「人間を屠殺するために人間が作り出した地獄」1917 命をかけた伝令 ぐちたさんの映画レビュー(感想・評価)
人間を屠殺するために人間が作り出した地獄
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第一次世界大戦。
フランスに攻め込んだドイツ軍と、にらみ合うイギリス軍。
若い2人のイギリス兵、スコフィールドとブレイクは、敵から身を隠す塹壕を出て、戦場を走り、最前線にいる味方部隊に命令を伝える任務を与えられる。
塹壕を出て鉄条網をくぐると、そこは泥にまみれた遺体があちこちに放置され、丸々と太ったネズミだけが嬉しそうに動き回る戦場である。
枝も葉も銃弾で薙ぎ払われた樹木がそこここに立っていて、激しい戦闘がここで行われたことを示すと同時に、その木々の見慣れないシルエットは例えば地獄にあるのが似つかわしく思われる。カラスが兵士の遺体をつつき、石造りの家の壁は崩れ、川には兵士の遺体が数多く浮かんでいる。
1917年のこの空間は、人間を屠殺するために人間が作り出した地獄であろう。
土色の重そうな軍服を着て、装備をたくさん身に着けて、若い2人が走る。
最初は見えない敵におびえながら。そして徐々に姿を現す敵兵たちと戦いながら。演じるのが有名俳優でないこともリアリティを増す要因になっている。
全編ワンカット撮影は、技術の限界に挑戦した点が新しいということだろうが、そのために映像表現が制約されたように感じる。全編晴れも雨もなく曇天ばかりなのも制約の一つであるようだ。こういうスタイルが好きな人もいるだろうから好みの問題か。
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