「短気は損気」すばらしき世界 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)
短気は損気
子どもが大人になるまでの成長の話
すばらしい作品でした。
反社会的勢力にいた男が刑務所から出ても真っ当な人生を歩むのは難しい。
いくら反省して罪を償ったとしても、社会が受け入れてくれない。
仕事につくこと生活保護からの脱却、レールに沿った生き方をするのがいかに困難か切実に訴えていましたね。
前半は少しコメディ風でこのまま続いたら駄作になるだろうと思いましたが、中盤からしっかりとトーンを落としてシリアスになり、作品の伝えたいメッセージがズシズシと心に響きました。
中野太賀の正論ばかりの意気地なし野郎
北村有起哉の頭の固い役所職員
六角精児の意地悪そうな店長
どれもむかつきました、そして上手でした。
何より味方になってくれてからはめちゃくちゃいい人達、演技の使い分けか脚本の技か豹変するのではなく自然に打ち解ける感じがよかったです。
人は見かけによらないのですね、深く知りもしないのに互いに嫌なレッテルを張り合っている。
自分もそうなってはいないかとハッとさせられた。偏見はよくないですね。
よくぞ入れたと思ったシーン
終盤の介護施設でのモノマネシーン、あれは今の映画じゃなかなか見れないと思う。
そして主人公の「似てますね」の作り笑い。
耐える事を覚え大人になったと共に元の率直さや正直な少年の心を殺した瞬間でとても心を揺さぶられました。
「そんな生き方するくらいな、死んでけっこう」とまで言った男の成長と落胆、とってもいい表情と場面です。
この作品を通して、日本はレールから外れた人に厳しいが救いを一応用意している。
もし自分がレールから逸れてしまっても希望があるのだと教えてもらえました。
「ヤクザと家族」でもいかに社会復帰が大変か、生き方を変えるのが辛いかを映し出していたが本作も負けず劣らず厳しさと救いがあるいい映画でした。
主人公と役所職員のやりとりを見ていてなんか既視感があるなと思っていたのだが
想田和弘監督のドキュメンタリー「精神」か「精神0」のどちらかのラストに出てくるスクーターのおっちゃんだ。
全然似てないのだけれど、多分あのおっちゃんはこの物語の主人公と似た立場なのではないかと勝手に想像してしまった。
気になる方は「精神」「精神0」をご覧ください、とっても興味深く楽しい作品です。
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劇中セリフより
「空が広いらしいですよ」
広い空を見るために私たちは窮屈なルールに縛られている。
でもその空を見る価値は確かに有る。
うどん人さん
レビューを読んでいただきありがとうございます。
作品全体の評価の上下に作用しないように0しています。
読んでいただいた方に判断をお任せする感じですね。
星評価は他のレビュアー様にお任せしております。