ミッドナイトスワンのレビュー・感想・評価
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まずは観るべき
鑑賞前にこのサイトから多くの方々のレビューを読みました。映画館に足を運ぶ動機付けになりました。鑑賞後もまた再読させていただき、沢山の方々がご自分の思考と心と経験で各々レビューされていると実感しました。そういうことからいっても、とても良い「映画」であり、観るべき作品だと思います。
突っ込みどころや、もっとこうしたらいいのにという箇所とか、多々ありますが、だからこそ、隙のない完璧な作品(構成や演出)より逆に、色んなこと(ほんとに色んなこと)を考えてしまうし、何より、登場人物が心に棲みついて離れません。離れてくれません。だって、この映画には、人間そのものがいるから。
アクション大作ではないけど、これはスクリーンで観るべき映画だと思います。人間を感じるために。バレエのシーンも勿論ですが、それよりも、草薙さんの表情や動きを大きなスクリーンから全身で私たちが受けとめるために。
苦しい・・・でもまた観たくなる
一度観てこれは辛くてもう観れないと思ったが時間が経つとまた観たくなる不思議な映画だった。
社会の片隅で置き去りにされたような二人がいつしか心を開き親と子のような絆を育んでいく。
胸が苦しくなるような展開もあるが、決してかわいそうな人たちの映画ではない。多くの女性が母として命を繋いできたように凪沙も一果の才能を育てることで命を繋いだ。ラストの一果が踊るシーンは力強く美しい。彼女はこの先どんな困難も乗り越えるだろう。それは何があっても強く生きていくという事を私達に見せてくれる。トランスジェンダーの問題作として取りざたされる事が多いが、この作品は人が人として生きることをテーマにした作品だと思う。
誰のための映画か?
過剰セリフ、過剰演出、過剰音楽…。
凪沙の「よしよし」×3「…綺麗」×3など、一回言えばいいことを何回も言わせたり、バレエの先生の「…変な子」、ラストの「見てて…」など観客に想像させれば良いところを独り言として喋らせる。
三者面談での先生の対応、警察官の機械的な仕事ぶり、就活での、あまりにも失礼な面接官の態度など、ザ ・ステレオタイプすぎる描き方には違和感を感じざるを得ない。
そして要所要所で、さぁ、泣いてください、とばかりにかかる音楽。呆れるほど説明的。
役者とプロットは、いいだけにもったいない。草なぎ剛の役作りと、新人・服部樹咲の佇まい、思春期特有のおでこニキビ 、バレエには目を見張るものがあった。
この映画を観て1番強く感じたのは、現実のセクシャルマイノリティの人達に対して失礼だということ。LGBTを人生の底辺みたいに描くべきではない。始終、社会の日陰者として描き、何をしても上手くいかず、親戚にすら罵られ、挙げ句の果てに股間を血だらけにして死んでしまう。あれじゃ凪沙さんは浮かばれないよ。
弱いものを慰み者にしたお涙頂戴番組のように趣味が悪い。この映画を見てセクシャルマイノリティの人たちがどう感じるか?
マジョリティの側から作った映画にしか感じないから胸糞悪い。過剰な演出やセリフは、マジョリティを感動させるためだけのもので、LGBTへの理解や共感は感じられない。
この映画を観てただただ感動してるようじゃ、果たして本気で彼らに寄り添えてるのか疑わしい。
何度も観たくなる作品
トランスジェンダーの凪沙とバレエの才能を持ったネグレクトを受けてきた少女一果の疑似親子の物語。映像も音楽も切なく儚く美しい。凪沙の一果への愛は母性と言われるけど、私は凪沙は自身の境遇を一果に投影して、そして自身がどんなに望んでも手が届かなかったものを一果の中にに見いだしたのかなと感じた。上手く言えないけど自分よりも自分自身になったというか。自分を超えた自分というか。でも愛とは特に親の愛とはそういうものかとも思ったりもした。トランスジェンダーの描かれ方には賛否あるんだろうけど、私にはとにかく色々考えるきっかけになった映画だったし、痛みだったり希望だったり色んな感情を抱いた忘れられない作品になった。役者の方の演技は皆さん本当に素晴らしかった。特に主演の2人、草彅剛さんは演技というか凪沙そのものだった。ありとあらゆる賞を総なめにしてもおかしくないというかそうでなければおかしい。一果役の服部樹咲さんは新人とは思えない存在感。そしてバレエシーン。バレエ映画としても観る価値がある。とにかく一度映画館で見ることをお薦めしたい。
主人公はいいけど…
好きじゃなかった…。
なんでだろうか、主人公の女の子は良かったし…理由を考えてみた。
まず、この映画を知ったのがネットニュースで草なぎ剛の写真があってLGBTを描いて海外から上映を希望する声が高いと書いてあったこと。このニュース記事から入ったので、期待度が高くなってしまったのではと思う。
悲惨さや悲壮感を出したかったのだろうけど、手術場面やオムツのくだりの生々しさは必要だとは思わなかった。
何をテーマに描いたのだろうか?
映画を思い出しながら考えてみて、バレエという、人生に夢中になれるものを手に入れるきっかけを作ってくれた友達も実はLGBTだった、そしてその子の突然の自殺。草なぎ剛が演じるLGBTの"お母さん"役の元同僚が風俗の仕事につくこと数日過ぎて警察沙汰を起こして「なんで私たちばっかりこんな目に遭わなきゃいけないの」という事を言っていた。"お母さん"の仕事の面接でのオヤジ課長の無意識な差別的同情の言葉、悲惨な最期。オカマバーの同僚が「普通の女よりお金のかかる身体」と嘆いていたり、映画の随所にLGBTに対する生きにくさが散りばめられていた。やはりテーマはLGBTなのだと思う。
これって、逆に差別にならないの?!なんだかふに落ちない。ネグレクトを受けていた女の子との心の通い合いをテーマにしたいだけでこんなに"LGBTの人はは辛い"というのを出しては来ないだろう。この作品を描きながら酔ってる感じがした。
エンドロールで主人公の女の子の名前の横に(新人)と付けてるところもなんだか…何が言いたいの?!と思ってしまった。
長すぎる間も日本映画で多用しすぎるんじゃないかな…。
…と、文句ばっかりな感想になってしまった。それだけ私は期待高く観てしまったんだろうな。でもちょっと好きなのはもう会えない人を想いながら、一緒に公園で踊ったシーンを思い出すところ。
育てる
今年、この映画を観ないと絶対損します。
弱さを肯定しない、弱さを否定しない、美しい映画
ネタバレなしの前評判を漁るほど映画館で観たい気持ちが募って、今日足を運んで来ました。観ているうちにいつの間にか、静かに、凪沙に心が寄り添っていき、ラストシーン、凪沙が自分に乗り移ってきたかのような思いでスクリーンを見ながら涙を流していました。バレエを踊る一果の姿はどのシーンもとても美しく、スクリーンで観て良かった!と強く思ったところです。
一果と出会うまで、様々なことに踏み切れなかったのだろう弱く優しい凪沙。そんな自分自身に苛立ちながら生きてきた凪沙が、踊る一果に強く心惹かれ、一果を思うことで強くなれることを知った。しかしそれもまた側から見れば依存とも言える凪沙の弱さであるところが、何とも悲しく、美しい。
トランスジェンダーが、というより、人の弱さ、そこから来るどうしようもない運命について、肯定も否定もできないと思ってしまったというのが、観たばかりの今の正直な思いです。不幸だったのか幸せだったのかも決められない、決めてしまってはいけないと思えるところが、この映画の魅力なのかもしれません。
素晴らしい
海へ行くより病院へ
お母さん、って凪沙さんの事ですね
うちらみたいなのは強くならんといけん!
というセリフから
どんどん前向きになるイチカちゃん。
イチカを迎えに行った捨身の凪沙さんが
真っ先に腕を見て噛んだ跡を確認するところで
イチカの精神状態を確認するところは
母親そのもの。
ラストのお母さん見てて
は凪沙さんへ、私強く生きるよ!という
マッサージで泣けました。
日本版ビリー・エリオット?
現在、赤坂ACTシアターで上演中のミュージカル『ビリー・エリオット リトル・ダンサー』との共通項がいっぱいなのでした。
① バレエの上手な少年少女が主人公。両方とも才能はあるのに経済的な問題がある。
② バレエは超有名作品の『白鳥の湖』が取り上げられている。本作では第2幕のオデットのヴァリエーション。
③ 主人公は同性から好意を持たれる。
④ 祖母役は両方とも根岸季衣。
⑤ バレエの先生は元宝塚歌劇団のトップスター。本作では真飛聖。ミュージカルは柚希礼音と安蘭けい。
主演の草彅剛が素晴らしい演技。新人の服部樹咲がバレエ場面も見事にこなしていました。特に指先が綺麗。最後の場面の指先から爪先までの美しいラインに驚きました。
宝塚歌劇団の元トップスターってみんなバレエの先生が似合うなあ。真飛聖もよかったです。
痛々しさの中に救いがある。
家庭環境に問題を抱えるバレエ少女のシンデレラストーリーと、
トランスジェンダーの男が心身共にズタボロになっていくさまが同時並行するお話。
▼葛藤を抱えるダンス少年が主人公の『リトルダンサー』と、ひたすら主人公がボロボロになっていくダーレン・アロノフスキー監督作品(レスラー、ブラックスワン、レクイエムフォードリームなど)の風合いがマッシュアップされたようなシナリオ
▽トランスジェンダーのなぎさがズタボロになっていくだけの映画だったら、痛々しいだけになっていたかもしれない
▽そこに逆境がありながらもキラキラ感がある少女のシンデレラストーリーがあるから、絶妙な塩梅になってる
▽ダーレン・アロノフスキー監督作品はひたすら主人公がズタボロに追いつめられていくお話が多い。心には残るけど、救いのないほど痛々しくてまた観ようとはあまり思えないことが多い
▽今作はがっつりめな痛々しさはあるものの、ちゃんと救いがあってまた観たいかもという気にさせてくれる
▼シナリオの世界観がきれいに三分割されてる
①絶望感を抱える主人公ふたりが対立する
②バレエによって主人公同士が融和する
③二人の主人公の明暗が天地に分けられ離別する
▽②→③の移行はやや唐突感があったけど、全体的に緩急が大きく、観ていてやはり心が揺さぶられる
▽シチュエーションが、ザ・東京感の新宿、のどかな広島、タイっぽい東南アジア、ニューヨークと、ガラッと変わるのもシナリオのダイナミックさを後押ししてる
▼やや過剰気味で派手めな演出が多い
▽主人公が「なんで私だけ・・・」というような、心の中の葛藤を台詞でしっかりしゃべったり、実家で修羅場むかえて胸が露わになったり
▽演劇のような派手な演出が目立ったが、あえて意図的にそうしたのではと思った
▽主人公ふたりは、どちらもバレエとショーパブというように、舞台の上で華やかに演じるキャラクター
▽この映画自体もまた舞台上の演劇のようなエンターテイメント性を帯びているとするならば、そんな派手めな演出は、全然おかしくない。むしろ効果的。
▼メインテーマのピアノの音楽が、がっつり坂本龍一「戦場のメリークリスマス」の中間部を意識して作られてるなぁ
▽音楽からもダイナミックレンジの大きい演出を意識的に狙ってるのが伝わる
▼いちかの親友や、ショーパブのオカマたちや、実家で修羅場中に奥のベッドに腰掛けるおばあちゃんなどの細かいキャラたちにも、自然としっかり記憶に残るような特徴を持たせていてすごい
▽★脇役でも衣装だったり、台詞だったり、小道具や、意外性のある主人公への動作で、印象に残すキャラクターにできる
▼女全開の草彅くん、女9:男1の草彅くん、女2:男8の草彅くんの、3つのフレーバーを楽しめる
▽本当に難しい役柄をやりきった草彅くんの勇気と努力とチャレンジ精神がすごすぎる。
▼勉強になったこと。東南アジアで性転換手術しちゃだめね。
▼なぎさが息絶えた海が、どうみても東京じゃない。
▽体調悪いのに東京からものすごい遠出したなぁ。そりゃ死んじゃうよ。。
名作
汚れた水槽
愛と性と命。
この映画を観た一番初めの感想は、自分らしく生きるというのはとても難しく、そしてとても美しいということ。
凪沙もいちかもりんも、様々なしがらみによって本当の自分を出せていなかった。
そんな似たようで全く違う環境の人たちがつながり、それぞれの自分を出していく。そんな映画だと私は思いました。
一番衝撃的だったのはやはり、りんちゃんの自殺シーン。
舞台が屋上だった時点で薄々勘づいてはいましたが、それでも息を飲んでしまうほどの迫力でした。
いちかとりん、お互いが全く違う場所で同じ曲を踊っていくところは何とも幻想的で美しいものでした。りんも笑顔で自由に踊っていて、飛び降りる時も死への恐怖なんか感じさせないぐらい軽やかで。一瞬、一昔前の映画「自殺サークル」に少し似ている部分があるなと感じました。
親に無理やりやらされていただけだったかもしれないバレエは、りんちゃんにとって大好きなもので、かけがいのないもので、いちかと繋いでくれたとても大切なものなんだとわかりました。
次に印象的だったのは凪沙さんといちかの海辺でのシーン。
砂浜で踊るいちかを見る凪沙さんの目は、間違いなく母親そのものでした。
性転換をしても本当の母親にはなれない。それでも凪沙さんはいちかの第二の母親であるんだということがひしひしと伝わってきました。
いちかの本当のお母さんも、ちゃんと母親の顔になっていて、いちかちゃんも明るくなって。
理想的、とまでは行かなくともそこにはちゃんと親子の絆がありました。
少し残念だと思ったのは所々が省略されていること。
時間的に仕方のないことだとはわかっているのですが、それでもいきなり何か月、何年も時間が飛ぶということに違和感を感じました。
そして、省略されてしまったであろう、ショートストーリーを見たいとも思いました。
例えば、りんちゃんがグレるまで、そして自殺するまでの心境や両親との関係、いちかのお母さんがいちかと離れている間の様子や、いちかに再びバレエをさせて凪沙さんに会いに行くことを許可したまでの心境、最後凪沙さんが息絶えた後に海に入っていったいちかちゃんが外国に行くまでのストーリーなど。
細かいところまでやっていったらあと二時間ほどは作れるんじゃないかと思えるぐらい、深い物語でした。
観てくれとしか・・・・
良い映画だった~!と簡単にお勧めできない。
胸打たれた場面を言葉で説明すると、実際より確実に安く浅くなるから
言葉にしたくない。観てくれとしか・・。
議論になっている部分もあるようですが、でも、役者の芝居と
映画とした構築されたあの世界を観て感じたものが全てだと思う。
トランスジェンダーがどうとか虐待がどうとか大事なのはそこではなかった。
とにかく、唇がわなわなと震えて観終わってからも何日も余韻が消えず
凪沙の言葉、あのピアノの音が目に浮かぶ。耳に残る。
母と弟が私の次に観に行ったが
感想を聞くと目を潤ませていた。
そして「言葉にすると安くなる・・」と話してくれなかった(笑)
もう少しユーモアとたくましさも欲しかった
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