劇場公開日 2021年2月11日

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「不寛容な現代社会の生きづらさとホームドラマ」すばらしき世界 ショコワイさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5不寛容な現代社会の生きづらさとホームドラマ

2021年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

1 刑務所から13年ぶりに一般社会に復帰した男が、人との係わりの中で社会に溶け込み自己再生を図ろうとする話。

2 男の性格やこれまでの人生は、出所後の暮らしの描写やある協力を求められたマスコミの青年が行うインタビューを通じ、次第に明らかになってくる。前半のいくつかのシ−ンでは、ヤクザと刑務所の狭い世界のみで生きてきた男と一般社会との不適合ぶりが時にはユ−モラスに感じ、短絡で狂気じみた行動には恐怖を感じた。

3 中盤から後半にかけて、男が社会のレ−ルに乗れるのかそれとも外れてしまうのか紙一重の中で進んでいく。養護施設辺りの幸福感に満ちたシ−ンや介護施設でのギクッとするショットが折り重なる中、嵐の夜に・・・。

4 西川の演出は丁寧な作りで緩める所と締める所が適宜あったが、いくつかの点で不満を感じた。劇中、不寛容な現代社会の生きづらさは、前半のいくつかのシ−ンで見せ、また身元保証人夫妻やケースワーカに語らせた。そこは説得力があった。主人公に力を貸した人々が、中盤ごろ、心無い言葉で罵倒されても見捨てることなく見守った姿には一時の救いを感じた。その一方、「現実社会ではそうはならないだろう」とも思った。ましてや、就職祝いで集まって自転車を贈るというほのぼのしたホ−ムドラマのようなシ−ンには違和感を感じた。リアリズムに徹するとセミドキュメンタリとなってしまうが、後半の展開には、西川の願いかもしれないが、甘さが感じられた。また、映画の終わり方としては、嵐の夜に帰宅した所でエンドにしても良かった。翌朝のシ−ンまで引っ張らなくても良かったと思う。九州の親分さんの女将さんの対応にも都合が良すぎるように感じた。

5 主人公の役所は善悪幅広く演じて安定していた。力を貸した人々、スーパー店主・六角の善良さやケースワーカ・北村の実直、TV制作マン・仲野の一途、身元保証人・橋爪と梶の親身な対応は、見ていてウルッときた。

6 また、テレビ局の傲慢な番組作りや外国人労働者、介護の現場での実相、身分帳なるものの存在に小出しながら光を当てていた。

ショコワイ