劇場公開日 2021年2月11日

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「役所広司には惚れ惚れする」すばらしき世界 shoheiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0役所広司には惚れ惚れする

2021年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

役所広司の役所広司による役所広司のための映画。役所さんは1997年に今村昌平監督「うなぎ」で同じ殺人罪の刑期を終えた前科者の役をやっているのだけれど、その頃の役所さんはまさに飛ぶ鳥落とす勢い。前年に「Shall We Dance?」 翌年に「CURE」の主演を演じている。「うなぎ」も今村色は少し軽目ながら、忍耐や怨恨の情念がうごめく映画だったのだけれど、この作品はややコメディにも近い。シャバに出てからの主人公三上に対して、観客が「ああ、そっちへいっちゃだめ~」と声をかけたくなるような映画である。根が純粋で正義感も強いのだけれど、暴力が先走ってしまうが故に殺人の罪を犯してしまった三上。だけれど、役所広司の演技力とオーラは、その三上が人たらしとして輝かせている。本当にチャーミングでセクシーなのだ。出所後、三上は生活保護を受けるが、その状況に憤慨する。高血圧であるが故に医者から安静を求められるけれと、それでも三上は働いて何らかの生きがいを見出すことを強く望む。ところが、仕事はなかなか見つからず、ドライバーになろうとするも、運転免許も失効してしまっているので、学科および技能試験を直に運転免許試験場で受験、いわゆる一発受験に合格するしかない。教習所に通う費用は生活保護費では賄えないからだ。しかし、彼の周りには様々な人が味方になっていく。身元引受人の弁護士・庄司、テレビディレクター津乃田、そしてケースワーカーの井口、当初三上の万引きを疑ったスーパーの経営者松本。みんな彼の魅力に惹かれていくのだが、三上を役所広司が演じると本当に説得力がある。個人的には、助演ではキムラ緑子さんがいい演技をしていたと思う。私は西川美和さんの映画はちょっと狙いが見え透いていて好きではないのだけれど、今回はかなり的確な演出で、とにかく役所広司のすごいオーラと演技力を引き出したという意味で、監督として最高の仕事をしたと言えるだろう。とにかくこの映画は役所広司の映画。

shohei1484