劇場公開日 2021年2月11日

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「心締め付けられる、真っ直ぐな男の生きざま」すばらしき世界 ちゃーるすとんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5心締め付けられる、真っ直ぐな男の生きざま

2021年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

監督・脚本 西川美和 の時点で見るしかないお話だったけれど、役所広司の表情、演技が相まってなんとも感動的なストーリーに仕上がっていた。

役所広司が刑務所から出て、堅気に戻っていこうとする中で、本人のまっすぐなところ、キュートなところ、なんとも憎めない前科者の姿がそこにあった。

「大事なことはだれかと繋がりをもって、社会から孤立しないこと」
「お産の時の話、聞いたことあるか」
「人間はいい加減に生きている。」
役所さんのセリフ、役所さんに向けられたセリフ、観客に刺さるセリフが非常に多い。

時折、昔のことを思い出し、行動に起こしたり、起こしそうになったり、フラッシュバックした時のローアングルからの表情が何とも言えないし、映画が進むにつれてその表情が変化していくのが素晴らしく、後半は涙なしには見れなかった。

仲野太賀とのやり取りは家族のそれに見えて来るし、六角さんとのやり取りは何とかこの人を理解しよう、手助けしてあげようという気持ちがひしひしと伝わってきた。何とも素敵な人間関係。

人との繋がりが大切なヤクザの世界から刑務所というゼロの世界に身を置き、
社会に戻ってもヤクザの繋がりを断ち切って、普通の生活で人との繋がりの大切さ、
生きづらさを学んでいくまっすぐな男の姿は、スクリーンを通して120%伝わった。
これが演じるということか。と再認識させられる作品。

ラストの、逃げることの大切さを役所広司がかみしめるシーン、後ろに見える仲野太賀の表情もまた良かったな。

ちゃーるすとん