ミッドナイトスワンのレビュー・感想・評価
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日本版ビリー・エリオット?
現在、赤坂ACTシアターで上演中のミュージカル『ビリー・エリオット リトル・ダンサー』との共通項がいっぱいなのでした。
① バレエの上手な少年少女が主人公。両方とも才能はあるのに経済的な問題がある。
② バレエは超有名作品の『白鳥の湖』が取り上げられている。本作では第2幕のオデットのヴァリエーション。
③ 主人公は同性から好意を持たれる。
④ 祖母役は両方とも根岸季衣。
⑤ バレエの先生は元宝塚歌劇団のトップスター。本作では真飛聖。ミュージカルは柚希礼音と安蘭けい。
主演の草彅剛が素晴らしい演技。新人の服部樹咲がバレエ場面も見事にこなしていました。特に指先が綺麗。最後の場面の指先から爪先までの美しいラインに驚きました。
宝塚歌劇団の元トップスターってみんなバレエの先生が似合うなあ。真飛聖もよかったです。
痛々しさの中に救いがある。
家庭環境に問題を抱えるバレエ少女のシンデレラストーリーと、
トランスジェンダーの男が心身共にズタボロになっていくさまが同時並行するお話。
▼葛藤を抱えるダンス少年が主人公の『リトルダンサー』と、ひたすら主人公がボロボロになっていくダーレン・アロノフスキー監督作品(レスラー、ブラックスワン、レクイエムフォードリームなど)の風合いがマッシュアップされたようなシナリオ
▽トランスジェンダーのなぎさがズタボロになっていくだけの映画だったら、痛々しいだけになっていたかもしれない
▽そこに逆境がありながらもキラキラ感がある少女のシンデレラストーリーがあるから、絶妙な塩梅になってる
▽ダーレン・アロノフスキー監督作品はひたすら主人公がズタボロに追いつめられていくお話が多い。心には残るけど、救いのないほど痛々しくてまた観ようとはあまり思えないことが多い
▽今作はがっつりめな痛々しさはあるものの、ちゃんと救いがあってまた観たいかもという気にさせてくれる
▼シナリオの世界観がきれいに三分割されてる
①絶望感を抱える主人公ふたりが対立する
②バレエによって主人公同士が融和する
③二人の主人公の明暗が天地に分けられ離別する
▽②→③の移行はやや唐突感があったけど、全体的に緩急が大きく、観ていてやはり心が揺さぶられる
▽シチュエーションが、ザ・東京感の新宿、のどかな広島、タイっぽい東南アジア、ニューヨークと、ガラッと変わるのもシナリオのダイナミックさを後押ししてる
▼やや過剰気味で派手めな演出が多い
▽主人公が「なんで私だけ・・・」というような、心の中の葛藤を台詞でしっかりしゃべったり、実家で修羅場むかえて胸が露わになったり
▽演劇のような派手な演出が目立ったが、あえて意図的にそうしたのではと思った
▽主人公ふたりは、どちらもバレエとショーパブというように、舞台の上で華やかに演じるキャラクター
▽この映画自体もまた舞台上の演劇のようなエンターテイメント性を帯びているとするならば、そんな派手めな演出は、全然おかしくない。むしろ効果的。
▼メインテーマのピアノの音楽が、がっつり坂本龍一「戦場のメリークリスマス」の中間部を意識して作られてるなぁ
▽音楽からもダイナミックレンジの大きい演出を意識的に狙ってるのが伝わる
▼いちかの親友や、ショーパブのオカマたちや、実家で修羅場中に奥のベッドに腰掛けるおばあちゃんなどの細かいキャラたちにも、自然としっかり記憶に残るような特徴を持たせていてすごい
▽★脇役でも衣装だったり、台詞だったり、小道具や、意外性のある主人公への動作で、印象に残すキャラクターにできる
▼女全開の草彅くん、女9:男1の草彅くん、女2:男8の草彅くんの、3つのフレーバーを楽しめる
▽本当に難しい役柄をやりきった草彅くんの勇気と努力とチャレンジ精神がすごすぎる。
▼勉強になったこと。東南アジアで性転換手術しちゃだめね。
▼なぎさが息絶えた海が、どうみても東京じゃない。
▽体調悪いのに東京からものすごい遠出したなぁ。そりゃ死んじゃうよ。。
名作
汚れた水槽
愛と性と命。
この映画を観た一番初めの感想は、自分らしく生きるというのはとても難しく、そしてとても美しいということ。
凪沙もいちかもりんも、様々なしがらみによって本当の自分を出せていなかった。
そんな似たようで全く違う環境の人たちがつながり、それぞれの自分を出していく。そんな映画だと私は思いました。
一番衝撃的だったのはやはり、りんちゃんの自殺シーン。
舞台が屋上だった時点で薄々勘づいてはいましたが、それでも息を飲んでしまうほどの迫力でした。
いちかとりん、お互いが全く違う場所で同じ曲を踊っていくところは何とも幻想的で美しいものでした。りんも笑顔で自由に踊っていて、飛び降りる時も死への恐怖なんか感じさせないぐらい軽やかで。一瞬、一昔前の映画「自殺サークル」に少し似ている部分があるなと感じました。
親に無理やりやらされていただけだったかもしれないバレエは、りんちゃんにとって大好きなもので、かけがいのないもので、いちかと繋いでくれたとても大切なものなんだとわかりました。
次に印象的だったのは凪沙さんといちかの海辺でのシーン。
砂浜で踊るいちかを見る凪沙さんの目は、間違いなく母親そのものでした。
性転換をしても本当の母親にはなれない。それでも凪沙さんはいちかの第二の母親であるんだということがひしひしと伝わってきました。
いちかの本当のお母さんも、ちゃんと母親の顔になっていて、いちかちゃんも明るくなって。
理想的、とまでは行かなくともそこにはちゃんと親子の絆がありました。
少し残念だと思ったのは所々が省略されていること。
時間的に仕方のないことだとはわかっているのですが、それでもいきなり何か月、何年も時間が飛ぶということに違和感を感じました。
そして、省略されてしまったであろう、ショートストーリーを見たいとも思いました。
例えば、りんちゃんがグレるまで、そして自殺するまでの心境や両親との関係、いちかのお母さんがいちかと離れている間の様子や、いちかに再びバレエをさせて凪沙さんに会いに行くことを許可したまでの心境、最後凪沙さんが息絶えた後に海に入っていったいちかちゃんが外国に行くまでのストーリーなど。
細かいところまでやっていったらあと二時間ほどは作れるんじゃないかと思えるぐらい、深い物語でした。
観てくれとしか・・・・
良い映画だった~!と簡単にお勧めできない。
胸打たれた場面を言葉で説明すると、実際より確実に安く浅くなるから
言葉にしたくない。観てくれとしか・・。
議論になっている部分もあるようですが、でも、役者の芝居と
映画とした構築されたあの世界を観て感じたものが全てだと思う。
トランスジェンダーがどうとか虐待がどうとか大事なのはそこではなかった。
とにかく、唇がわなわなと震えて観終わってからも何日も余韻が消えず
凪沙の言葉、あのピアノの音が目に浮かぶ。耳に残る。
母と弟が私の次に観に行ったが
感想を聞くと目を潤ませていた。
そして「言葉にすると安くなる・・」と話してくれなかった(笑)
もう少しユーモアとたくましさも欲しかった
心にズーンと重く響く映画でした。
昨日、テレビで「ミッドナイトスワン」の紹介コーナーを観て、早速昨夜レイトショーで観ました。
さほど大きくないスクリーンでしたが、半分くらいの入りで、久方ぶりに隣の席に人が座っている状態での映画鑑賞でした。
改めて草なぎさんはすごい俳優だと感じました。
「JOKER」でホアキン・フェニックスがアーサーそのものだったように、スクリーンの中では草なぎさんは凪沙さんでした。
トランス・ジェンダーについて無知で、こんなに苦しい想いを抱えて過ごす人がいることを初めて知りました。
凪沙の母親が、息子なのに女性の姿の凪沙に「病院に行って治してもらって来ておくれ」と泣いて頼むシーンは、どちらの気持ちも分かり、しんどかったです。
常識を当たり前と押し付けない。
例え親子でも、相手の尊厳を尊重する。
弱い立場の人が、強くないからという理由で虐げられることなく、弱いまま尊重される世の中にしたいと強く思いました。
「しんどい」「助けて」と声を発することができるから、今より生きやすい気がします。
一果のバレエの先生の、凪沙への接し方が好きでした。
「おかあさん」と呼ばれて嬉しそうな凪沙の顔、忘れられません。
新人さん素敵!
演技は素晴らしいが、脚本にリアリティーがない
すんばらしいっ‼️
草彅剛さんが、いつかこういうキャラクターを演じているところをみたいと、長年思い続けていたのですが、念願叶いました。ありがとう剛さん‼️
期待以上、やはり草彅剛はやってくれました。
トランスジェンダーの凪沙を演じる事は、間違いなくアイドルを生業としてきた彼にとっては大きなチャレンジだったと思うし、世の中のセクシャルマイノリティへの偏見、差別、歪んだ見方をする人々へ、大きな衝撃を与えたと思う。
凪沙から、健二へと一瞬戻るシーンはとても生々しく、自分の本当の姿を押し殺しながら生きる毎日とはどんなものかと、短いけれどこちらにズンときた。
一果(服部樹咲)のために、男性として就職を決めたところは、切なくて暖かくて。もはや、人間見た目なんてどうでもいいと思える。ってかそもそも、人間の見た目などどうにでもなるのだから、周りがヤーヤーいうことではおまへんな。
でも、片や、その見た目によって生まれてからずっと苦しんでいる人もいるのだと思うとそんな事も軽々しく言うてられへんし。。。
世の中の人みんなが、自分が満足する形で生まれてこれたらええのにーって心底思うけど、そればっかりは神様しか分からんから。(急に神様でてきたw)
凪沙が本作の中で笑う事はほとんどない。
ショーパブでお仕事してる時と、あとは、バレエの先生に"お母さん"と呼ばれた時。(他にもあるかもやけど、特に印象に残ったので)
凪沙が今まで経験したかったけれど、どう頑張っても叶わなかったことが、偏見のない先生からポロってでちゃった言葉があんなにも人を笑顔にするなんて。
草彅くんの役者としての演技は個人的には怒るシーンが大好きなのだけれど、今回は泣きのシーンが多くて、もちろんその場面もすごかった。
凪沙そのものになりきってしまっていて、本当にすごい役者さん。大好き。
服部樹咲ちゃんは、これが初出演の映画であり、初の演技だったそうですが、とても良かった。
新人賞間違いなくとるね今年のアカデミー。
バレエ歴がしっかりある彼女だからこそできた演技であり、初演技だったからこそ醸し出せた、凪沙とのぎこちない空気感。最後のバレエシーンは圧巻。
素晴らしい演技だけでわなく、ピアノだけでながれるBGMがまた美しくて。もう内田監督のセンスがめちゃくちゃ好きです。最高。
生きている世の中には決して美しいものばかりではないけれど、こんなにも美しいものが存在するのかと感動しました。
また、トランスジェンダーについても、知識をより増やすことが出来てよかった。年齢制限がついていないと言うことを考えると、これは幅広い世代から支持されて欲しいなと思う。きっとこの作品から何か得られると思うから。
今年のアカデミー賞が楽しみ。
ただ、もうアカデミー賞も男優、女優とかいう垣根をやめて、最優秀俳優賞として性別わざわざいらんから、1つにしちゃって欲しいなと思った。
素晴らしい賞にまでそんなどっちでもいいこと言うなんて野暮やわ。イケテナイワ。
これはDVD買って保存します。
簡単に語れない
この繊細なテーマを出来の悪い脚本と演出が台無しにしている。
前回観た映画は「パラサイト」。よく出来た映画だった。重いテーマを扱いながらテンポの良さと優れた脚本でいい映画だったと誰もがそう思う作品だった。
本作「ミッドナイトスワン」はそう言う意味では最低の映画だった。多分出演者自体はその選び方は別として、がんばっていたと思う。
邦画にありがちな無能な監督と脚本と演出がそれを台無しにしてしまっていた。不要で説明不足の登場人物の死や不幸、古くさい演出とセリフ、LGBTという繊細で、その存在をどう扱うかで観る人に光と影が強く印象づけられてしまうテーマを、こうもガサツで惨めなだけのものにしてしまっていることが、この作品の絶対的な罪だと言えると思う。
表現の自由はあると思うが、こうも稚拙な制作者には決して扱って欲しくないテーマだった。久しぶりに観た後に不快感だけが残る作品で、高評価をしているLGBTをあまり理解していない方たちに警鐘を鳴らしたい。
誰よりも一果の母だった
孤独な魂の共鳴
(言いたいことは色々あるが)一言にまとめると、「この作品がたまらなく好き」。ラストの台詞「見てて」に集約された一果の思い。さまざまな出来事を抱きしめ、それでも真っ直ぐに自分の人生を駆け上がっていくんだという迷いのない覚悟。地獄、屈辱、怒り、希望、挫折、離別、そして愛。彼女の人生の軌跡と、未来への展望をたった一言で表現し切ったシーンに、鳥肌が立った。
まず何より、一果役の服部樹咲さんが素晴らしかった。『誰も知らない』の柳楽優弥さんを見た時のような衝撃。ネグレクトされている時の目、嘲笑やセクハラにあい怒りのスイッチが入った瞬間の表情、そしてバレエを踊っている時のキラキラした全身の動き。無口な彼女だが、その伸びやかなダンスこそ、底なし沼の現実を突き破り、千の巧言を超える「希望」の象徴なのだ。運命を恨み、社会に絶望し、自己憐憫にかかりきりだった凪沙。それが一果のダンスに「光」を見いだし、初めて他者のために自分を捧げようと思った。孤独な魂を持つ凪沙にとって、同じ境遇の一果に差し込む一条の光は誰よりも眩く感じられたに違いない。
草彅剛さんの演技については、すでに多くの方が解説されていると思うので、ここでは一つだけ。一番好きだったのは、凪沙が広島に一果を迎えにきたシーン。あれだけ家族にひた隠しにしてきた「秘密」=「トランスジェンダー」のまま実家にやってきた凪沙。彼女はこの機にカミングアウトしたかったのか? そうではあるまい。彼女は、家族にバレることも、批判されることも、そして罵られ唾を吐きかけられることも、きっとすべて分かっていた。けど、そんなことはもうどうでも良かったのだろう。ただただ、一果に自分の愛を伝えたかった。そして、その愛が受け入れられない可能性すら、凪沙は最初から分かっていただろう。それでも、今まで一番大切だった自分のことなんてどうでもよくなるほど、すでに凪沙にとって一果はかけがえのない存在になっていた。だから、独りぼっちで実家を去ることも、ちっとも恥ずかしくなんてない。なぜなら、他の人になんと思われようと「母」の愛が変わるはずがないのだから。今までエゴのみで生きてきた凪沙が己を手放し、真の意味で一果の「母」になった瞬間が、あのとぼとぼ歩く帰り道のシーンだったと思う。
上野鈴華さん演じる友人「りん」も、とても良かった。なぜ裕福で何不自由ないりんが、独りぼっちの変人・一果に接近したのか。それは孤独な魂が同じ臭いを嗅ぎつけ、惹かれ合ったからに違いない。アル中の親に振り回される一果、親の「クローン」として期待を押しつけられるりん。貧富の違いはあっても、「一人の人間」として両親に関心を払われない二人は、「ネグレクト」というコインの裏表なのだ。ともに共鳴し合う孤独な魂は、バレエを通して一方は「生」に向かい、もう一方は「死」へとドライブする。何かのちょっとした原因で、彼女らが入れ替わって逆の結果になっていてもおかしくなかった。人間の生死の分かれ目なんて、じつはほんのわずかの差でしかない。
最後に、水川あさみさんの演技がひときわ素晴らしかったことも書き添えておく。冒頭の登場シーンでは、正直まったく彼女とは分からなかったほどの熱演。私の中で、もっと色んな役柄を見てみたいと思う俳優さんの一人になった。
草彅くんヤバい
草彅剛のベストワン
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