「役所広司の真髄」すばらしき世界 qqさんの映画レビュー(感想・評価)
役所広司の真髄
西川美和監督の作品が好きでよく鑑賞する為映画館で見たかったのですが、タイミングを逃してやっと鑑賞。
役所広司が出所してからの話というのは知っており、孤狼の血でも凄まじい演技で圧倒されていたのでドキドキしながら見ました。
出所前は非常に真面目で規律正しい印象だったが、言われた事や見た事にすぐカッとなり手を出してしまう三上。生活保護を受けるも資格を取ったり仕事を探すのも一苦労で途方に暮れるが、周りの人達の助けにより更生していく。
カッとなった後に我に返り後悔する表情や、突っ伏したり自分の顔をぶつ姿。本当にリアルでした。
レール通りに生きていても皆幸せではない、だからはみ出た人を批判する。というセリフや出所後の人間が適切な支援を受けられず孤独になり再び犯罪を犯すというナレーションも常々感じていたので、改めてこうして作品の中で問題提起される事で1人でも多くの人が考えるきっかけとなるといいなと思います。
それでも終始重くなりすぎず、景色や音楽が美しく軽やかにまとめられているのが流石です。
最初は撮れ高を求めるマスコミの人間なイメージだった仲野太賀くんがとても素敵な演技でした。三上と少しずつ仲が深まり、背中を流すシーンから最後にかけて、三上を見つめる視線の優しさや絆に涙が出ました。
最後の青空にタイトルが出て、すばらしき世界とは何か。本当は皆一人一人が生きているだけですばらしいはずなのに、そうはいかない。しがらみやもどかしさ、闇の部分もしっかり捉えながら、私達にそう問いかけられているような作品です。
