「老画商と孫」ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
老画商と孫
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ヘルシンキの老画商、オークションで見かけた肖像画に大きな賭けをする話を軸に疎遠だった孫の助けを絡めて名画発掘ミステリーと家族の再生のヒューマン・ドラマを融合した渋い作品。
脚本のアンナ・ハイナマーさんは自身も彫刻家であり美術作品の造詣にも深かったのだろう、真贋論争で揺れたダビンチの男性版モナリザ「サルバトール・ムンディ」のようにわずか45ポンドだった画がオークションで510億円に化けた例もあるから埋もれた名画は画商ならずも惹きこまれるプロット、問題の画は19世紀、ロシアのレンブラントと称されたイリヤ・レーピンの作と見抜くがサインが無い、レーピンを持ち出したのは彼が晩年フィンランド領に住んでいたことから埋もれた作品があっても不思議はないとの考察(もちろん映画上の架空作品)、日本人には馴染みが薄いですがフィンランド人には説得力が高かったでしょう。
家族ドラマの方は娘と疎遠になった原因が余り語られず画商一筋で家庭を顧みない父親の方に一方的な非があるように描かれるので老親が不憫に思えました、それでも孫の機転は素晴らしい、何よりのおじいちゃん孝行でしたね。劇中でフィンランドの画家のヒューゴ・シンベリの「老人と幼子」の絵を観て「命を歩んできた者とこれから歩みゆく者の絵だ、人生を全うした者にしか描けない」と絵の奥深さを孫に語るシーンが全てを物語っている気がします・・。
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