劇場公開日 2021年2月11日

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「細部にまで行き届いた見事な演出」すばらしき世界 Yukiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5細部にまで行き届いた見事な演出

2021年2月15日
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この映画は90年代に刊行された原作を、現代に置き換えたのだそう。

主人公・三上が13年の刑期を終え出所すると、東京の街にはその間に建設された"東京スカイツリー"が背景に映し出され、時の流れを感じさせる。

生活保護、近隣住民との軋轢、なかなかうまくいかない就職活動、元妻との別れ…

やがて三上はかつてのヤクザ仲間を頼る。
そのシーンではかつてから存在する"東京タワー"を中心に、俯瞰した長回しで東京の街を映し出す。
何も変わらない東京の街、変わる事ができない男…

しかしクライマックス周辺、
再び三上が未来に向かって前進する場面では、
そっと三上を応援するかのように二人"スカイツリー"が背景に映し出される。

劇中、長澤まさみが沖野太雅に「きちんとカメラを回して伝えることをしろ!それが仕事だろ!」と絶叫しながら説教する印象的なシーン。おそらく、西川監督自身のレンズを通しての自らの仕事に対する葛藤が込められているのだろう。

個人の繊細な内面と残酷な社会との軋轢を見事に描いた、すばらしい作品。

Yuki