「マイノリティよ声をお上げ」映像研には手を出すな! odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
マイノリティよ声をお上げ
乃木坂46ファン向けのハチャメチャ学園コメディ。
劇中でも「設定が命」と浅草みどり(齋藤飛鳥)が言っていますが本作も設定がユニーク。
舞台の芝浜高校は現実と虚構の入交り、413の部活動と72の研究会や学生組織があるというがまさにマイノリティの多様性、時代の鏡かと思わせて部活統廃合の動き、せめぎあうのは大生徒会。
面白いのは学長ら保守的な大人の出番は少なく従順な官僚のような生徒会が矢面に立つところ、まるで政治の仕組みの写し絵にも思えます。
普通は古い時代の対立や束縛の象徴として描かれる親世代ですが出てくるのは水崎ツバメ(山下美月)の両親だけ、教師も部活には無関心、無責任、あくまでも若者中心の学園ものでした。
映像研が目指すのは最強のヒーローアニメ制作、弱いマイノリティだからこその憧れなのでしょうか、少女の夢としてどうなのかとは思いますが若者の好物のロボットや怪獣談義で盛り上げたかったのでしょう。もはや、若者の心を繋ぐのはイデオロギーでは無くサブカルチャーというのも意味深ですね。
皮肉なのはマイノリティな映像研の中でも声の大きい自信にあふれた金森さやか(梅澤美波)が強い者として胸を張る、叱咤激励振りはパワハラもどき、まさに古い男社会の模写に思えてしまうでしょう。優柔不断で面倒な連中を動かすには必要悪としているのでしょうか・・。
文化祭の出品に向けて映像研を助けるのは廃部になった研究会のメンバーたちと弱いもの同志の団結と言う王道ですね。官僚組織のような大生徒会にもシンパが居たと言うのも心強い。
まさにシチュエーションは多様性の時代、マイノリティよ声をお上げということでしょう。
ただアイドル主演で演技は素人だから学芸会レベル、周りの役者までお笑い芸人顔負けのオーバーリアクションで調子を合わせています。滑舌が悪いのに早口でまくしたてるセリフは聞き取りにくくて閉口する、大時代的なセリフ、広島弁、チンピラ言葉など言い回しに拘っているのは下手なセリフ語りを誤魔化す奇策でしょうか。監督も自虐的になったのかTVの「はじめてのおつかい」の近石真介さんの名ナレーションを挿入して遊んでいます。
おじさん向けの映画では有りませんが勉強になりました。