すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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2021/3/4
前科持ちに対して不寛容な社会に対して、『すばらしき世界』という皮肉的なタイトル。考えさせられる映画ではあったのだけれど、その世界の理不尽さを表現するためにラストに持ってきた出来事が短絡的すぎて、シャバイ脚本だなぁと思ってしまった。
純粋で生きるのが下手な三上の人柄に助けたくなる気持ちもわかるけれど、それにしたって周りの人たちが他人に寄り添えるいい人ばっかりなのも気になってしまったし、そんな周りに支えられ社会になじむために障がい者を笑う同僚に同調するのがめちゃくちゃ気持ちが悪かった。
あそこで三上が気付くべきなのは、障がい者の同僚をリンチしたのは「仕事をさぼった事に対して怒った」という理由があったことを知って、自分自身の暴力も理由があったって事と照らし合わせることと、どんな理由があれ暴力はダメだということじゃないのかな…。
後味は「うーむ」って感じにはなってしまったのだけれど、役所広司さん演じる三上の純粋かつ瞬間湯沸かし器的な性格故の緊張感ある感じと、キムラ緑子さんと安田成美さんの凛とした女性感とか、役者さんたちの演技はとっても良かったです。
最高最高傑作。 怪物
階層
最後に流れるタイトルコール
「すばらしき世界」
皮肉めいた終幕で、全編通して愚痴のような印象を持った。
「身分帳」という原作から着想を得たらしい。
服役する囚人の経歴をこと細かに記したものだそうな。犯罪を犯した者は区分けされ、その生態を記される。まぁ…それはいい。そういうシステムだ。
異常な事とは思わない。
異常な事をした人なので、本人の為にも周囲の為にも必要なのだろう。
問題なのは「世界」のあり様だ。
鑑賞後、凄く具体的に個人の数だけ世界は存在すると思えた。世界は1つだけれど1つではない。
俺にも、電車で居眠りしてる眼鏡をかけたおじさんにも当たり前のように存在する。
同じ世界に生きてはいるが、同じ世界を見てはいない。
そんな感想を持ったのも、想像だにしない三上の世界に衝撃を受けたからだろう。
役者陣は皆様熱演だった。
役所さんは方言を話しているだけなのに、役所広司ではなく三上に見える程だった。
恫喝する眼差しや、台詞の扱い方…ちょっと今まで見てた役所広司ではないように思える。
素晴らしかった。
彼は出所後、更生の道を模索する。
だが生来の気質がそれを正しいと判断してくれない。メディアにほだされ、その気質を解放した時は水を得た魚のようだった。まさに自分が生きてきた世界に帰ったのであろう。
カメラマンの不在が分かった後は、自分が負かしたチンピラに「おう、立てるかー?飯でも食いにいこやー」と天真爛漫に声をかけてそうだ。
カメラマンは逃げ出す。
違う世界の住人と関わる事を拒絶したのだろうか?
彼を追うディレクター。
彼女にも彼女の住む世界があり、その世界から彼は拒絶されたようにも見えた。
紆余曲折を経て、三上は更生の道を歩き出す。
彼が選んだ世界は、自分を殺す事から始まるようだった。周囲の人間は三上を諭す。
「我慢するのよ」「今までみたいな事しちゃ駄目よ」
至極真っ当な正論である。
だがそれは、ありのままの自分を否定する事と同義で、それを誤魔化す為に「成長」なんて言葉に変換されたりもする。
彼は従い、自らを変革していく。
彼の世界は一変する。
世界自体は変わらない。彼の世界だけが変わるのだ。
そして、遂には自分を殺した。
そうしなければ、三上の選んだ世界は三上を受け入れてはくれないのだ。
同僚に相対し涙したのは、悔しさだろうか?それとも謝罪だろうか?
支援者から就職祝いに貰った自転車をこぐ三上の目はとても穏やかだ。だけど生命力は皆無であった。
かつての溢れんばかりに漲っていた命の荒々しさは、その眼差しに宿る事はない。
そこにかつて愛した女性からの電話。
ささやかな、ホントにささやかな幸せを目前に、三上は死ぬ。
「これからじゃん…三上さん、これからじゃんかよ?」
と、支援者達の声が聞こえてきそうだ。
その直後にタイトルコール
「すばらしき世界」
…絶句。
前科者のヤクザって設定だから、振り幅は多いものの…三上に限った話じゃない。
この世界は、ありのままの自分では生きられないように形成されているのだ。
我慢を根底に、ルールを覚え調和に細心の注意を払う。自分の世界とは、違う世界と折り合いを模索しながら生きていかなくてはならない。
いや、自分の世界を違う世界の価値観に変換し続けなけば生きていけないのだ。
最後に彼は死ぬ。
安堵したような目が印象的だった。
「これでようやく生きていかなくて済む」とか「良かった。死んだようにではなく、ちゃんと死ねる」だろうか?
解き放たれたかのように映し出される空。
三上のようにはなりたくないと思うだろうか?
俺は違うと胸を撫で下ろすのだろうか?
不安に思う事はない。
もう既に、三上の状態にはなってる。
知らず知らずの内に。
自覚が伴わない分だけ幸せなんじゃなかろうか?
これが「すばらしき世界」の詳細なわけだ。
映画館を後にし、個人を鮮明に意識した。
この人にも、あの人にも世界がある。
素晴らしいかどうかは分からないのだけれど、素晴らしいと思いたい世界は、俺と同じような尺度であるんだと考えられた事が、何よりの収穫だった。
King Gnu
ノンフィクション
古き良き映画
この世界は生きづらくあたたかい
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映画『すばらしき世界』
役所広司の演技が好きなので観てきました。
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刑期を終えた主人公が、久しぶりに社会に戻って今度こそはと堅気に生きようとするが、そこは偏見や差別に満ちた世の中で…
誠実で不器用ながらも真っ直ぐに生きる主人公の物語。
「社会で生きること=我慢の連続だ」というセリフがあったように、理不尽や間違っていることに対して、目を背けたり自分に嘘をついたり、逆らうことを諦めたり、休憩時間の誰かの悪口にも同調しないと生き残っていけない。
でも大概の人がそうやって我慢して何かを押し殺しながら生きている。それがいわゆる"普通の人"。そんな世界は、本当にすばらしき世界なのか...。
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物語のラストで、やっと見つけた自分の居場所で起こった障害者に対するいじめ。しかし、自分を押し殺して見て見ぬふりをする主人公。その後、いじめられていた子から貰ったコスモスの花束を握りしめ、そして…
なんか思い出すだけで泣けてくる...
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見終わってから虚無感でしばらく呆然。。
普通って何だろう、正義って、正しさって何だろう。
まっすぐな人間ほど生きづらい世界って何なのか。
タイトルの「すばらしい」の語源を辿ると「みずぼらしい、肩身が狭い」という意味らしい。
このタイトルがこの映画の全てを物語っている。
なんか今の自分に共感できる所が多くて、良い映画だった。
はたして「すばらしい世界」なのか…?
簡単に言ってしまえば、刑務所から出所した男が悪戦苦闘しながら色々な人と交流し、助けられながら社会復帰を目指していく。という物語だから、ストーリーとしてはそれほど目新しいとは言えないし、一筋縄ではいかないんだろうな。と観ている方も容易に予想出来てしまう。が、監督の演出と役所広司を筆頭とする俳優の名演技で素晴らしい作品に出来上がっている。普段は温厚そうに見えるが短気でキレやすく、すぐに暴力で物事を解決しようとする三上。だが正義感は人一倍強くて困っている人は見過ごせない。この人間味溢れる三上に少なからず共感した人は自分を含めているのではないのか?色々な事を我慢や無視できているだけ、困っている人を見て見ぬ振りをしているからトラブルや犯罪に巻き込まれていないだけなのではないのか?という気持ちになってくる…そして三上の様な人間が罪を犯さなければいけなくなる世界、三上の様な人間が社会復帰するのが難しい世界ははたして「すばらしい世界」なのだろうか…?
観てもらいたい
巷の評価がかなり分かれていたので観るのを躊躇していたが、師匠から是非観るべきと連絡が入りみに行く。
結果、観に行ってよかった。
少なくとも自分はそう感じた。
自分の心に刺さる何かを感じられる映画だった。
タイトルがいい。
どうしようもなく生きづらくて、頑張ったわりに報われなくて面白くないことばかりで、たいていは他人に厳しく無関心。
でも、それでも、他人を助けたいと思う気持ちに嘘はなくて、壁を超えてその個人を知ることで優しく出来るすばらしき世界。
優しくされるシーンに涙が出た。
そしてキャストがよい。
役所広司は期待通り言うまでもないが、他もみんなよかった。
誰かもう一人ということで挙げるなら、キムラ緑子。
もの凄く素敵だ。
賛否両論、好みも分かれるだろうが
観てもらいたい映画。
何がすばらしき世界だーー!!!
映画終わった瞬間『何がすばらしき世界だーーー!!!』とカップ麺ブン投げそうになりました!!!
8ヶ所くらいで泣きました。キャラクターのコミカルなやりとりに笑いました。
生きづらい世の中と人の優しさ。
この映画を見て自分に思ったこと。
『命懸けで私を生み育ててくれた母親になんで自分はこんなに興味ないんだろう』と
母に会えたら何を話す?について三上の「自分を産んだ時の気持ちを聞きたいね」と。
それ聞いた瞬間号泣。
そんな発想がない私はなんて親不孝者なのだと。
その発想があったからって母が喜ぶわけじゃ無いけど、当たり前過ぎる存在だからこそ有り難みを実感しずらい人間の儚さに涙でた。
社会で生きるってなんだろう?個を捨て周りに従うべき?器用が正義?私も毎日生きてて苦しいもん。楽しいけど。真っ直ぐ生きたい。
役所さんすごい
観終わった後ずっしりきたし疲れたけれど、観てよかったと思える映画で...
観終わった後ずっしりきたし疲れたけれど、観てよかったと思える映画でした。
たった2時間の間に、とても温かい気持ちになって、自分の心の孤独な部分をつつかれて、また温かい気持ちになって、最後は虚無感に襲われました。
こんなに祈るような気持ちで映画を見たのは久しぶりかもしれません。
前科者だとかマイノリティだとかあまり関係なく、人は人に支えられて生きているんだなぁと、綺麗事のようだけれど、とても納得しました。
そして、これが現実なんだなぁとも。
社会全体にとっての「すばらしき」は、必ずしもその社会を構成する個人にとっての「すばらしき」である訳じゃないし、どちらが正しいと明確に決めることは誰にもできなくて。
だからこうするべきなんだ!という強い考えを持てているわけではないのだけど、それを知っているだけでも何か違ってくると私は信じたいし、少なくとも自分はどちらかに偏ってしまわないで生きたいなぁなんて考えていました。
上手く言葉にできない感情で胸がいっぱいになっていて、レビューというかただの感想文というか、もはや感想文にすらなっていないかもしれないけれど、とにかく今はこういう気持ちです。
参考にはならないかもしれないけれど笑、映画を観た人は少しだけでも共感してくださる...かな?😅
あと、太賀さんがすごくよかったです!!!
空の広さ
全ての概念を捨て去った先に「多様性」は存在する
いきなり自分語りになってしまうが、私は物心ついた頃には既に「変わり者」と呼ばれていた。20年以上前の話である。個性を肯定する風潮などなく、その言葉は主に嘲りの意味で用いられた。
抑圧されることが日常であり、その経験から「ただ生きるのではなく善く生きる」ことを高校の倫理の授業で教わったその日から己の信条としている。
だから、鑑賞直後はタイトルの意味がわからなかった。
主人公の三上は強い信念を持つ男で、それははっきり「正義」と呼ぶに相応しく、本来は広く世間から賞賛されるべき人物である。しかし、彼は生まれ育った環境の影響から表現手段に乏しかった。暴力や大声以外の自己主張の方法を知らなかった。すると、善良な市民は当然彼を忌避する。三上の表面的な態度からでは彼の善良性を知るのは難しいだろうから、仕方のないことだ。
護りたいのに護れなかった人物から贈られた花を見つめながら独り静かに生涯を閉じた三上に、生への執着は感じられない。彼が求める「まともな人生」「普通の生活」は、正義感が強く情の深い彼にはあまりに理不尽が多かった。世話になった人々には絶対に迷惑をかけたくない。でも、そうするには己の信念を曲げ続けなければならない。なぜなら、穏便な表現手段を知らないから。
そんな彼の死を描いた直後によりによって「すばらしき世界」などというタイトルコールが映るのだから、こちらとしては納得がいかない。表現からしてどうやら皮肉ではないようだし、では一体誰の視点から「すばらしき」などと謳っているのだろう。しばらく考えた。
結論はこうだ。「世界には様々な人間が存在し、それぞれに受け入れ場所がある。それこそが〝すばらしい〟」。
鑑賞中は終始三上に感情移入し、彼が理不尽にぶつかっては憤りを覚えていたが、思えばそんな一見「悪」に見える者達にも彼らなりの信条は持っているはずなのだ。そして、彼らは自身を受け入れてくれる場所で身を寄せあいながら生きている。そこに三上との違いはない。
振り返れば、「居場所」の描写が多かったように思う。バカ騒ぎする若者が集うアパートの一室、極道の屋敷、チームワークを必要とする職場、後見人やかつての恋人の家庭など。素行の悪い者もいる。倫理観に欠ける行動を取る者もいる。しかし、それを「悪」と切り捨てては三上のような人間も生きやすくなる「多様性の受容」は実現しない。多様性とは「全」だからだ。
この結論に辿り着いた時、私は自身の未熟さを恥じた。そして、ただ広く青いだけの空に浮かんだタイトルコールに制作側から人間への温かな目線を感じた。同じ空の下、とはまさにこのことだ。
前述の通り三上に感情移入しまくっていたので印象深いシーンは数え切れないほどあるのだが、特筆するならば育った児童養護施設で三上がかつての職員と歌を口ずさむシーンを挙げたい。するりと幼少のみぎりに時が巻き戻る彼に、津乃田と同じく驚愕し、目を離すことができず、ただただ涙が溢れて止まらなかった。
脳に傷
これはああいう生き方しかできない男の物語であり、それを「不器用だが愛すべき正義感の持ち主」などという陳腐な言葉で表現すべきではないと思いました。
原作は未読ですが、監督は幼少期のネグレクトと愛着障害などの後遺症、延いては本人の自助努力や心掛けだけではどうにもならないという問題を、新たに加えようとしているように観えました。介護施設で虐げられていた自閉症の男性、その生い立ちを職員の噂話という形で提示したのも、そういう意図があったのではないかと思います。
ただそこの部分は、後半腰砕けになってしまったのが残念でしたが、その一方それも仕方がないのかなという思いもあります。虐待はキレイな話ではありません。正確に描いたら感情移入は難しいでしょう。そういう判断のもとに、例えば是枝監督の「誰も知らない」も、その部分はバッサリ切り捨てられ、母親を信じ続ける健気な子供たちという描き方がされています。
…その辺のことを監督は実際どう考えていたのか、興味があったのでパンフレット買って読んでみたら、そんなこと一言も書かれてなくてビビりました(笑)いや~、でも確実に監督はそういう要素も入れようとしていたと思うんですよねー。
とにかく良い映画でした。満足度は高かったです。
痩せてもう若くない役所広司
役所広司
仲野太賀
長澤まさみ
安田成美
キムラ緑子
白竜
梶芽衣子
橋爪功
北村有起哉
六角精児
旭川刑務所、東京下町の安アパート、博多
物語全体では、男の一生を語り尽くそうとする気構えは感じられる。もちろんわずか二時間で全てを語りつくすことなんてできやしない。
塀の中と外では、毎日の自分の食いぶちを稼がねばならないことと、刑務所の刑務官によって全ての生活が見張られているわけではないということが異なる。
彼は、少年院から数えて計28年もの歳月を塀の中で過ごしたという設定。母親に捨てられたことが彼の性格に暗い影を落としている。それは刑務所生活で更生できない部分。
劇場で見れて良かったです。
地味ではあるけれど、暴力的な部分、コミカルな部分、ストイックな部分、正義感に火がついてしまう部分など俳優役所広司の魅力が詰まっています。
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