劇場公開日 2020年2月14日

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「ワンカット風撮影などの見どころも多々あるが、背景美術が素晴らしい。」1917 命をかけた伝令 ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ワンカット風撮影などの見どころも多々あるが、背景美術が素晴らしい。

2020年3月3日
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鑑賞方法:映画館

第一次大戦の戦場を描いた映画は、過去にも決して多くは無いが、『西部戦線異状なし』を筆頭に『突撃』『誓い』『まぼろしの市街戦』『素晴らしき戦争』(ミュージカル!)など傑作揃いだか、今作は決定版と言える出来ばえだと思う。

作戦の中止命令書を持って敵陣を、突破する伝令兵二人に寄り添う様に、撮影された評判のワンカット風映像も素晴らしいが、個人的には、背景のロケやセットの美術や照明が見所で、とにかく素晴らしい。

最初の凄惨な塹壕地帯を抜けて、敵陣を超えると突然、美しい草原にポツンとある一軒の無人の農家には、庭には小さな果樹園があり、桜桃の花が咲いて、美しくて静かだけど不穏な雰囲気のロケセットや、夜の廃墟の町が照明弾によって揺らめきながら動く光と影の幻想的なイメージの場面も凄い。

廃墟の町のドイツ表現主義風の描写や幻想怪奇な雰囲気もあり途中で撃たれた主人公は、実は死んでいて、彼の死ぬ間際の幻想なのでは?解釈できる後半の展開も面白い。

監督のサム・メンデスは、近年監督した2作の007シリーズを端正な画面構成のアート映画に仕上げて、アクション映画としての魅力を、弱めてしまった印象だったが、今作のサスペンスあり、ショックな展開あり、アトラクション的な見せ場ありの今の作風で、緩急をつけて演出してあり、さすがの実力を見せつけてくれる。

ただし凄惨な戦場の現実は、若干弱められている感じを受けるが、多いの人に観てもらう為や戦争の無常を伝える映画としては傑作だと思う。(ポール・バーホーベンが監督したら18禁になるし)

[IMAXレーザー2D・字幕]にて

ミラーズ