「きっと、これが、現実。」許された子どもたち バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
きっと、これが、現実。
見逃していた作品。観たかったんです。気がついたら終わっていて。
アップリンクさん、上映ありがとうございます。
歯に衣を着せない作品。
終始生々しく、生温かい体温を感じ続ける描写の連続。故に、、、なんだ?この手触り。
リアルすぎる・・・。いや、現実なんだ、これ。現実を突きつけられている。
「おい、今、こーなってんぞ!」って「な?地獄だぞ!」って。
「警鐘」なんかじゃない。
誰かが隠し、誰かが守り、誰かが見過ごし、誰かが抱え込んでいるものを描いている。
ドキュメント映像では捉えられない、いじめの現場、子供たちの日常、少年犯罪の裁かれる現場、子供を取り巻く環境、親子関係、そして彼らを大きく包んでいる不特定多数達、、、世間。
僕たちが知るべき事実が描かれているんだと思う。
ここで描かれる人間はいつかは自分になる、いや、もうなっているかもしれない。
その「自分(になる)かもしれない」登場人物達を、巻き起こる出来事やそれらの顛末を、観客という立場で客観的に観ること、そして感じることが必要だと思う。
淡々とした日常風景のイジメ。
罪を感じてない子供たち。
無力かつ表面的指導の教育現場。
勝つことだけを考える弁護士
甘いもの(事件、スキャンダル)に群がり食べ尽くす蟻(匿名の世間)。
正義という名の暴力。
現実から逃げ続ける子供。
答えを見出せずもがき続ける子供。
子供ではなく自分を守るために必死な親。
子供を導けない大人達・・・・
これらの観ていることが本当に辛くなる現実、「今」を突きつけられる。
「どう思う?」
「お前はどうする?」
喉元にナイフのような映像(現実)を突きつけられながら問われている気がした。
どうにもできない。僕は現実を知ることしかできない。けど、その上で考えろ!と言われている気がした。だからこそ、できるだけ多くの人に目を背けずに観て欲しい。
きっときっと何かが変わる、変える、きっかけを作ってくれる作品だと思う。
キャスティングは演出の大きなファクターだと思っている僕として、本作のキャスティングを含めた演出のための準備は素晴らしいと思う。いじめのワークショップの実施などとても興味深く、演出的にも重要なポイントだと思う。本作は生々しくなければ意味がない。嘘っぽいと感じたら本作は作品としての力の多くを失っていたであろう。
また、映像作品としても素晴らしい。心情の表し方が秀逸だと思った。
新幹線の通過を背景にする、所在ない手の動き、目の動き、表情。視線のようなカメラ視点の移動など。さらに演者達。見事です。
そして、ラストシーン。
あの親子が選んだ道。それを選ばざるをえなかったのか?選んだのか?
いや、そもそも選んだのではなく、それしか方法が思いつかない親子だったのかも?
あの吸い合いのシーンは、ゾッとしました。
見事なまでに雄弁に映像が語りかけてきました。
それも現実。
僕たちは、キラのように原っぱでもがき叫び続けるのでしょう。
わかんねー、わかんねー、どーしたらいいんだー!って。
ただ、答え出るまでもがかなければ・・・って思う。