「映画にとって構成とカット割りは命だと思った。」1917 命をかけた伝令 superMIKIsoさんの映画レビュー(感想・評価)
映画にとって構成とカット割りは命だと思った。
本作は全編をワンカットで撮影されている戦争映画と聞き、鑑賞することをとても期待していた。何故なら物凄い没入感を得られると思ったからだ。でもその期待は見事に裏切られてしまった。
まず本作は時間的に大きく二分されており、完全なワンカット撮影ではない。それは観た方なら誰でも分かるだろう。ワンカットと思われるシーンも俳優の背中や障害物などを上手く使い、ワンカットのように見せている。勿論その繋ぎの部分は実に自然で、それを成す為に大変な演出と画像処理を行っていることは想像に難しくない。
しかし観客を追体験させる為にワンカットで撮影させる意味はあったのだろうか? 同じ戦争映画である”プライベート・ライアン”の例を出すまでもなく、緻密な構成やカット割りで、より現実感を出すことは充分可能だ。
逆に本作はワンカットに拘る余り、ストーリー性を犠牲にしているような気がする。他の方も書かれていたのだが、主人公達の経歴がほとんど描かれない為に物語に感情移入出来ないのだ。彼らの過去は僅かな台詞の中にしかなく、この程度では彼等がどうして命を掛けて戦っているのかが分からない。
また本作は見せ場が少ない。見せ場といえば予告編で描かれているシーンぐらいで、後は主人公が逃げ惑う場面に終始している。そしてそれらの出来事は唐突に始まり、唐突に終わるのだ。実際現実とはそういう物だろうが、でもこれは映画だ。何かが始まる前には、そのような雰囲気や演出が欲しい。そういう部分が本作にはほとんどない。
エイゼンシュタインの時代から映画人はモンタジュー合成などのカット割りを研究し、それを長年追求してきた。長回しは観客に強烈な印象を与える手法だ。通常そういうシーンは映画の中で印象的な場面にのみ用いられる。同じ第一次世界大戦を描いたキューブリックの”突撃”の白兵戦の長回しのシーンは物凄いし、”史上最大の作戦”の市街地戦のシーンも凄まじい。最近では”トゥモローワールド”の戦場のシーンがとても心象的だった。皮肉だが本作を見て構成とカットは映画にとって命だと改めて思った。
否定的なことばかり書いてしまったが、近年の映画界においてこのようなシリアスな大作映画が作られたことは奇跡的だと思う。この企画を通す為に大変な苦労があったはずだ。アカデミー賞受賞監督であり、007を大ヒットさせたサム・メンジスでなければまず実現出来なかっただろう。そういった意味では本作が作られた意義はとても大きいと感じる。
同感です…激しく。
映画ならではのカット割りの妙、というのが本作にはありませんでしたね。まぁ色んな作品があって面白いのも事実ですけどね。効果的なカットがないのはやはり物足りないかも!