劇場公開日 2021年2月11日

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「娑婆は我慢の連続ですよ。でも、空は広いち言います。」すばらしき世界 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0娑婆は我慢の連続ですよ。でも、空は広いち言います。

2021年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作既読。予告編はややキャッチ―すぎる印象があった。しかし本編は、硬派で無味乾燥気味のあの小説から、主人公の人物像をみごとに立ちあげている。前半、監督の得意とする"感情を振り回す"技が弱いな、と感じていた。いや、案じていた。これじゃ物足りない、と。
しかし。後半、みごとにやられますよ、いつものように。それも、怒鳴ったり、泣きじゃくったりとかのシーンじゃなく、三上の人が変わったような優しいまなざしを目の前にした瞬間に、ぼろっと。人は変われるのだ、と。いや、そもそも思い込みで人を仕分けしちゃいかんのだ、と。もともと真っすぐな人だったじゃないか、ただ筋を曲げることが嫌だっただけだ、と。そして、そんな三上がようやくそのコツをつかんだ矢先・・・。そう原作でもそうだったわ、忘れていた。そうか、津乃田は佐木隆三か。ある意味、この映画は佐木隆三へのレクイエムだ。
愚痴をこぼすのは簡単。世の中、温かい人はちゃんといるよ。だけど、相変わらず冷たい人だってどこにでもいるよ。大事なのは、自分自身の態度次第。それで自分の周りをどうにだってできるよ、世知辛い世間にだって、"すばらしき世界"にだって。

栗太郎