劇場公開日 2021年2月11日

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「広い空の下の狭い世界で見つけた人の温かさ」すばらしき世界 よしさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0広い空の下の狭い世界で見つけた人の温かさ

2021年2月11日
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今日も空は広い。世界が狭くなっても、人の心が小さくなっても。それでも優しく手を差し伸べてくれる人もきっといて、特に知らない同士の関係 = 赤の他人同然だったときはそりゃ無理解に冷たく感じられても、時間をかけて分かりあえば。西川監督の師匠・是枝さんより分かりやすい起伏の付け方に、時折コミカルさも交えた語り口(ex.『夢売るふたり』)。タイトルはなにも楽観的に世界はお花畑だとか言うわけじゃない。むしろ甘くない現実をしっかりと見据えた上で、それでもまだ微かな希望や人間の良心を謳う。住みにくい世界の隅っこから。挫折、妥協の連続に夢破れ、平伏すのか。気まずい部分にまで目を向け、明確な答えを与えてはくれないけど、意味があって他人事じゃない。
「今度ばっかりはカタギぞ」普通になる --- "日本映画界のデ・ニーロ(くらい名作に欠かすことのできない存在/演じる仕事など作品毎の様変わりカメレオンっぷり)"と勝手に呼んでいるベテラン役所広司さんの、語弊を恐れずに言ってしまえばもはや安定なほど、べらぼうに素晴らしい名演技。太賀は去年の『泣く子はいねぇが』に続き、僕の大好きな分福作品。本当に嫉妬。けど、本当にいい役者なんだよな〜しかも若干あの年齢で。太賀同様、『マザー』に続き映画ファンから支持されるような作品が(珍しく)続いた長澤まさみは、衣装も相まって胡散臭いTVマン感。思ったより出番は少なかったけど、『ナイトクローラー』に出ていてもおかしくないくらい。
上述したような要素・側面から脇を固める面子も豪華な本作。特に個人的にはやはり北村有起哉、本作でも最高。『ヤクザと家族』と本作と、今年すでに一年を代表しそうな作品に立て続けに出たばかりか、どっちも反社会的勢力からの更生と類似した部分を持った作品という点も興味深い。去年も『浅田家!』、『本気のしるし』(面白いことにこれもヤクザしかも笑える)とか良かったしな。キネマ旬報ベストテンとか何かの助演男優賞獲ってほしい。橋爪さんは皆のおじいちゃん。

待ちに待った西川美和さん待望の新作、遂に見た!けど予告の使い所、本編終盤の重要なところ見せすぎだった。…から、「まだあのシーン見てないな」とか少し頭よぎっちゃった。

P.S. スクリーンで誰かずっと紙切れ(半券?)をクルクルクシャクシャするような音を立てていて、発狂寸前ものすごく苛立ってしまい、レビュー内で引用したセリフ「今度ばっかりはカタギぞぉ」を心の中で唱えてどうにか抑えたけど、それと同時に『孤狼の血』の「警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ」がせめぎ合っていた。

とぽとぽ