「映画館で観ないといけない映画」1917 命をかけた伝令 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
映画館で観ないといけない映画
2時間ほどある映画を全編ワンカットなんて大変な映画だと思っていたけど、実はワンカット風に撮影されている。
だからといって、簡単なものではない。繋ぎ目を秒コンマで計算して自然にみせており、基本的に長回しを何回もしていて、最長シーンは9分に及んでいる。
失敗したら初めからスタートという地獄のような撮影を繰り返していて、ワンカットの大変さには、変わりない映画なのだ。
全編がゲーム画面のようで臨場感が凄い!これぞ映画館で観るべき映画だと言えるが、 おそらくDVDで観ると評価は変わるだろう。
戦争映画というよりは、アクション映画のようでストーリーは単純で薄口ではある。時代背景どうこうではなく、お子様も楽しめる仕組みだ。
しかし、観ている側は主人公と同じ、もしくは同行しているかの様な視点で体験できるということもあって、映し出される死体が所々に転がり、ネズミは死体を喰いあさる、銃弾がとんでくるという戦場の悲惨すぎる光景を体感することによって、キャラクターに感情を自然投影できてしまうという仕組みがドラマ性の薄さを補っているのだ。
劇中でウィリアムが有刺鉄線で手を怪我してしまい、その後に腐敗した死体に手を突っ込んでしまうというシーンかがあるが、感染大丈夫?と思って、とにかく自分ならとりあえず泥水でもいいから手を洗うだろうな...とか考えてしまう。
ところどころでウィリアムがみせる、敵であろうと殺したくはないという優しさゆえにピンチに陥ってしまう状況には心が痛くなる。
知らず知らずのうちに、私ならどうするだろうか...と思ってしまっている。つまり私たちの目線が重なることで映画を完成させているのだ。
主人公ウィリアムを演じるジョージ・マッケイが決してイケメンではない、典型的なイギリス人顔というのも物語を邪魔しない鍵となっている。
所々に登場するコリン・ファースやマーク・ストロングといった、イギリスを代表する名優達がイベント感を引き立たせている。
映画の中のミッションをなんとか終えたとしても...まだ戦争は終わってない。ウィリアムはまた走り続けるのだ。