すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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偽善者がいない世界
ポスターに描かれているコスモスのように監督自身の優しさが映像の隅々に満ちているように感じた。現実の厳しさをリアルに描きつつも、酷さを煽るようなことはせず、きれいごとで済ませることもなく、ほんの少しの人の温かさを丁寧に掬い取って描いている。登場人物には偽善者がいないし、主人公を全否定する人もいない。それをすばらしい世界と呼ぶのだと思う。
主人公は堅気になると誓い、世知辛さや屈辱にも耐えようとしているが、喧嘩の仲裁などの場面で昔の癖が発露して生き生きとすることがあり、そのような様子を見ていると、その人のこれまでの人生を全否定してその人らしさを奪うことが更生ではないと感じた。その人らしさを残しながら世間の感覚と乖離しないようにコントロールするのが本当の社会復帰なのだろう。
世界はすばらしいか?
やり直しができる世界へ
一度、大きな間違いを犯してしまうと、立て直しが利かない社会。そんな息苦しさを感じながらも、自己責任的に自分を守ることに汲々とする小市民。そんな一方で、世の中の流れについていけずに、置いてけぼりを食ってしまう人々も多い。三上も、周囲の人々の温かい声掛け、絶好のチャンスが無ければ、どうなっていたかわからなかった。スーパーの店員、テレビ局の局員、保護観察の人、やくざの馴染み、役場の担当者。皆が少しずつ善意を持ち寄って見守ったから、何とか更生している。
しかし、このように上手く更生できる人は、そう多くはないのではないか。せっかく更生できた三上すら、体の無理がたたって亡くなる。現実に添って描くと、こういうものなのだろう。
人々の関係性がドライになって、個人がむき出しになり、やり直しをしようとする人に対して、面倒を見る人が圧倒的に少なくなっているだろうと思う。
唐突にスイッチが入って、暴力的になる三上を役所が流石の演技。テレビ局の関係者を仲野が良い意味で青臭い感じで演じていた。
自分らしさとは
久しぶりの西川美和監督作品。ラスト、施設で自分を殺し、見て見ぬふりをしたが、その先は・・・。自分らしく生きることが正しいのか、どうなのか、ずしりと胸に響く作品でした。
ハッピーエンドにして欲しかった。
主人公の三上の気持ちが痛いほど分かる、今の社会の中で反社と呼ばれる暴力団は詐欺、窃盗、違法薬物の密売と自分の様な還暦世代からは考えられない集団に成ってしまっている、自分達の世代にはまだ辛うじて組織のテリトリーがありがとう、ソコを侵すことや、人様の物を盗む、老人をの様な弱者を騙す、未成年の様な子供を脅して犯罪に使う等の弱い者虐めはしない等の最低限のルールが辛うじてあったが今はそれも無くなり、刑務所帰り、前科者、の社会復帰はホントに我慢!我慢!の一言に尽きる、自分の選んだ事や自分がやって来た罪ならばそれも当然と言えば当然なのだが、せめて今の努力は努力で認めてあげるべきでは無いのだろうかと考えさされた作品でした。
リアリティと「三丁目の夕日」のどちらかにすべきだったかもしれない。
殺人の罪で服役していた元殺人犯の三上が社会復帰を試みる。
復帰、といってもずっと極道の世界で生きてきた人間がカタギの世界で生きようとするのだから、もといた場所に戻るのとは違う。彼が今まで生きてきた世界とはまったく違う。三上はカタギの世界に馴染もうと努力する。しかし、体に染みついている感覚が、庶民の世界との違いを浮き彫りにする。
それでも彼を見守ってくれる人々はいた。
元極道の社会復帰という設定にはさほど新鮮さはないが、三上の母親探しや、それをテレビにするという名目で彼をネタにしようするテレビ局の人間とのやりとりなど、サイドストーリーが本作に奥行きをもたせている。
役所広司の演技はなまなましくて、極道がカタギになるというのは、こんなに大変なのかと信じ込ませる説得力がある。ただ、その熱演ゆえに、まわりの人々の優しさが嘘くさく見えてしまうという皮肉な効果もあった。
三上のまわりにいる人々は、とにかく優しいのだ。リアルな世界を描きたいのか「三丁目の夕日」をやりたいのか。そこはどちらかにしたほうがよかった。
長澤まさみ演じるテレビプロデューサーが「刑務所から出てきた人が普通の社会に復帰するのは本当に大変だ。だからこそ取材したい」という。その言葉は、彼女の企画のテーマであり、この映画のプロットでもある。
映画そのものは、刑務所から出てきた人間が苦労する話を伝えたいわけではなく、むしろ、人と人がつながることの大切さを伝えている。
だから、やたらと優しいのだが、他人に対してこんなに本気でぶつかる人が、こんなにたくさんいるだろうか。そこはどうしても疑問が残る。
実在の人物をもとに
実在の人物を基にその人の人生を描いた作品。
元ヤクザの男が刑務所から出所して、カタギの生活を試みようと思っていても世間は、なかなかに認めてくれない。
犯罪を犯しているというだけその男に対する視線は、とても厳しいものになる。
それでもまともであろうと奮起している次第に力になってくれる人があらわれる。
この作品で感じたのは、前半から後半にかけて、これほどまでにハッピーエンドで終わらない作品は、なかなかにないなと感じた。
けれども、後半にかけてのそれぞれの今まで思っている感情と真逆の部分を演じるのがすごいと感じた。
俳優さんと脚本の力でこれほどに彩られる作品は、なかなか見ない作品だなと感じた
自分ごとの範囲
2日連続で役所広司作品を鑑賞。役所広司凄いわ...
作品の所々で綴られている現代社会についての解釈がメッセージ性を強く帯びて自分の中に取り込まれてく。
世の中の大半のことには目を瞑り、他人事だと決めつけてやり過ごす。結局は自分ごとのなかで生きている。ここからは自分には関係ない。悪いと分かっていても巻き込まれたくない。今ある社会の枠組みから外れたくないから。だから一度外れたものを許せないし、哀れみの目で見ることしか出来ない。
自分が普段生きていると忘れている、というか、気にも留めてなかったこと、今の社会に蔓延る根深い闇を描いてくれた作品。
作中に出てきた人々が語っているこの現代の社会の視点は、
別にこの作品を観たからと言って、何か自分の行動が、意識が変わるわけではないけれど、そういう視点があり、そこでもがく人々がいて、その人に手を差し伸べたいと思う人がいるということを、頭の片隅に置いていきたい。
三上さんみたいに自分ごとの範囲が広く、色んなところに目を瞑らないとこの社会で生きていくことが難しい人もるし、社会から外れたくない想いが強くそういう自分に真っ直ぐな人を少し羨ましがる角田みたいな人もいる。どちらにとっても生きづらい世の中だけど、そういう人が繋がったとき、そんな世界がすばらしい世界になるんだと思う。
役所広司の演技力が半端じゃない...
この人の凄さを体感する作品と言っても過言ではないくらい、この人の世界には引き込まれる。
役所広司さんの圧倒的演技と苦しい生きざまが痛々しい良作
刑務所から出てきたヤクザ上りの男が生きづらい現実の中でもがき苦しみながら居場所を探す心の旅を役所広司さんが素晴しい演技で魅せます
役所さん、九州なまりが本当に上手いなと感心してましたが、長崎出身の方みたいですごく納得しました
カッとなるとどうしてもヤクザの血がたぎり暴力的な言動・行動が出てしまうのを、周りから諌められ、必死に直そうと自分と戦う姿が痛々しかった、私もヤクザではないけど(笑)同じ様な一面があるから、直したくても直せない辛さがよく分かってリアルに苦しかった
梶芽衣子さんが歌う、名曲「見上げてごらん夜の星を」が心に染みて印象的、観終わって暫く頭から離れなかった
大好きな長澤まさみさんが相変わらずとても綺麗でしたが、出番が少なかったので残念でした
最後は、えーーーっ?
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元ヤクザで妻を守るために殺人を犯した役所が出所。
弁護士が後見人になってくれて、仕事を探すが難航する。
正義感が強く短気で暴力的、という純粋さのためだった。
最初はおもしろがってTVが取材についてたが、その話もなくなる。
そんな中でも力になってくれる人達はいたが、素直に受け入れられない。
他人の施しを受けるのは恥という心が常にあった。
そしてついに昔の兄弟分に連絡を取るが、今はヤクザは苦しかった。
ちょうどそんな折、その組に警察の手入れが入り、壊滅(たぶん)。
あなたは堅気で生きなさいという、兄弟分の妻の言葉が響いた。
やがて介護の仕事につく。そこで職員同士のいじめを目撃。
チャラくて頭悪そうなその職員の言動にキレそうになる役所。
でも自分を支えてくれる人達のことを考えて辛抱した。
その帰り、昔の嫁から電話があり、娘と共に会えることになる。
でもこのささやかな幸福感が死亡フラグだった。
持病のあった役所は帰宅後急死したのだった。
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元ヤクザにとって今の時代が生きにくいことは間違いない。
おれはその世界には縁がないが、少数派の人間なので共感はある。
主人公が根は純粋で真面目なのもまた共感できた。
身元引受人の弁護士・役所の生活保護課の人・彼を取材してたライター
・偶然同郷だったスーパーの店長・・・みんな優しいし温かい。
ラスト15分くらいになって、急に物事が好転し始めるもんだから、
結局ダメでした~・・みたいなオチが待ってる気がして怖かった。
だってそのまま終了、じゃ映画として面白くないだろうから。
でもつまらん終了でいいから、何事もなく終わってって祈ってたな。
自分を信じ、更生を祝ってくれる人達を裏切って欲しくないから。
もちろん一生懸命頑張って来た自分自身のことも。
そしたらまさかの急死。えーーーーっ?って思ったけどな。
でもこれ、また道を踏み外すよりはハッピーエンドなんよな。
そんなことに胸をなでおろす、謎な自分がいたわ。
役所広司
私達が生きている世界は素晴らしいか
ストリーミングで視聴
とても良かった
役所広司演じる一匹狼のハグレモノ、三上が刑務所から出所後、カタギに戻っていく話
正義感が強く、真っ直ぐで不器用なやくざ者を演じる役所広司、流石だ
実生活で近くにいたら、怖いだろうな。。。
彼が殺してしまう、傷つけてしまうのは、弱いものいじめをするもの、ということである意味、ダークヒーローとしても描かれている
刑務所よりも、外の世界のほうが、我慢の連続で、よほどヤクザな世界だ
弱いものいじめも起こる、見て見ぬふりをして周りと上手くやっていかなければならない場面も往々にして起きる
そんな世の中に対し『すばらしき世界』というタイトルが印象的だった
仲野太賀が身分帳を下に、記事を書く中で三上と心を通わせていくのだが、ここはもう少し、厚みがあっても良かったかもしれない
後半、俗世になじむために自分の正義感をぐっとおしころす三上の姿にはハラハラしながらも、胸が痛く、涙が出てしまった
強い人間ならば、社会経験をもう少し積んでいたならば、ああいう難しい場面も上手くコントロールできたのではないだろうか
自分を押し殺すんだよ、という極端な押しつけではなく、対人スキルを身につけることで、解決する方法もあったろうに、と思うと悲しい気持ちになる
最後、三上の死因は、解剖学的には病死だろうが、本当の理由は『すばらしい世界』の理不尽さだったのかもしれない
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