「役者の持ち味を活かして欲しかった」奥様は、取り扱い注意 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
役者の持ち味を活かして欲しかった
題名通りの主役の綾瀬はるかのアクション満載の作品だと思っていたが違っていた。アクションシーンは少なめで、ある出来事で記憶喪失になってしまった元特殊工作員・伊佐山菜美(綾瀬はるか)と、氏名を変えて夫婦となって彼女を監視する公安の伊佐山勇輝(西島秀俊)の海辺の地方都市での物語が主軸になっている。
序盤は、菜美が記憶喪失になるまでをアクションシーン満載で描写していく。期待通りの迫力十分のアクションを魅せてくれる。中盤は、記憶喪失になった菜美と監視役の勇輝の地方都市での物語になっている。その地方都市では、新エネルギー開発を巡り、開発賛成の市長派と開発反対派が対立していた。二人は、次第に対立の渦に巻き込まれていくが、そのなかで、菜美の記憶喪失状態に変化が生じていることが、菜美の目の表情の変化から垣間見える。終盤は、アクションシーンの連続で見応えがあり、綾瀬はるかの身の熟しの軽やかさに驚かされる。ラストは、洒落たテイストで終わる。
序盤、終盤、ラストは及第点だが、何と言っても中盤が長過ぎる。新エネルギー問題の紆余曲折はあるものの、記憶喪失の菜美と監視役の勇輝の夫婦愛物語の延々と続けられても、間が持たない。ラブストーリーではないので、このままでは終わらないはずだと観客に期待を持たせ続けながら、物語を引っ張り過ぎている。折角、綾瀬はるか、西島秀俊が共演しているので、二人の丁々発止の静的(会話)、動的(アクション)の激しいやり取りをもっと観たかった。
中盤、菜美が料理を作るシーンが象徴的である。最初、菜美は料理本で料理を作る。しかし、偶然出会った若者(岡田健司)から、素材を活かした料理作りを学ぶ。菜美が料理本を捨てて、若者のアドバイスに従って料理を作った時、勇輝に褒められる。
本作も同様である。綾瀬はるか、西島秀俊の役者としての持ち味を存分に活かした作品を観たかった。観終わって素直にそう思った。