「映画は演出を堪能するものなんだなと実感」すばらしき世界 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
映画は演出を堪能するものなんだなと実感
普通じゃない男が普通になる、なれるのか、というお話。
ここのところ見てた邦画の中では圧倒的にいい。逆にこれをみると、やはり映画の醍醐味は各パートの総合力なんだな、と思う。改めて監督力の光る映画だな、と。
笠松則通さんのカメラがいい。ここ、というところに感情とともに入り込む。音楽もいいところで鳴る。過度ではない皆寄り添って世界を作り上げてる。
俳優陣も豪華。同じように丁寧にキャスティングされている。正直それほど興味を持てる題材でないように思ってたけど、こうどっしりじっくり描かれては見惚れてしまう。役所広司がいちいちおかしい。笑えると言うことでなく、チャーミングなのだ。切り返した時の顔が予想以上で、そんな顔されたら、というような表情。娑婆に出て出会う人々。男が疑うよりも裏はみんな優しく、冷たい顔の裏にこういった男に向ける希望みたいなものを携えていて、それが見えた時のリアクションが皆いい。六角精児が特にいい。仕事に就いた、ってことがこれほど歓喜に満ちたものになるなんて。物語が終わる時、タイトルが響く。束の間の夢のような娑婆の世界。儚い夢のような世界。取り込まれなかった最後の洗濯物を見た時、あっ、と思える演出。うまいなあ、と。
コメントする