すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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三上にとって素晴らしき世界とは…。
今度こそカタギになるとゆう強い信念の元、不器用だけど真っ直ぐな心が回りを動かしていく。
真っ直ぐすぎるから生きづらいみたいな話があった。ずっと普通に生きている私でも生きづらさを感じるのに、三上はどれだけ窮屈か想像もできない。
梶芽衣子演じる保護観察員の奥さんが歌う《見上げてごらん夜の星を》は涙が止まらなかった。あの歌で少し救われた気がする。
カメラアングルがとても良く、特に大雨の中になびく三上のランニング(?)。あの真っ白なランニングが、暗く冷たい雨の中になびいている様は三上の人生を象徴しているかのように感じた。
最期三上は、どんな気持ちでコスモスをにぎりしめていたんだろう。三上にとって素晴らしき世界は《普通に生きれる世界》だったのかな、と。ビジュアルのコスモスは、観る前後では全く違く見えた。
役所広司は凄みとコミカルを兼ね備えている数少ない存在で、《渇き》や《弧狼の血》でのヤバい存在感を演じたら右に出る者はいないんじゃないかな。日本を代表する映画俳優に違いない。
仲野太賀には面食らった、ますます目が離せない。
しばらく
タイトルなし(ネタバレ)
役所広司が凄いのは当然なんだけどさ。視点が完全に「役所寄り」の映画、かと思いきや、このひとが出所後に一方的に迫害させて「これでいいのか現代社会」っていう話では全然ない、ったことだ。
出所後に「今度こそ、堅気ぞ」と決意した、わりには、このひとは結構やらかす。次々に起こる困難を、罵声と暴力で解決っしようとする、その衝動がなかなか抑えられない。これは、社会に受け入れられないほうが当たり前だ。そもそも彼は自分がかつて犯した殺人を全く反省していない、自分は正義だったと信じている。だから、正義の名のもとにスイッチが入ってしまう自分の衝動を抑えられない。
あれえ? これは、元殺人犯という特殊な人間の話なのか? いや違うんだ、たぶん。現代に生きる人間は、誰もが三上なんだ、たぶん。
この男が社会に受け入れられようともがく姿は「成長物語」にも見える。
この映画は(たぶん原作者の佐木隆三氏を反映したかのような)崖っぷちルポライターの仲野大賀が、もう一人の主人公である。暴力に恐怖して走って逃げる仲野大賀。取材対象との距離の置き方に悩む仲野大賀。感情移入しすぎて傷ついてしまう仲野大賀。これも他人事ではない。
役所広司を取り巻いているのが、仲野大賀と、弁護士の橋爪功、スーパー店長の六角精児、ってメンバーなのが、またいい。「すばらしき世界」というタイトルは、決して反語でも皮肉でもない、かもしれない、と思わせる瞬間が、確かにある。だからこの映画は愛おしい。
ささやかな、希望と再生の物語
良い作品でした。
ちょっとキツイ話だったけど、観てよかった。
ただシリアスというだけではなく、おかしみを感じるところもあり、ダレることがなかった。
根は悪い人じゃないのだけれど、感情を制御できず、すぐに爆発させてしまう元ヤクザの三上(おそらく人格障害なのでしょう)。
世間の多くは、彼のようなニンゲンにはあまり関わりたくないだろう。
そんな三上にあえて関わって支えていく人々。えらいなぁ。やさしいなぁ。
けれど、大きく脱線した車輪を再びレールに乗せるのは、並大抵のことではない。
言うまでもなく、はみ出し者には、世間の風は冷たく厳しい。
僕自身もある意味カタギではないので、まったくの他人ごとというふうには観ていられませんでした。
けっきょくは、母と子、家族からはじまるのだなぁ、と思ったり。
観終わったときは、少しだけ物足りないかも、と感じたけれど、それを補うようにあとからじんわりときました。
家に帰るあいだも、いろんな思いが胸に去来した。
先ほどのシーンがよみがえってきて、また涙がにじんだ。
とにかく、三上は生きた。
不器用だが、懸命に。
この「すばらしき世界」の中で。
追記
それにしても、役所広司は素晴らしい。
あれほど凄みの出せる役者はそうはいないでしょう。
日本の宝だ、と思いましたね。
助演の仲野太賀も好演だったし、脇をかためる俳優陣もいい味だしてました。
世の中捨てたもんじゃない
ヤクザでもこちらのヤクザはカタギとして真っ当に生きようともがいている。
長い間、極道と刑務所の中で生きてきた三上には、こちら側の世界は本当に生きづらい。世の中は13年前とはまるで変わっているのに、古い考えで何をやろうとしても壁にぶち当たる。
それでも、周囲の温かい人達に支えられ、何とか少しずつでも軌道修正してもらいながら、就職もできたのだ。
彼は根は真っ直ぐで優しい男だ、正義感も強く、曲がってることをしてる奴を放ってはおけない、でもその加減ができずにやり過ぎてしまうという不器用さがある。
罪を犯した人が娑婆で、人並みに生活できるようになるには並大抵の努力が必要だろう。これは、以前から社会問題としても取り上げられているが、こんなに周囲の人々に恵まれたことは奇跡に近いのではないか。
ケースワーカーの北村さん、橋本さん、梶さんの弁護士夫婦、スーパーの店長の六角さん、そしてプロデューサーの仲野太賀さん。
中でもお風呂でのシーンの仲野さんの台詞と眼差しには優しさが溢れていて、胸に打たれた。
また、三上が介護施設で共に働く、知的障害の仲間に自分の生きづらさを重ねて涙するのには世間一般ではマイナスと捉えられるコンプレックスを抱えた者の辛さを痛いほど感じた。
そして、西川監督の笑いの要素を絶妙にいれてくるあたり、なかなか素敵でした。
三上、きっと思ったんじゃない。俺はこんな生き方してきたけど、別れた奥さんとも話もできたし、就職もできた、こんなに自分のことを必死に考えてくれる人達にも出会えて、意外とすばらしいんじゃないかと、この世界も捨てたもんじゃないって。
“すばらしき世界”
役所広司×西川美和、これは観るしかないではないか。
“今回はカタイぞ”これは堅い=まともな人間になるということ、その決心が固いということ。
予告の時からかなり印象的でした。
誰に言うでもない短い台詞だけど、とても重みがあり、簡単に発することができない言葉だと感じました。
人が本当の幸せを掴むには“心の豊かさ・余裕”が必要なんですね。
その手段は様々でお金なんかはその内の一つ。
三上にとっては“社会で普通に生きること”と、そして“愛”だった。
ディレクターの津乃田に身元引受人の庄司夫婦、スーパーの店長・松本、ケースワーカーの井口、みんな自分のできる範囲で三上を助けてくれる。
誰も全く恩着せがましくなく、まさにそれは“愛”だった。
“人は1人では行けていけない”という言葉の意味について考えてみた。
それはただ“助け合わないと生きて行けないから”ということだけではなく、“その人たちがいるから=自分の為だけに生きることはできない”ということなのだと感じた。
仲野太賀くんは本当に素晴らしい役者さんですね。
何でしょうね、怖いけどビビリながらも答えを模索して行動している感じ?“情けないと勇敢が入り混じっている”のがとても魅力的でした。
もちろん他三上を囲むキャスト陣も良かったです。
それぞれ三上とタイマンでの繋がりだったのが、就職祝いで一同が集まるシーンはとても温かい気持ちになりました。
波風を立てないことが最善とされつつある現代。
三上のような“0か100”の人間にはとても苦しいですよね。
非常なこと、どうしようもないだらけで嫌になることばかり。
それでもこの映画に“すばらしき世界”という題名が付けられました。
歩道橋で一番星を見つけた時の三上の顔が忘れられません。
さよなら絶望
タイトルから皮肉モリモリな作品でした。
希望が見えたと思ったら絶望が始まり、希望が見えたら絶望が始まるという繰り返し続ける簡単に言ってしまえば地獄映画でした。世間が悪と見る暴力は、守らなければならないといけないと思う正義感が先走った結果の行動で、必ずしも悪ではないし、かといって悪事を見過ごすことは自分を守るためであり、こっちも悪ではないなと思います。見事に善と悪を突きつけられました。
少しでも優しくされたら、自分も優しくされたように感じるのも痛い気持ちになりました。
死亡フラグを高速建築し、ラストまでも絶望に満ちてしまっていたのはスッキリしなかったので惜しかったです。
良い作品でした。
鑑賞日 2/17
鑑賞時間 12:35〜14:50
座席 K-20
感想
この作品を見終えて感じたことは、
人の人間性の根本的なところは、幼少期に育った環境や経験が根深く関係していて、
子供にとっての母の存在の大きさ、母親の子に対する責任の重さを思い知るような、そんな映画でした。
役所さん演じる主人公は、根は真っ直ぐな善人だと思います。
だけど不器用で、一般社会での生き方を知らないから、想いを伝える手段はいつも(暴力)に頼り、自分の感情を上手くコントロール出来ずに苦しんでいる。
彼が最期にしてしまった事は、
彼があまりに純粋で、それ故の生きづらさに対する葛藤の表れなのかなぁと強く思いました。
現代が抱える様々な社会問題を集約した、
切ない映画でした。
男をネチネチ、不自然さ、そして高倉健じゃなくて・・・
西川監督作品は「ゆれる」と「ディア・ドクター」しか知らないが、男が観ても全く違和感がないほど“男を描く”ことに長けているだけでなく、“男を描く”ことにネチネチと執着している印象がある。
この作品でも全く同じで、女優(梶・キムラ・安田・長澤)は、切れ味鋭く脇を固めているにすぎない。
西川監督にとっては、女性は自明の存在で、事細かに描く必要性がないのかもしれない。
西川監督の作家性というか、“性(さが)”を強く感じる。
本作で不自然に感じるのは、三上が自分のやくざな生き方に疑問を抱いていないにもかかわらず、なぜ多くの“娑婆”の人間が、三上に親切なのかということ。
前科者の“疎外”や“不寛容”がテーマのはずなのに、それを緩和する登場人物が多いという矛盾がある。
そもそも佐木隆三の原作にも、「周囲の人が善人ばかりで不自然だ」という批判があり、西川監督も「悩んだ」という。
リアルを少し捨てて、「小さな関わり」を徹底して描くことで、三上のキャラクターを生き生きと浮かび上がらせると同時に、ハートウォーミングな作品に仕上げたのだ。
「中年の男が刑務所から出てきて、ただ単に何でもない日常が続くだけでドラマがあるわけでもない」映画が、ここまで面白いのは、自分も役所広司の素晴らしさだと思う。
しかし、役所広司の力だけではない。
西川監督の演出は、驚くほど“ベタ”だ。スローテンポで、じっくりと主人公を輝かせている。
山田洋次監督が高倉健なら、西川監督には役所広司だということなのだろう。
素晴らしかった
去年から今年にかけてヤクザ映画を続けて見ているのだけど、とうとう最高傑作が現れた。ヤクザではなくヤクザをやめた男の話なのだけど、本当に素晴らしかった。いい場面がたくさんあったのだけど、自分のルーツをたどって児童養護施設に行って、子どもと一緒にサッカーをしていたら感極まって子どもに抱き着いて泣き出して離れなくなって子どもが困惑するところが特に印象深い。子どもが持つ無垢な魂に触れてたまらなくなってしまったのだろう。オレは普段から子どもと接しているので抱き着いて離れなくなることはないのだけど、そうしたくなる気持ちはとってもよく分かる。
就職が決まってテンションがあがって自転車で走りながら「シャブやってるみたいだ」というのも最高だ。
いい感じで介護の仕事についてこれからというところで死んでしまう。残念だと思う一方、最高の時期に死ぬのはうらやましくもある。大抵の場合、厳しい日常に苛まれてにっちもさっち行かなくなって弱り果てて死ぬ。素晴らしい出来事があった翌朝に死んでいるのが一番だ。
面白かった。この映画は映画館で観ましょう。
不思議な映画だった・・・
28年と人生の大半を刑務所で過ごした男が出所し、「今度ばっかりは、カタギぞ」 と普通の人生を送ることに取り組む話。なにも起こらない。
自分は役所さんの鬼気迫る演技にももちろん感心だったが、この映画では、さまざまなシーンでクリエイターと呼ばれる人たちの矜持を感じていた。
主人公のケンカを撮っていたが、その狂気に怖くなって逃げだすディレクターに、長澤さんがかける言葉。「撮らないのなら、ケンカに割って入ってとめなさいよ! 止めないのなら、撮って、伝えなさいよ! (撮らずに逃げるなんて)お前みたいなのがいちばん何も救わないんだよ!」
いやあ、強烈。これが、「撮って伝える」 というTVマンの矜持か。俺も怖くなって逃げちゃうだろうなあ。
「カメラは、もう、ないです。でも俺、三上さんのことを書きますよ。普通になるんですよ、三上さんは。それでも書けます。僕は、書けます」 作家になりたい仲野さんのセリフ。「書いて、伝える。たとえそれが、ただの普通な人生であっても」 これがライターの矜持か。
そして、この映画自体、何も起きず、主人公がもがき、周囲が見守るだけ。それを撮って伝えるのは、映画監督の矜持か。
と考えながら観ている俺の前で、そんな素直に終わってはくれないこの映画。主人公にこらえることを心から伝えたのは、同じように生きているアベくんだったのかなあ。嵐の中のコスモスだった・・・
かすんだ青空に、「すばらしき世界」 と浮かぶエンディング。主人公にとって、観ている我々にとって、なにがいったい 「すばらしき世界」 だったのか? 何もすばらしくない世界だからこそ、逆説的な言い方をしたのだろうか。 いや、自分はそうは思わなかった。カタギになろうとした主人公、そのもがき続け、あがき続けた姿が 「生きる」 ということ。それこそが、すばらしき世界なのだろう。
かって所属していた組のあねさんが、別れ際に主人公に言ったセリフ 「今はヤクザじゃ稼げない。シャバは、我慢の連続ですよ。でも、"空が広い" と言いますよ」 ・・・
レビューは以上なのだが、何回も身につまされる思いをした映画でもあった。
その代表的なシーンをひとつ。TV取材を受けようとする主人公に、「食い物にされるだけだ。TV番組ひとつで世界が変わるとは思えない」 と進言し、主人公に口汚く罵られた際に、「きょうの三上さんは、虫の居所が悪いんだね。また日を改めて話そう」 と語るスーパーの店主。このセリフ、言えるか、俺は? 普通ということ凄さを思い知らされる。
おまけ
本編とさほど関係ないのだが、裁判所でのシーンでは、検察や弁護士と、被告や証人とのやりとりというのは、誘導尋問のオンパレードだなあ、と必要悪を痛感した。
好きと嫌いの両方がある作品
「すばらしき世界」とは?
この映画も本当に余韻が凄くてしばらく引きずりました。いろいろ考えてしまったなぁ。
根は優しいけど“瞬間湯沸かし器”で凶暴にもなる主人公の極端なニ面性を見事に演じている役所広司さん!もう三上は役所さんしか考えられないですね。
もし自分の近辺に三上のような人がいたらどう接するでしょう?私は…関わりを避けてしまうと思います、残念ながら。
だから、弁護士夫妻はもちろんのこと、ケースワーカーもスーパーの店長も立派すぎて。津乃田も変わったものね。
あ、そうか、あの人たちが「すばらしき世界」なのか!!
(でもおそらく皮肉もこめられていますよね)
仲野太賀さんイイねー。北村有起哉さんは「ヤクザと家族」とは真逆の役をやったのが大正解でしたね!
でもやっぱりこの映画は役所さんの演技あってこそ、でしょうね。複雑な生い立ちの三上が発する言葉は全く台詞には聞こえず三上そのものの声でした。
結末は…
この結末の感触も「ヤクザと家族」と比べてみると面白いかも。
作家性の強い監督さんの作品だから好みは分かれるのでしょうね。
いや〜良かった!
刑を終えた人の半数が
また犯罪を犯し
所に戻る
この事実が表しているのは?
そして思う
就職祝いの部屋での梶さんの歌うシーン
介護施設の畑のやり取りのシーン
仲野が役所の背中を流すシーン
終盤の花を貰って帰りの自転車で泣いてる途中にかかってくる電話のシーン
など(他にもたくさん)…
もっと人との触れ合いや
交流があればと
どんなに悪とうなヤツでも
感動には勝てない
人は感動には勝てないのだ
絶対に
そしてそれは
人との触れ合いを意味する
この映画の
「すばらしき」とは
皮肉ってるようにも
思えてきます
みんな自分が生きていくのに
精一杯で
他人の事なんか
気にしてられない
増してや
反社となると
それはそれは
冷たいどころか
残酷だと思います
その中で
どうやって人と関わっていくか?
はたまた
住み慣れた環境の
元巣に戻るか?
劇中セリフ(記憶曖昧)で
「真っ直ぐすぎて自分を曲げられないのよ〜」
「逃げる事も大事。そして次の戦いに備える」
って。
わかるわかる
そーなんだよなぁ〜
不器用すぎて
直行してしまう
今は見過ごす時代でして
自分の考え方と違ってるからと言って
1つ1つ全部に構ってたら
バカをみる時代
とにかく
この映画は凄く良かった
役所さん、六角さん、橋爪さん、北村さん、梶さん…
皆んな好き過ぎて(涙)
今年の初っ端から
すばらしき邦画に
感謝です
兎角この世は生きにくい
一種の社会福祉的映画である。社会福祉的作品といえば、某局ドラマ『健康で福祉的な最低限度の生活』が思い浮かぶがドラマが教科書的なオモテとすれば、こちらは殺人をおかしたヤクザが社会復帰を目指す“ウラ”的な存在。
三上(役所広司)が身元引受人の弁護士庄司(橋爪功)と生活保護を求めて役所に行った際、北村有起哉扮するケースワーカーが「反社には生活保護はおりない」と言うが庄司に説得され応じるシーンが象徴的だった。
景気の低迷が長く続き一般人でも行きにくい昨今。政治家は再チャレンジなどと言うが一度踏み外したら生きにくいこの社会、殺人をおかしたヤクザなら、さぞかし社会復帰は難しかろう。映画では三上に対して共感を示すテレビカメラマン津乃田(仲野太賀)やスーパーの店長・松本(六角精児)が登場し、三上を温かい目で見守るが、現実は更に厳しい。兎角、この世は生きにくい。この映画、役所広司の“目”が印象的で、大いなるリアルを感じた。
普通って何だろう?
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