「ハッピーではないがバッドエンドではない。」すばらしき世界 うどん人さんの映画レビュー(感想・評価)
ハッピーではないがバッドエンドではない。
クリックして本文を読む
役所広司の演じる主人公は決して良い人とは言えない。短気で粗暴で喧嘩っ早く、キレると見境がない。しかし出所後、周りの人に助けられて真面目に生き始める。そこで死んで映画は終わる。悲しい終わり方だけれども主人公が真っ当な人間になってから亡くなるのはバッドエンドではないと思った。中途半端に描かれた線だけの刺青は主人公の辛い半生(親に捨てられヤクザになるしかなかった)を象徴しているようだ。
印象的なシーンが多い。「孤児院で園歌をおばあさんと一緒に口ずさむ」「孤児院でサッカーをして子どもにすがって泣く」「雨に濡れ続けるランニングシャツと風になびくカーテン」
考えてみれば脳卒中(おそらく)で死ぬことは映画の初めから予想できるように伏線がある。物語の中で何度も発作(?)が起こり、病状が悪くなっていることが分かる。最後、花を握ったまま死ぬというのはこの映画のテーマを表しているように思う。役所広司の演技は素晴らしい。実際の三上さんはどんな人だっただろう、役所広司の演じた三上と似ているだろうか。
隣の席のおじさんが声をあげて泣いていた。僕も少し泣いた。エンドロールが終わり、照明が点いてもしばらく誰も立ち上がらなかった。
今日、思い出してまた泣いた。
コメントする