「俳優で現代に撮影されたことがバレバレ」アントラム 史上最も呪われた映画 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
俳優で現代に撮影されたことがバレバレ
1970年代に実はこんな封印された映画がありました~というモキュメンタリーである。そもそも出演しているローワン・スミスはAmazonプライムで配信されている『ザ・ボーイズ』でホームランダーの子供時代を演じている子役だし、姉役のニコール・トンプキンはドラマシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー』に出演している現役の女優だ。この時点で1970年代の作品ということが嘘だとわかってしまう。信じさせたいなら、素人かこれがデビューの俳優にやらせるべきだったと思う。
あくまで「こんな呪われた映画があった」という設定のもとに、いかにも学者らしい人や映画業界人らしく見える人を配置して、「これは呪われている」「人を意図的におかしくさせるものが組み込まれている」など映画の内容とは別の角度で不安を煽っていく。こうすることによって、劇中映画「アントラム」の内容自体のハードルを下げていく効果もあるのだ。
劇中映画「アントラム」は、正直言ってストーリーの雑さや描き方の問題などいろいろな映画として不可解な部分が多いのだが、これはこれで70年~80年代カルトホラーの特徴的な部分やストーリーの雑さなどが逆に上手くカバーしていて、本当に70年代カルトホラーにみえるのは流石だと思った。
サタニズム的要素と『クライモリ』や『食人族』『悪魔のいけにえ』といった田舎や山奥で得体の知れない何かに襲われる恐怖をミックスしていて、演出が中途半端なところが映画として成り立たせることよりも、前後のドキュメンタリーを活かす駄目映画ぶりが素晴らしいし、儀式にも何故か日本の布袋さんの置物を使ったりしてバカさ下限も絶妙なのである。
映画の中に関係ないシーンや不気味な悪魔が数秒ずっと映り、謎のマークが所々に現れるなど意図的に映画自体に何者が細工して、精神的にダメージを受けるようにされているから、映画観た人はおかしくなってしまうという変なコーティングの仕方ではなくて、映画の内容自体がもっと宗教的だったり、精神を狂わせるようなサイケデリックで狂気性のあるものにするなどして、映画の内容自体から恐怖を感じさせて欲しかった。