すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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今の社会福祉になぞられているような…
社会福祉士を目指すかたに見てほしいような作品
更生保護制度や生活保護制度に当てはまるかな
刑期を終えると、人は社会生活をすることになる。
そこで社会生活する上で必要になってくるのは、その人を受け入れる受け皿。そこがある・なしで、その人の人生が分岐する。
主人公は、周りに支え支えられて生きる人生や、元の必要とされる環境で生きる人生の選択がある。主人公の曲がったことが出来ない性分は果たしてどちらに転ぶのか…
と概要は以上です。
ヤクザ役の役所さんは、本物ぽっいです(本物は知りませんので)迫力があり、でも気の優しいところもあってその緩急が良い味になってます。役所さん一色の映画のようですが、しかし他の役者さんもいい味を出して、主人公扮する役所さんの生活や気持ちを支えて居るんだなと思い、役所さんを応援したくなります。
とっても良い映画でした。
…福祉に携わっているので偏っているかも知れません。
それでもすばらしき世界
三上のカーッとなって大声を出したり、人を殴ったりを始終ヒヤヒヤしながら見てた。
だめだよ、せっかく堅気になろうとしてるのに、抑えなきゃ、やめてやめて、
少年の頃から30年近くを牢屋で過ごした人が、社会に出るのはなんとも生きづらいのだろう。それでも今度こそ堅気にと誓って務所をでたものの、周りのいい人達に支えられながらも、怒りを抑えられない姿には辟易した。
しかし、普通の社会というものすら彼には違う世界で、それでも少しづつそこに身を置く努力を彼なりにしていて、心の中で小さく
頑張れ、堪えて、
と踏ん張りながら投げかけてた。
もちろん流石の役所さんはとても素晴らしく、怒りを抑えられない場面ではクソだなと思える程の演技。三上を支え世に出す手助けをする弁護士先生夫婦、ケースワーカー、スーパーの店長、それぞれの優しさがものすごく身に染みた。
そして、三上を知るうちに彼をなんとか元の世界に戻らせまいとするツノダを演ずる太賀が私を泣かせた。
この、すばらしき残酷な、世界
私は、何を見て見ぬふりをしているのだろう
自然に身に付けてしまった術なのだろうか
学校ではイジメが、家庭では虐待がニュースになる
会社でも日常にあるんです
仕事の覚えが悪い人を罵ったり、体力作りだからと運動させたり
やらせている人は自分が正しくて悪いことをしている感覚がなくなっている
どんな呪いをかけて自分を正当化しているのか私には分からない
どこでそんなやり方を学んできたのか
学校、会社、町内会、ママ友、etc……
あげればキリがない
そんな無法地帯で罪を犯さず人を傷つけずに生きていくのはとても難しい
口では勝てないからって拳を上げれば罪になる
逃げれば陰口を言う人が増殖する
それでも生きなければならない、悪いことより良いことの方が少ないけどそれだから良いのだと思う
たまにあるから有難いし価値がある
人は慣れると麻痺してありがたみが無くなるからね
前科者だから生きづらいのではなくてこの「すばらしい世界」だから生きづらいのだろう
それでも空は広い
「そのうちなんとかなるだろう」と歌って乗り越えていきたいものです。
正義感など必要ない。自分の損得だけ考えろ。
すばらしき世界。
ラストに浮かび上がった文字。
監督の世の中への皮肉を込めたメッセージ。
電車内で暴行を受けてる人がいても誰も止めず知らん顔。
自分には関係ない。関わりたくない。知ったこっちゃない。
安倍政権の八年で日本人のモラルは崩壊したと思う。
正しい事をしようとした人が自殺に追い込まれる社会。
レイプしても権力者の側近なら逮捕されない社会。
そしてそれを容認する国民。
自分には関係ない。
素晴らしき世界のままで
役所広司の全てが怖い。
まず目。何かしでかしそうな、何が企んでそうで、
こちらの思惑は全部お見通しと言う目つきが怖い。
髭の生え方か髪型も怖いし、佇まいも怖い。
なので三上もとても怖かった。
絶対公正してないだろ、
自分の事を悪いと思ってないだろって感じで
嫌な奴かと思っていたら、
切れやすいところはあるが、
実直で人を信じやすく、
悪い事は悪いと言える男でもあった。
人たらしな部分もあって魅力的な人物だった。
こんなガキのまま大人になったような奴、
この世界でやっていけるわけないと思っていたら、
周りに気にかけてくれる人がたくさん集まって
三上もその情を無駄にしたくはないと言う思いが
公正に向かわす仕組みは、
本来あったはずの古き良き日本の人間関係なのかなと、
粗暴だから見放すのではなく、長所を伸ばしてやろうと
言う働きかけは大事だなと思いました。
三上に関してはとても恵まれた環境だと思うけど、
結末はこれ以上この世界の汚い部分を見せたくない
と言う監督の思いなのかなと、
つまり、昔はあった素晴らしき世界は
もう今はなくなってませんか?と言う問いかけのように
僕は感じました。
役所広司さんの素晴らしさは言わずもがな。
今作も魅力をたっぷり堪能させてもらったけど、
仲野大賀さんもとても良かったです。
見てよかった作品
一言「うっわあ!!」。
実はこの作品、結末をぼんやりですが知ってたんです。
じゃあどういうに話が進むのかなと思って、見始めました。
ざっくりいうと、累計20年以上刑務所にいた男が。
出所してからどう社会に戻っていくか。
「喧嘩のマサ坊」と呼ばれた主人公は、弱いモノいじめの仲介に入ったり。
ちょっと進んだかと思ったら、また短気を起こして後退する。
見ていてハラハラ。
だけど頭を下げたりお願いすることで、手助けしてくれる人もいる。
その恩を忘れず、少しずつだけど喧嘩の拳を心に飲み込む。
そうそう、みんなそうやって社会で生きているのだよ、って。
ラストは、知っていたのと違った終わり方でした(ウルおぼえ)。
こういう終わり方、本当は好きじゃないけど。この作品ならあり。
見終わった後、「どう思う?」って語り合いたい作品。
出演陣も豪華で、実力派勢揃い。
そして役所さんじゃなきゃできない、主人公でした。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「大切なのは誰かと繋がりを持って、社会と繋がりを持つこと」
役者の演技力に頼りすぎ・・・
役所広司、仲野太賀をはじめ俳優陣の演技力は「すばらしき世界」だったが、ストーリーは今ひとつで、特にラストはこれはないだろう! と怒りさえ覚えた。
結局、役者の演技力に頼りすぎ・・・という感想しか持てない作品。残念。
ここにリアルを求めたらいけないのだろうか
劇場公開はちょうど1年前だったんですね。つい先頃Blu-rayで観ました。
一言で言ってちょっとピンとこなかった。そもそもこれ、ミスキャストなんではないだろうか。
主演の役所広司サンは言わずもがな、そりゃもう誰もが認める名優であって大変お上手なんだけど、彼は言ってみれば優等生。とにかく監督の要望に応える、いや、常にそれ以上の演技をするのでしょう。でもそれは “監督の要望” の延長線上にあって、決してそれを逸脱して突飛なことをするわけでもなく、役所広司はあくまでも役所広司然としているということ。もとより、最近は知性的で地位のある役柄が多く、やはり所作の一つひとつが上品に収まってしまう。その点では「安心して見ていられる」のだけれど反面、残念ながらそこにハラハラするようなスリルはない。
また、思い出したように取って付けた付け焼刃的なシーンが多く、無駄や無理も目立つ。
「そうか、ここはかっとなってチンピラに絡むんだっけ」とか「ここは声を荒げて怒鳴るんだっけ」とかいうように、「本当は優しいキャラ」という設定においてはそれぞれが不自然で唐突に映る。
「母探し」も何か本筋からは浮いているし、教習所のシーンもただ滑稽でしかない。車の運転は、例え10年15年のブランクがあっても忘れないものだ。この場合、脱輪に自らイラっとして(腕が鈍っているとか、いささか不甲斐なく思える自分に対して)、八つ当たり的に車を蹴飛ばすくらいの方が流れとしては納得ができる。
とにかく主人公においてはもっともっと様々な葛藤があるはず。挫折感、疎外感、絶望感、あるいはそれに対する開き直りやジレンマ。自暴自棄になることだって多々あるだろう。
映画では描かれていないが、例えば「出所したらおいで」と言ってくれていた友人や知人が居たとして、いざ実際にその場になってみれば何かと理由をつけて拒まれ忌避され、そうして裏切られる。結局受け入れてくれるのは同じ釜の飯を食ったムショ仲間。それが世の中の常道である。
外に出れば腫れ物に触るようなよそよそしい周囲の目、そして直面する差別。
また「母親探し」をネタに接触をしてくるテレビ局やマスコミ。本来テレビ局なんていうのはそれこそヤクザな存在で、主人公の三上正夫をとことん食い物にしてやろうとあの手この手を弄して執拗に付きまとい、実に無遠慮で狡猾極まりないもののはずである。決して長澤まさみ演じるプロデューサーのような可愛げはない。
一方、捨てる神あれば拾う神あり。親身になってくれる弁護士夫婦然り、若手ディレクターの津乃田(仲野太賀)などがその役回りなのかもしれないが、この場合、スーパーの店長(?)は不要で、例えばそれが介護施設の所長だったりした方が現実味があったのかもしれない。
何れにせよ、そうした紆余曲折をリアルに、「明」と「暗」とを鮮明に描き分けた方が映画、物語としての説得力があったように思う。
この映画の本題は、こうした主人公の境遇を、主人公自身がいかに乗り越えて克服して行くかにあるのだろうから。
また元来、主人公はもっとがさつで不器用で、言わば品性に劣る粗野な面があるはずだ。いみじくも原作者の佐木隆三が言ったのかどうか「横山やすし」とは言い得て妙だが、まさにあのイメージなのだろう。
例えば主人公の三上正夫にはむしろ香川照之あたりを据えた方が良かったかもしれない。彼の「怪演」にはすさまじいものがある。随分とスリリングで面白い作品に仕上がったのではないだろうか。
ここで結論を言えば、本作は業界人に持ち上げられただけのマスターベーション的な作品にしか思えないし、演出が上手いとは言い難く、もとより取材が不充分で練りが足りない。仮に丹念な取材を重ねたとするなら、消化不足とともに思慮不足であるのは否めない。
オフィシャルのホームページを見れば著名人の美辞麗句にちりばめられたコメントの数々が見られるが、そりゃ “お仲間” としてコメントを求められた側からはネガティブなことは書けないでしょう。どなたかが「役所広司×西川美和?そんなの傑作になるに決まってるじゃん」などと仰っていたが、それもあなた達にとってはね。(例え本心ではないとしても、忖度することが美徳であり、それが不文律となっている世界なので。)
さておき、過激な表現を避け、最大公約数的に無難なところで「こんなもん」と手打ちをして自画自賛。業界内では仲良し小良し、お約束の “予定調和” にさえ思える。
結果、シリアスなドラマでもなく、かと言ってエンターテインメントにも収まってはいない、実に生ぬるい中途半端な作品になってしまっている。
どうせならとことん醜態を曝して “本当の意味での”『問題作』として話題に上るくらいの方がインパクトがあって良いのでは?
本作で評価できるとすれば皮肉を込めた『すばらしき世界』というタイトルと映像に見る画面構成、そして丁寧なカメラワークというところだろうか。
西川美和監督の「ゆれる」もいまいちピンと来なかったが、同監督作品では唯一「ディア・ドクター」が良かっただけに非常に残念である。今後に期待。
従って、テーマを考えさせるに及ばず、それ以前にせっかくの逸材をこんな料理の仕方で良いのだろうかと考えさせられた作品で、勿論、印象には残っているが故のこうしたレビューではあるけれど、「もう一度観たい」とは思わせてくれなかった。
大きな夜空に光る希望でもあり孤独でもある一番星
2021年劇場鑑賞4本目 名作 95点
熱くレビューしたのにも関わらず見返したら何故か消えていたので、また別の角度から再レビュー
当方2021年劇場鑑賞を60本ほどした上で年間3位の本作は間違いなく大傑作で、嘘偽りなく鑑賞後席から立てなかった数少ない作品でもあります。
ですが同時期かつ同ジャンルのヤクザと家族がわたくしの年間1位で2位にミニシアター系映画の由宇子の天秤になっており、あえて1位と優越をつけるとしたら、ヤクザと家族はmvまでのストリーや週刊ヤクザと家族という役者と製作陣の舞台裏を観れるコンテンツがあったので上映時間2時間以上に濃い愛が生まれてしまったのが大きくあります。
逆に言うと映画単体で観るとこちらに軍配が上がるのも頷けるし、より丁寧に繊細に箔がある作品はすばらしき世界だと思います。
不器用に生きる彼が手先や久々の自転車を軽々乗る器用さの対比、恵まれた周りの人への向き合い方や周りからの向き合われ方の変化の対比、世界が許してくれない部分と己が許せない部分の対比、など繊細に丁寧に残酷に描いていました
己を許し就職が決まり歩道橋で一番星を写したシーンは秀逸で見事でした
是非
それ相応の人生
ヤクザと家族 を思い出した。
全てが生い立ち。キレたら止まらない性格も、罪悪感がないのも。彼の幼少期の制度に問題があるとでも言おうか。彼を誰も守ってくれなかった。現代のように。実際、出所してからどれだけ周りの人に支えられてきたか。素晴らしき世界。は素晴らしき人たちがサポートしてくれたから。せっかく明るい道が見えてきたのに、残念な結果だったが、彼の人生の中で最後の最後に素晴らしき世界を感じられたのなら、それで良かったのかな。
山田洋次監督が描けなかった…
全くだめな映画じゃないと思う。
これ大前提。
ただ、予告などでも言われる現代社会へのメッセージと捉えるのは如何なものかと。
本作の主人公は人を殺めたことへの反省、謝罪、後悔は一切無い。出所後の様々な困難も、言ってみれば自業自得。反社の人間に補償は出ない。出たら納税者が黙ってない。また免許失効も本人次第(確認はしてないけど、何らかの方策あったのでは)。
さらに言えば、反社組織との間をふらふらする有様。その組織と手を切ったのだってたまたま。
だから、あまりこの主人公に共感できない。
正直鑑賞後はしばらくモヤモヤしてた。
スクリーンで見る限り、とても魅力的な主人公(もちろん役所広司の力)。ただ実際周りにいたら迷惑極まりない人物。
そんな主人公に手を焼きながらも見捨てられない優しい人達。
ふと気づいたのは、それって日本人なら多くの人が好きな「男はつらいよ」の車寅次郎ととらやの面々じゃないか!と。
寅さんは本作同様、何処か安い民宿の畳の上であんなふうに…亡くなったんだろうな、などと思いを巡らせてしまう。
山田洋次監督が描けなかった「男はつらいよ」の最終回。
それが私の結論。
誰の人生にも、どこか当てはまる
まずは役者の方々が素晴らしい。特に役所広司のさんの演技は心の機微が表現されていると感じた。境遇は違えど、リアリティがある。他の人物についても、自分であるか他人であるか…いずれもどこかで見た光景。そして、知らずにどこかで起こっている光景でもある。
元ヤクザの視点であることが、現代の社会をうまく切り取る役割をしているに加え、それによって私は自分の偏見や無知を突きつけられもした。
「すばらしき」と名付けられたこの映画から、人間として生きることの苦しさと哀しさと喜び、希望を感じた。感じるべきだ。
ひとつあるとすれば、違うラストも見てみたい。
ミカミに関わる人々が皆あたたかい。登場する女性たちが全員人間として...
ミカミに関わる人々が皆あたたかい。登場する女性たちが全員人間としてブレていない。極道の妻やソープ嬢も優しい。観る前に自分が思ってたのとはだいぶ違い感動作だった。息をするのも苦しいみたいのがくると想像していた。ラスト以外はそんなに悲しさもない。
最初の出会いこそ、やり取りキツめなんだけど先入観で差別してくる人や就業妨害はない。市役所の人も凄い親身になって考えてくれるし、タイトルどおりの世界。世間とのズレがあるコメディ的なのもあるのかと思ってたが「稼げる男性急募」のポスターで電話しちゃうとこくらいしかなかった。社会派的な部分はあるにはあるけれどそこを強調してるわけでもなく、純粋なヒューマンドラマというかんじ。
梶芽衣子の「カッとなったらアタシたちを思い出してね」が、後の「似てますねヘヘッ」につながるんだけど、この場面はやるせない。
応援して支えてくれる人の為に今までの生き方はもう出来ない。殴るのはそもそもダメだが。
差別や虐めが蔓延ってる世界でも生き続けなければ。そこに留まる為には耐えるしかない。
花を受け取ったときにみせた表情が、見て見ぬフリをしてしまった自責の念、何もしてやれない悔しさが入り混じっていて辛かった。
ヤクザはヤクザ
どんなに普段優しくても、キレると何をするかわからない元ヤクザ。
一度でも現実で関わったことがある人なら、この映画を見てもどうしてもヤクザには感情移入出来ない。今まで何度もテーマにされて来たテーマだし、新たな視点があるようには見えなかった。
タイトル詐欺
三上の家庭環境が悪かった事が容易に身を落とす原因なのはわかる。
なのに母への想いが残るのはわからない。
少年だった三上は施設に預けられたまま、捨てられた状態となり施設を出奔しアングラな世界に入り込んだ。
ヤクザ渡世が染み込んで社会では通用しない感覚が身に付いたまま、そして妻が出来た事をきっかけに堅気になろうとした矢先、絡んできた相手を殺してしまった。
殺人は重い。
作中に何度も問われる。
「後悔しているか?」「相手に対してどう思っているか?」など。
三上はあまり反省していないし、「あっちが悪いんだよ」と必要以上の反撃で相手を殺害した事に頓着がない様子だった。
そんな三上が刑期を終えて出所…身元引き受け人や更正を手助けする人々に囲まれて変わっていくかと思いきや、社会の差別は本当に厳しい。
銀行の通帳は作れない、反社会的勢力に属した事があると生活保護すら受けにくくなる。
刺青も問題だ。
三上の周りには普通に社会に適応している人が大勢出てくる。
皆、当たり前に我慢するべき事を我慢出来る人々だ。
ちゃんとルールを守って生きている。
三上はどうだろうか?良いか悪いか別にして一本気で所謂スルー力なんて全く持ち合わせない。
そんな人がルールを守れる人達の助言を受け入れるまで、紆余曲折を経る…実話と言う事だがやはりこんな風に扱われるのも仕方ないと思ってしまう。
TV局がらみでライターとプロデューサーが出てくるが、ドキュメンタリーで撮った方伝わると思うけど…それじゃあ売れないんだよなぁ。
物語として纏まっているが大きな変化はなく淡々と進む為、心が揺れ動かされる作品ではない。
より優れた人間がより優れた社会を構築しその為のルールを作り、新しい社会の常識を作り、その他大勢がそれを守っていく。
ルールから外れるとつま弾きされ生きづらくなる。
ルールに耐えながら生きてる人間からすれば、ルールを破る人間は「ズルい」「私たちは我慢してるのに…」となる。
しかし、そのルールを作り出した人が自分を有利にするルールを作っているような気がするのだ。勿論そんなルールを作れると言うことは圧倒的なちからを持っていることに他ならない。
話は逸れたがそんな社会で使えない人間の行き先はアングラしかない。
一昔前ならそれなりにアングラ社会にもアングラなりの不文律があり、濁りのなかでそれなりの秩序があった。
だが今はグローバリズムで作られた“当たり前、スタンダード”が「えっそれが世界の常識なの?」と驚かれながら受け入れられる社会となり、濁りにも弾かれてくる人間が増え、支えるのにちからも金も要るようになり反社会的勢力にもグローバルスタンダードの波と暴対法。
弾き出されたつま弾き者の受け入れ先であった総称ヤクザと呼ばれる居場所を掃除しまくった結果、世の中には別種の害悪が多数出現し平和も失われつつある。ヤクザを褒めるつもりはないが、散々つま弾きにされる三上が電話した元ヤクザ(白竜)と話していると“やっと話が出来る”ホッとした表情を見せる。
誰かに従って生きても、やせ我慢とストレスの嵐。
逆らっても疎外され生きづらい生活を強いられる。
歴史上、色々な為政者が居たが今の時代が本当に「すばらしい世界」と思っている人は少ないのではないか?
三上のラストは切ない。
生まれついた環境や能力で愚かにしか生きられない人間は罪なのか? 愚...
生まれついた環境や能力で愚かにしか生きられない人間は罪なのか?
愚かな人間を害悪としてしか扱えない社会が罪なのか?
全体を通して流れているヤクザ者の諦観。
まるで北野映画のよう。
素晴らしい。
常識と良識にずれがあり、我慢が出来ない子供のままの男。
風俗嬢との親密な会話や仕草が印象的。
子供のままに狂気を身に付けた彼を周りが見捨てず拾い上げていく物語はお伽噺のよう。
一方で愚かでないはずの人間の残酷さは露骨すぎる程。痛々しい。
お伽噺と狂気と残酷さと、親密さと。
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