「人生の免許試験は一発勝負。」すばらしき世界 レインオさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の免許試験は一発勝負。
議論そのものの映画でした。
原作は古いみたいだけど今時こそ映画として蘇る意味があると感じた...色々考えさせられた、監督に感謝。
最初は、単純に刑期を終えた男が社会のマイノリティとして受け入れられない話だと思ったが、
それ以上だった。
色んな人が男に手を差し伸べた。
その中、焦点はテレビ関係者の人に当てられた。
長澤まさみの演じる吉澤さんは言った。
今の社会は生きづらい。
レールから外れた人はもちろん、レールの上にいる人も同じだ。
...
と。
彼女は結局は「口だけが上手い」と後ほど分かったが、
彼女の口によって出された課題は嘘ではない。
むしろもう一人の、津野田くんの行為がモノを言う。
彼はあの血まみれの決闘場から逃げた。
これこそレールにいる人間の正しい反応かもしれない。
三上の就職祝いの時も、レールの上の人たちが、「我慢」、「逃げる」ことはレールを踏み外さない生き方だと三上に伝授したのだ。
だが、この映画はここまで止まらなくて良かった。
これで終わったら単純な平凡作だとさえ思った。
レールから外れないよう、よく我慢できたが、
三上は死んだ。
彼は介護施設の虐められた男の子を助けなかった。
我慢我慢の挙句、彼は男の子からもらったコスモスを手に、嵐の夜で死んだ。
この悲劇をもって作者は最大の議題を観客に投げたのだ。
三上のような、素直で感情にムレがある人間はどうやって生きていけばよかっただろう。
どうすればレールから外れることなく、幸せに生きていけるだろう。
そもそも、吉澤の言ってたレールは一体何?
福岡のヤクザたちは結局警察に捕まったが、その人たちが三上を逃してお金まで渡したことから、完全な悪い人間でもない。
介護施設のスタッフにいじめ事件があった。病人に優しいのに、本当は心が腐ってる男の子がいた。彼はその一面を隠しただけだ。
けど、世の中は、レールを「外れた人間」と「外れてない人間」しかいない。
刑務所、福祉課、コミュニティ、他人の救い手さえ、結局完全な「正」の味方にならない。むしろその二分法に拍車をかけたかもしれない。
それに反して、特には、三上はアイデンティティなしのヒーローに見えた。
彼は十何年も変わらず古い社会のやり方を引き継いだ。
彼はは犯罪者だったが、
正義感で暴力を振るいながら、裁縫や片付けが得意で人付き合いが不器用というギャップを持ってる。
途中の生活シーンも可愛かった。
(この辺監督がとてもうまく...
繊細な表現が人間味のある主人公を作り上げた。こんな主人公こそ、観客の目を惹きつけ、さらに大きな批判的な議題と繋いだ気がする。
免許試験場のシーンも笑えた。
彼が刑務所にいる間、免許の期限が切れた。
人生で行き詰まったため、もう一度撮ろうとした。
それで再び勉強して、暖かい友人達の見守りの下で、試験官の目の下で、何回ものの試行錯誤をへて、「ルール」を勉強し守り、ようやく合格した。
この「免許を撮る道」が最大のメタファーであれば、
私たちの勉強力、賢明に生きる力、もう最高なんじゃないか?...互いに助け合い、共に生きていくための暖かい片隅を持ち....この片隅から見上げた空がもう十分広くて素晴らしいじゃないか?
と言いつつ、最後まで見て、何故か寂しい気持ちになった。この社会に...負けたような気持ちにもなった。