど、いざ上映がスタートし、凪沙が出てきたらもうそこには草彅剛の影すらなく、凪沙がそこに居たのです(手の動きや優雅にタバコをふかせる姿がもう凪沙なのです)
この作品には日本社会の問題や縮図の描き方もリアリティがあり、この映画を見てから現代に起きてる色んな事件や出来事に照らし合わせて考え見る事が出来たり、俯瞰で見られる様になったかなと。
バレエの先生からお母さんって言われてどれだけ嬉しかったのだろう、嬉し恥ずかしそうにハニカム凪沙がたまらなく、ショーパブで喧騒が起こり一果が静かに踊りだした所に凪沙が振り返って見惚れる所、凪沙が階段に座り一果を眺めてたり、二人でバレエの練習してる所、海での凪沙に踊ってと頼まれ踊る所、場面場面に出てくる一果のバレエが美しく、儚くて、愛しくて、何に泣いているのか、そんな場面じゃないのにポロポロとしてる事が多かった。
衝撃的なシーンもあるし、見る人によってはショックを受けるシーンもあるかもしれません、海でのシーンや凪沙の変わり果てた姿は悲しい結末を連想してしまうけど、本当のお母さんから一果を取り戻そうとしたが、出来なかった...でもそこで私には諦めや失意を感じなかった、寧ろ私は私で一果を支えるわって強い意志すら感じた。なぜ東京でレッスン受けてた先生が広島でも一果のレッスン受けてたのだろうと疑問が出てきて、あ、これって凪沙が陰ながら支援していて、それは自分のケアを削ってまでやっていたのでは無いかと...けっして正しい決断では無いけれど、これも無償の愛というものなのか...。
もし友人などで元気な姿から憔悴しきった姿を見たら自分はあんなに受け入れて、優しく面倒見てあげられるかな?とも考えて...その点では一果は最後まで凪沙に寄り添いお互いを支え合っていた、だから悲しいだけじゃない、光や温かさを感じたのです。
一果がバレエのため海外へ渡った時、トレンチコートを着ている後ろ姿が映し出され、これはもしかして凪沙の形見を着ているのかなって、後ろ姿も一果なのに一瞬凪沙の後ろ姿の様に思えて。何編も有るシーンの中で一番溢れてきたかも。エンドロール後の二人の姿は白鳥の湖になぞらえるなら生まれ変わった後の二人の姿なのかなとも考えて...考察したらキリが無いんです!プツンと切られてたりして、決定的なシーンって書かれてなかったんですよね、だからこそこんなに色んな説が出てくるのかも。なのでこの映画は見た方に委ねられている、BadでもHappyでも如何ようにも好きな結末を描いていいのかなって原作はまだ未読などで、原作とも照らし合わせてもう一度見てみたい。
ただ、登場人物の中でりんが...。一見お金持ちで、バレエへの資金もお洋服なんかも困らない程持ってるのに心が寂しくて、母親からの期待やプレッシャー、一果に抜かれるかもしれない焦りや嫉妬、個撮は絶対ダメって言ってたのに誘導して陥れようとしたのかな、でも出来なかった裏切れ無かったのだろうか、怪我からのバレエが続けられなくなってしまった時のバレエしか価値が無いと言われてしまった事、一果の肩を借りて号泣する所はグサグサ刺さったし、ここまで追い込むかってくらい残酷だった、本番直前の一果へ電話した事や、結婚パーティで屋上が映し出された所から嫌な予感はしていて、段に乗った時あっ!と思ったけど、無くて、一果の発表会が始まったと同時にりんも踊り出して、凄く魅力的な表現で、楽しそうに軽やかにそのまま飛んでいってしまった...表情と行為が一致しない様な、あまりにとの対比に衝撃が強く、りんが一番心が痛くてしんどかった。
映画でこんなに影響を受けたのは初めてかも知れないです。
見て、知れて、この映画に出会えて良かった。
予想以上に深い作品
観賞前に60秒予告を観て
セリフのない100秒を観ただけで
予想していなかった世界観だと思って
映画館で本編を観て
さらに作品の深さにどんどん引き込まれて
いきました。
凪沙の女性として暮らす
小さな幸せと現実の生きづらさ。
草彅剛さんの演技を通り越した
凪沙としての生き様が
見事でした。
これほど違和感なく演じられるとは、、、。
一果の目や健気さ、バレエへの執念
服部さんもまた一果そのものでした。
2人の心が寄り添う時間
美しさと逞しさをずっと味わっていたかった。
観てからこうして感想を書けるまで
時間がかかってしまうほど
言葉にするのが難しいくらい
深く、切なく、美しい映画館でした。
凪沙のことが頭から離れないので
また、観に行きたいと思っています。
心にいつまでも残る名作
ありがとう。凪沙、一果。そんな気分。
凪沙、美しい人。
性的マイノリティという途方もない葛藤と深い苦しみと生きづらさを見事に体現した草彅剛、本当に素晴らしかった。
この容赦ない世界で独りで生きていくには強くなるしかない。高いヒールを履きこなし裏町を生きるその姿は強くて、厳しくて、どこか哀しげで、でも人間味があって、優しくて。
凪沙という一人の女性が歩んできた人生を想って胸が熱くなった。
誰だって自分のことで精一杯。毎日少しずつ貯めたお金を眺めながらため息をつく。これが一杯になったらこの人生がいかばかりか輝くのだろうか。
霧がかった凪沙の日常に一果が光を与えてゆく。天使の羽を身に纏いくるくると舞いながら。凪沙の瞳がその眩しさに吸い込まれてゆく。それはなりたくてもなれなかったもう一人の自分。
二人でバレエの練習をするシーン大好きです。まるで親友のように。姉妹のように。母子のように。この柔らかな時間がずっと続けばいいのに、そう思った。
一果役の服部樹咲ちゃん。初々しかった。バレエシーンもめちゃめちゃ見応えあります。
切ない映画だったけど、別れと悲しみと生きてゆく勇気と間違いなくそこにあった愛を持って、一果が自ら切り開いた道を真っ直ぐに歩いていく。
そして真っ白な白鳥の衣装で堂々と力強く舞い踊るその崇高さにいつまでも拍手を送りたくなった。
言うなれば現代産オペラ白鳥の湖
まず凄かったのが映画鑑賞後エンドロールが終わり照明が付くまでほとんど誰も席を立たず、そんなことあるのが珍しい。
しかし自分自身も動けなかった。これとよく似た現象が起きるのはチャイコフスキーの悲愴を聞いた後。悲しくて悲しくて何度も泣いた後動けなくなる芸術作品。
この映画も白鳥の湖を特別に取り上げ、チャイコフスキーをよく捉えている。チャイコフスキー自体ゲイであり、白鳥の湖は魔女の魔法で白鳥にされてしまった女性の物語で、心は女性であるにも関わらず女性でないまま恋に落ち恋を奪われる悲劇で、ゲイの悲劇に相似している。この映画も呪われた運命で男性の姿に生まれてしまった女性達の4羽の白鳥の舞踏から始まる。
決して得ることができない希望、得る寸前で得られなかった希望を求めることは人間の最大の悲劇と思われるが、この映画ではその悲劇のドラマと、その悲劇の中から芽生えた奇跡のドラマが描かれていて、鑑賞後感情の渦に巻き込まれる。
強いドラマにするために、説明的な場面や台詞がブツブツ省略されているように思う。
演者の方々が自然体の演技でリアリティがあるし、
一果をはじめ、りんもりん母もバレエで身体を作ってきた人たちなので、歩く脚の様すら本当のリアル。
その対比で逆にストーリーのリアリティも求めたくなるかもしれないが、
ほんのちょっと挟めばいいセリフや場面を入れないのは故意の演出と思う。
唐突に出来事が起きる展開は、オペラの悲劇を見ている感覚に似ている。
一果がコンクールで踊り出せなかった場面など、くどい説明がなくて良かった。
生みの母に縋りたくなる子供の甘さに育ての母が負けるという、昔からの古典的なそして普遍的な悲劇を説明なしに映像で届けてもらった。
母になれるという希望が目の前を通りすぎ、それに追い縋り性転換手術を受けた凪沙の「母親になれるのよ」という台詞はとても恐ろしかったし、水川あさみの歯を向いて子の所有を主張する女のエゴも恐ろしく、どちらも女性性を正面から描いていて素晴らしかった。
りんの描写も素晴らしかった。ケガの前はバレエすることに苦痛すら覚えて非行に走っていたのに、バレエを失って希望が訪れるところか、バレエを失ったことが取り返しが付かないことに気づいたというように受け取れた。
強い悲劇が重なることに疑問を抱いてはいけないように思う。
オペラなら悲劇が重なるもの。
科学が未発達の時代に人々はオペラを見て人生はこんなものだと皆で涙して、自分の人生の悲劇を慰めた。
ミッドナイトナイトスワンに描かれている悲劇もまた人類が消化できていない現実。
ただ政治や科学はこれを社会に消化できる力があるはず。
共感性が乏しくなってる現代にはこれくらい強いドラマ性で共感を呼び起こさなければ消化に働かないのかもしれない。
性転換手術後の凪沙の末路は、本当に悲しい。
育ての母でも一人の人を自立させる助けができることはかけがえない事実で
生みの母になれない悲しみも超越する尊い人間の事業なのであり
このことは性を超えた人類愛でも行えるはずだけれど
ただ凪沙は、女性として生を全うしたい欲求に突き動かされた人で、
そのことがこの映画の主題であり最大の悲劇だった。
圧倒的な佇まい
めちゃくちゃ良かった
15分の予告を見て、すぐに見に行きたくなって一人で見に行きました。
悲しいけれど、幸せも感じられる、あたたかな気持ちにもさせてくれる、「見に来て良かった」と心から思えた映画でした。
主人と一緒にまた見に行きたいです。
雑な描写が気にならない方向け
究極に美しい映画
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