「失われたなにかを求めて針穴を通る」羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
失われたなにかを求めて針穴を通る
公開当時劇場で観て、またTVでの分割放映版を完走したので記念。
70年代後半生まれのアニメ、マンガファンから見ると、画面はまるで古臭くないのに、なぜか非常に懐かしい感じがします。
これが日本のファンに刺さるっていうのはすごく納得。
日本での公開当時、すごくおもしろい!という評判だったので、正直ストーリーがものすごい面白いか、というとちょっと異論はあります。
とくに序盤に難があって、登場人物のセットアップが飲み込みづらいのと、ムゲン様と旅するくだりで海のシーンが長すぎてちょっとつらかった。
海のシーンがもう少しコンパクトで、そのぶん最初のフーシーたちとの生活をもっと描いてくれたらわかりやすかったかも。
ただ、アニメーション映画としての画面のコントロールは抜群にすばらしい。
それは今の日本のアニメ映画と比べてもまるで遜色ないどころか、トップクラスだと思います。
NARUTOにおける松本憲夫パートが全編にわたってつづくような動きの快感と、背景を含めた適切な情報量、過剰なセリフを必要としないスマートな映像の連なり。。
そこに突然入ってくるギャグ顔のテンポ感、猫耳の少年がネグリジェっぽい服になったり、ぶっきらぼうで最強のムゲン様(宮野真守)がさりげなくシャオヘイを気遣うなど、腐女子が立ち上がって拍手したくなるような目配せが満載。
たぶんそういう細かいオタク的なディティールって、私が10代の頃に同人誌のアンソロジーとかで繰り返し目にしたものとあまり変わってない。ある意味普遍的なものなんだんだと思います。
そういうとこまで日本的。
これは、、もう最強でしょう。
制作した北京のスタジオや、参加したスタッフのバックボーンについて寡聞にして知りませんが、ここまでやられると完璧すぎてちょっとかなわないなーという気になりました。
くわえてたぶん中国政府には表現に対していろいろな規制があるらしく、そのせいなのか表面的にはちびっ子でも見られるくらい徹底して健全。
それでも開発による自然破壊、のようなテーマをちゃんと扱っている(宮崎駿のパスティーシュかもしれないにせよ)。
あらゆる面で針の穴のような狭いところを通す偉業だと思います。
続編も楽しみです。