「史実のような見せかけで、ストーリーはめちゃくちゃ」1917 命をかけた伝令 正也さんの映画レビュー(感想・評価)
史実のような見せかけで、ストーリーはめちゃくちゃ
戦場での「伝令」は命令や報告を部隊の中枢、あるいは末端に順繰り伝える役割だ。
しかし、この映画では、電話線も切れて孤立してしまった部隊に、「敵ドイツの罠だから攻撃を中止せよ」っていう命令文を徒歩で何日もかけて前線に伝えに行くって英国陸軍のストーリー。
おかしな点1
この命令を受けるのは、二人の若い下っ端兵士(上等兵)で、将軍(少将か中将の旅団長か師団長)から直々に命令を受ける。こんな長い距離ならプライベートラインみたいに士官を含む、小隊で行くべきではないか?将軍が上等兵に直接命令ってのもおかしい。
おかしな点2
この命令を受けて、塹壕の中を突き進んで前線に近づくシーンがある。この映画のウリのワンカットの映像が素晴らしい?シーンだ。だけど、塹壕って敵と対峙して平行に掘ってあるのに、なんで塹壕を突き進んで敵に近づくの?
おかしな点3
出発する上等兵2人のうちの一人の兄は、その孤立した連隊に所属する中尉という設定。だから、兄のために一生懸命に攻撃中止命令を伝えるため頑張る。中尉という士官学校卒のエリートと、上等兵でたぶん招集されたような下っ端兵士が兄弟という設定がおかしい。
おかしな点4
孤立したのが「連隊」と言っている。連隊だけでも数千人いる(映画では1600人の設定)。こんな大所帯が孤立して、しかも独断で攻撃を開始するのがおかしい。孤立は包囲殲滅の危機にある。この連隊長はそもそも負ける戦いをしようとしている。
ほかの仲間の連隊は自分たちの塹壕の中で待機している。いっぽうで孤立した連隊がドイツに攻め込もうとしている。そんなバラバラな軍や師団あるかい?師団としての作戦もないの?
おかしな点5
飛行機(英国の戦闘機)が友軍機としてたびたび登場する。だったら飛行機で命令の入った「連絡筒」を落とせば済む話じゃないの?
おかしな点6
ワンカットを売りにしているための弊害なのか、泥土地から、トンネルくぐったら急に乾燥した岩や砂の土地になり、急に牧草地になり、場面の切り替えに違和感がある。
おかしな点7
舞台はフランス内であるようだ。廃墟となってかつて立派であった建物群がズタズタに壊れた町を通るシーン。第一次大戦でフランスでこんな市街戦って本当にあったの?無差別爆撃するような爆撃機がなかった時代に、こんなに町が破壊されることなんてあるのか?なんだか、戦争映画ではなくて、ファンタジー映画ようなシーンだ。
おかしな点8
やっとのことで、命令文を伝えたい部隊に到着する。だけど、連隊長のマッケンジー大佐は「どこですか?」ってそこらじゅうで聞き回っている。普通は将校から伝えてもらえばいい。
やっとのことで大佐の司令部に到着して、間一髪間に合いましたメデタシメデタシ。大佐の横にいる少佐がメタボなオッサンすぎる。少佐ならきっと参謀や副官でもっと若い頭よさそうなキャスティングにしろよ。
まじめに観るとバカバカしいですが、ファンタジーのような忠実な映像とフィクションのストーリーとして観るならまあいいのではないでしょうか。