「嵐の予感のなかに終わる石川力夫=ジョーカー」すばらしき世界 塩減らしさんの映画レビュー(感想・評価)
嵐の予感のなかに終わる石川力夫=ジョーカー
最後の雨が良ければ満点だったのに、と残念に思う。
役所広司はアタマから血圧の高い半病人として登場し、出所前に刑務官と問答するなかで短気直情型の危うさが描かれる。
刑務所でも懲罰を重ねたことも、その気質からと伺わせる出だしだ。物語はその男が社会に適応できるのか、またキレてしまうのかというサスペンスを推進力として進んでいく。
出所して東京に着いた夜、橋爪功の家ですき焼きを食べて涙してしまう。翌日の区役所の生活保護申請で激し血圧が急上昇して倒れてしまう。
そうした振幅のドラマだ。『仁義の墓場』や『ジョーカー』のように。
その振幅が水を伴って描かれているのではと思うのだ。すき焼きの涙であり、白竜の家の雨であり、ソープランドの風呂であり、ルポライターと入る風呂である。
ラスト、嵐が近づいている。
橋を渡る。元の妻からの電話がある。(願望か?)コスモスを持ってアパートに着く。雨が降っている。が、この雨が良くない。せっかくの雨降らしなのだから、もっと思い切り出来ないかと、思うのだ。
長澤まさみの無用な色っぽさとか、分かりやすさ、くどさ、商業性に心配っている間に、肝心の雨をやり過ごしてしまったような残念さが残るのだ。
長澤含め、客を呼ぶ役とリアルさを支える役のバランスを練られたキャスティングは良かった。
「あんな生き生きとした三上さん、見たことなかった」
「人生は我慢の連続」
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