「普通と個性、アダムス家の一族」アダムス・ファミリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
普通と個性、アダムス家の一族
これまでにTVドラマ化、TVアニメ化、最も有名な実写映画化。ミュージカル化もされている。
あのオバケ家族が、今度はCGアニメ映画になって。
元々が漫画なので、何の違和感も無く。
実写映画の世界観やドハマり怪演に病み付きになったが、やはりCGアニメ、ネットで基の漫画の画像と比べてみたら、その再現度はお見事。作り手側の原作漫画へのリスペクトと、改めて『アダムス・ファミリー』という作品がアメリカで如何に愛されているかを感じた。
(ホラー要素は無いけど、日本で言ったら『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』みたいなファミリー物…?)
実写映画版とは全く違うオリジナル・ストーリー。
まず、ゴメズとモーティシアの結婚式から。元々東ヨーロッパに住んでいたが、人間たちに追われ、アメリカへ。安住の地を求め、放浪の末(途中、車で轢いたラーチと出会う)、やっと見つけた丘の上の不気味で“理想的な”お化け屋敷。
ウェンズデーとパグズリーの姉弟を授かり、ずっと穏やかに暮らしていたのだが…、ある日突然トラブルが次々と!
アダムス家の男なら必ず通る剣の儀式“マズルカ”。パグズリーは爆弾など物騒なものの扱いならお手の物だが、剣の腕は一向に上達しない。親族を招いた本番で、成功するのか…?
突然、屋敷を覆い包んでいた霧が晴れ、下界の町が見え始めた。
と言う事は、町からもこのお化け屋敷が。
早速アダムス家は町探訪。全てが目新しいが、自分たちと違うものでも難なく受け入れる。
しかし、人間たちはこの奇妙で不気味な連中を怪訝。自分たちと違うものを一切受け入れない。
今この町では、TVの人気司会者マーゴがリアリティー番組で町丸ごとリフォームを進行中。
モットーは、皆同じ。皆普通。
だから、異端のアダムス家は邪魔な存在。
何とかして排除しようとするマーゴ。町の人々にも隠している秘密と本性があった…!
外の世界に触れた事で、ウェンズデーが人間社会に興味持ち始める。
オバケの女の子だって、思春期はやって来る。
マーゴの娘パーカーと初めての友達に。彼女の影響で、ウェンズデーは今風の女の子、パーカーがウェンズデー風になるのがおかしい。両者のお母さんはショック…。
マーゴはそんな娘から自由を奪う。
一方、モーティシアは娘を信じる。自由になりたいと家を出て行ったウェンズデーだけど、必ず家族の元に帰って来ると。
それぞれの母親の描かれ方も印象的。
実写映画版より一族大集合。さながら、“アダムス家の一族”。
CGアニメならではのコミカルでド派手なアクションも。ゴメズとパグズリーの“お遊び”、クライマックスの人間たちの襲撃をパグズリーが自分の“マズルカ”で防ぐシーンは音楽にも乗せてノリノリ。
そう、音楽と言えば、勿論あのテーマ曲も!
実写版に負けず劣らずの屋敷内、『ポルターガイスト』みたいな大木、『IT』みたいな赤い風船…遊び心も。
ラスト、マーゴに扇動され暴徒化した人間たちから家族たちを守るのが、まだ子供だけど立派な家族の一員のウェンズデーとパグズリーという描かれ方もいい。
本作では2つの対比があったと思う。
“普通”と“皆とは違う個性”。
古今東西。人はすぐ普通とは違う存在を差別し、偏見する。
個性がその人のいい所なのだ。
10人が10人まるっきり同じじゃあ面白くない。個性は大事。
でも、普通だって。
この奇妙で個性的なオバケ家族。
彼らも、普通の家族なのだ。
あの傑作?珍作?怪作?の『ソーセージ・パーティー』の監督コンビ。
確かにブラック・テイストの笑いが散りばめられ、監督には打ってつけかもしれないが…、
ちょっと毒気が足りなかった気もする。良く言ったら万人受け、悪く言ったら置きに行ってる。『ソーセージ・パーティー』のような作品を期待してる人にはガッカリかも…?
また、実写版に比べ全体的にインパクトに欠けた。やっぱ実写版のインパクトは今見ても充分だからなぁ…。
まあでも、CGアニメになっても奇妙でブラックな笑いと、普遍的なメッセージを込め、オバケ家族がハートフルなファミリー・ストーリーを魅せてくれる。