劇場公開日 2021年2月11日

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「もしかしたら人間社会というのは全体的には酷いけど、いいこともある的なことを言いたかったのかもしれない。」すばらしき世界 Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0もしかしたら人間社会というのは全体的には酷いけど、いいこともある的なことを言いたかったのかもしれない。

2022年12月10日
PCから投稿

今村昌平監督の『うなぎ』みたいな映画なのかなと思って見たけど、だいぶ違っていた。

主演も役所広司さんで同じだし、ネタ的にも近いものがあるけど、『うなぎ』というより今流行りの”おっさんブチ切れ映画”(自分で勝手に呼んでるだけだけど、『アオラレ』とか『ミスター・ノーバディ』とか『ファイル・プラン』とか『ドント・ブリーズ』みたいな映画)に近いものだと思う。

先がどうなるか分からなくて、ハラハラドキドキして面白かった。

とにかく役所広司さんがうまくて、ほとんど一人芝居みたいなもので、どのシーンも役所さんが出ていて、役所さんで始まり役所さんで終わるみたいな映画だった。

この映画を監督した西川美和さんって、『ゆれる』と『ディア・ドクター』しか見たことなくてあまり注目してなかったけど、こういう”おっさんブチ切れ映画”みたいな流行りにいち早く気づいて、乗っけてきたのなら、そうとうセンスがいい人かも?

この映画は原案があるらしいけど、現在オリジナルを中心にやるような監督は、自分のやりたいことをやるだけの人が多い。

それだとたまたまヒットすることはあっても商売になりにくいので続かない。

世間の求めるものに合わせながら自分のやりたいこともやって、尚且つ面白い映画を作るのは相当な実力がないとできないと思う。

この映画は『すばらしき世界』とか題名がついているので、最後はすばらしい世界になって感動するのかと思ったけど、最後まで見ても全然すばらしくなくて「酷い世界」で終わったような気がした。

この映画の主人公は頭が悪くて、怒りを我慢できないから酷いことになるという自己責任もあるけど、親とかこの人物の周辺の人、それから社会も酷いと思う。

でも酷いばかりではなくてたまには助けてくれる人もいて、何度も破滅の危機があったけど、とりあえず主人公が暮らしていけたのが救いだった。

でも前科のある人だけじゃなくて、普通の人もこんなもんかもしれないと思った。

現実でも酷い人が多いけど、たまには助けてくれるいい人もいて、やなことばかりが多いけど、たまにはいいこともある。

天国ではないにしろ、地獄でもないみたいなアンビバレントな感じだと思う。

もしかしたら人間社会というのは全体的には酷いけど、いいこともある的なことを言いたかったのかもしれない。

Push6700