「ギミックを支えるものが弱い」弥生、三月 君を愛した30年 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
ギミックを支えるものが弱い
最初は「脚本ゲロウマ! 大傑作か!?」と思ったの。
教室のやりとりの
『ごめん、ファーストキス奪って』
『いいよ。お互いさまだから』
とか「すげえ!」と思ったね。
でも、そのレベルの高さは高校卒業するまでだった。
そこから先はすれ違いのメロドラマなんだよね。
一つ一つのシーンはさすが遊川和彦でレベル高いんだけど、単なるメロドラマだから、うまさが浮いちゃうの。
三月をテーマにしてるから2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震も描くんだよね。ここは正直しらけました。この舞台設定の必然性がないからね。
すれ違ってた二人が初めて結ばれるのが前日の3月10日なんだけど、ここの納得感がないの。成田凌が波瑠を抱きしめて「高校のときから、こうしたかった」で燃え上がるんだけど、どうだろ。
このとき波瑠、結婚してるからね。曲がったことが大嫌いなキャラ設定にしてるから、ここで不倫はしないだろ。『高校のときからの秘めた思いがここで』ってことなんだろうけど、それだけじゃ弱い。
それで翌日の地震で旦那さん亡くなるの。棺の横に居る波瑠のところに成田凌がきて「これ、『罰が当たったんだ』って言うだろうな」と思ったらその通りの台詞だった。「ここはベタベタのベタでいくシーンだ!」ってことなんだろうけど、前日の不倫に無理あるから、もうのれない。
ラストに向けての、高田馬場の古本屋で「また、すれ違いか!」と思わせてからの奇跡の人ギミックは良かった。そして、突然、波瑠が覚醒して成田凌の息子を助けにいくのは、これまた無理筋だったけど、まあいいや。
最後は手をつないで良かったねってなるんだけど、結局この話はなんだったんだろうね。単に震災の話を書くのは嫌だったから、3月の31日間で描く形式にして、すれ違いメロドラマやってみたかったってとこかな。一つ一つのシーンがうまいだけに、そこの弱さが逆に目立っちゃったかな。