劇場公開日 2020年9月25日

「痛々しさの中に救いがある。」ミッドナイトスワン DEPO LABOさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0痛々しさの中に救いがある。

2020年10月12日
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家庭環境に問題を抱えるバレエ少女のシンデレラストーリーと、
トランスジェンダーの男が心身共にズタボロになっていくさまが同時並行するお話。

▼葛藤を抱えるダンス少年が主人公の『リトルダンサー』と、ひたすら主人公がボロボロになっていくダーレン・アロノフスキー監督作品(レスラー、ブラックスワン、レクイエムフォードリームなど)の風合いがマッシュアップされたようなシナリオ

▽トランスジェンダーのなぎさがズタボロになっていくだけの映画だったら、痛々しいだけになっていたかもしれない

▽そこに逆境がありながらもキラキラ感がある少女のシンデレラストーリーがあるから、絶妙な塩梅になってる

▽ダーレン・アロノフスキー監督作品はひたすら主人公がズタボロに追いつめられていくお話が多い。心には残るけど、救いのないほど痛々しくてまた観ようとはあまり思えないことが多い

▽今作はがっつりめな痛々しさはあるものの、ちゃんと救いがあってまた観たいかもという気にさせてくれる

▼シナリオの世界観がきれいに三分割されてる

①絶望感を抱える主人公ふたりが対立する
②バレエによって主人公同士が融和する
③二人の主人公の明暗が天地に分けられ離別する

▽②→③の移行はやや唐突感があったけど、全体的に緩急が大きく、観ていてやはり心が揺さぶられる

▽シチュエーションが、ザ・東京感の新宿、のどかな広島、タイっぽい東南アジア、ニューヨークと、ガラッと変わるのもシナリオのダイナミックさを後押ししてる

▼やや過剰気味で派手めな演出が多い

▽主人公が「なんで私だけ・・・」というような、心の中の葛藤を台詞でしっかりしゃべったり、実家で修羅場むかえて胸が露わになったり

▽演劇のような派手な演出が目立ったが、あえて意図的にそうしたのではと思った

▽主人公ふたりは、どちらもバレエとショーパブというように、舞台の上で華やかに演じるキャラクター

▽この映画自体もまた舞台上の演劇のようなエンターテイメント性を帯びているとするならば、そんな派手めな演出は、全然おかしくない。むしろ効果的。

▼メインテーマのピアノの音楽が、がっつり坂本龍一「戦場のメリークリスマス」の中間部を意識して作られてるなぁ

▽音楽からもダイナミックレンジの大きい演出を意識的に狙ってるのが伝わる

▼いちかの親友や、ショーパブのオカマたちや、実家で修羅場中に奥のベッドに腰掛けるおばあちゃんなどの細かいキャラたちにも、自然としっかり記憶に残るような特徴を持たせていてすごい

▽★脇役でも衣装だったり、台詞だったり、小道具や、意外性のある主人公への動作で、印象に残すキャラクターにできる

▼女全開の草彅くん、女9:男1の草彅くん、女2:男8の草彅くんの、3つのフレーバーを楽しめる

▽本当に難しい役柄をやりきった草彅くんの勇気と努力とチャレンジ精神がすごすぎる。

▼勉強になったこと。東南アジアで性転換手術しちゃだめね。

▼なぎさが息絶えた海が、どうみても東京じゃない。

▽体調悪いのに東京からものすごい遠出したなぁ。そりゃ死んじゃうよ。。

DEPO LABO