ラーヤと龍の王国 : 特集
「アナ雪」の次のヒロインは“ひとりぼっちの救世主”
ディズニーが今を生きる私たちに贈る宝石のような物語
「アナと雪の女王」や「モアナと伝説の海」などを送り出したディズニー・アニメーションの最新作「ラーヤと龍の王国」が、3月5日に公開を迎えます。なんといっても、注目してほしいのはヒロインのラーヤ。
ある出来事のトラウマから、人を信じることができず、自分だけを頼りに生きている“ひとりぼっち”の女の子なんです。“ぼっち”のラーヤは、コロナ禍に見舞われる“私たち”ととてもよく似た存在です。
友だちと気軽に会話をしたり、ごはんを食べたりできず「寂しい!」と感じている……そんな“私たち”には、ラーヤはきっと身近に思えるはず。これは、今を生きる私たちのための、宝石のような物語です。
この特集では、「ラーヤと龍の王国」のどこが“すごい”のか、4つのポイントで見どころをご紹介します。
【ここがすごい①】ディズニーが“今を生きる私たち”に贈る物語
まずは物語をご紹介します。舞台は、龍と人が共存していた王国 “クマンドラ”。
平和なその国に、突然、邪悪な魔物ドルーンが現れます。龍たちは自らを犠牲に王国を守りますが、残された人々は信じあう心を失い、やがて国は分裂してしまいます……。
500年後、王国を再び魔物ドルーンが襲います。主人公のラーヤは、ドルーンの力を封じ込めることができる“龍の石”の守護者一族の娘。魔物に立ち向かい、バラバラになってしまった世界を再び一つにするための冒険に出ますが――幼い頃、とある裏切りにあった彼女にとって人を信じることは難しく、“ひとりぼっち”で戦おうとする彼女には、様々な困難が立ちはだかります。
まず、この「人々が信じあう心を失い、分裂してしまった国」「人を信じることができない孤独なラーヤが主人公」という設定に惹かれる人は多いのではないでしょうか。なぜなら、いま世界中で、多くの人たちが物理的にだけでなく、心も離れ離れになり、孤独を感じてしまっているから。ラーヤの抱える寂しさや、人を信じられない様子を見ていると、「私と同じかも」と、強いリアリティが感じられるでしょう。
しかし、物語は“つらさ”だけを描くのではありません。ディズニーの魔法があなたを包み込む――ラーヤの冒険の結末を見届けたとき、明るい未来を予感し、感動で胸がいっぱいになるはずです。
【ここがすごい②】全く新しいヒロイン! ひとりぼっちの救世主ラーヤに感情移入確実
前のコーナーでも触れましたが、ラーヤは“まったく人のことを信じられない”ヒロインです。その理由は、ラーヤが経験してきた過去にある“大きなトラウマ”。
邪悪な魔物ドルーンから人々を救ってくれた龍は、<龍の石>を人々に残しました。ラーヤは、その石の守護者なんです。彼女は父とともに、バラバラになってしまった人々の心を一つにしようと、他国の首長たちを自分の国“ハート”へと招きました。しかし、友だちになれると信じた“ファング”という国の首長の娘・ナマーリの裏切りにあい、愛する父が石にされてしまうのです。
この出来事によって、ラーヤは人を信じることに臆病になってしまいます。そして自分だけを頼りに、世界と父を救うため旅に出るのですが、その道すがらでも多くの人に裏切りを受け、さらに“人を信じない”気持ちは強くなってしまいます。
これまでも、観客が「つらい」と思うような設定のディズニーヒロインたちはいました。例えば、「アナと雪の女王」のエルサは、妹や周囲の人間だけでなく、自分自身も信じられずに引きこもってしまうヒロインでした。しかし、自分が信じた人に裏切られたせいで、最も大切な人を石にされてしまったラーヤほど、頑なに“人を信用しない孤独なヒロイン”は、ほかに例を見ません。当然のことながら、旅を続けるなかで、ラーヤを応援してくれる人もいないのです。
そんな彼女が、バラバラになった世界をひとつにまとめることができる力を持つ伝説の“最後の龍”シスーと出会うことで、その心が少しずつ解きほぐされていきます。シスーは他人を信じすぎてしまう純真な龍で、ラーヤとは正反対。何度騙されても、身を持って“自分から人を信じてみる”のです。
そうして、ラーヤが多くの悩みを抱きながら“人を信じる”ための一歩を踏み出すクライマックスシーンは、きっと涙が溢れ出てしまう……。大きな、大きな感動が心に宿る最高のシーンです。
【ここがすごい③】新たな“超人気キャラ”の予感! シスーもトゥクトゥクも愛さずにはいられない
“ひとりぼっち”のラーヤの唯一の相棒が、トゥクトゥクです。登場時は、ラーヤの手のひらに収まる小ささで思わず「可愛い!」と声をあげてしまうほどキュート……だったのですが、数年後には巨大な生き物に成長し、ラーヤを背に乗せ世界を突っ走る姿は、とてもかっこ良くて爽快感抜群です。勇ましくて頼れる相棒だけれど、逆さまになると自分では起き上がれないお茶目な姿も、胸キュンです。
さらに、シスーにも注目。“伝説の最後の龍”と呼ばれ、絶世の美しさと強大な魔力を持つ神聖な水の存在と言い伝えられていましたが、実際は非常にユーモアがあり、天真爛漫で愛嬌満載! 何気ない顔をして人間に変装(!?)してオトボケな表情をする姿もSo Cute!
人を信じることができないラーヤとは正反対のシスーは、楽観的で、人を信じすぎてしまう“子どものように純真な心”を持っていますが、そんなシスーだからこそ、ラーヤの氷のように固まってしまった心を溶かす力を持っているのです。後半に訪れるラーヤとシスーの“人を信じること”への言葉のやり取りは胸アツ過ぎです。
これまでも、ディズニー・アニメーションには、スティッチやジーニー、オラフら、人気キャラクターは多数存在しました。シスーはその仲間入りを果たすかも? 新たな大人気キャラクターの誕生、そんな予感がします。
【ここがすごい④】観終わった時、あざやかで優しい世界への期待を膨らませてくれる!
本作は「信じあうこと」と「仲間とともに生きること」がテーマ。ラーヤの旅は、このテーマに脇目もふらず突き進んでいく……わけではありません。「信じたいけれど信じられないの!」「誰も分かってくれないじゃない!」というジレンマが常に押し寄せてくるんです。
「信じたいけれど信じられない」という思いは、現代に生きる人々の多くが抱える問題。あなたも、あの人も、そして私だって。そんなメッセージが、さまざまなストーリーラインと壮大な映像美、そして音楽に乗せて描かれます。不自然で強引なかたちではなく、ラーヤの悩みに思いをめぐらせれば、自然とテーマが心に流れ込んでくる――。この物語のすごいところです。
閉塞感いっぱいの現在。しかし、大きな困難も、一人一人が時には“自ら信じてみる”一歩を踏み出し“共に生きること”を心に思えば、きっとあざやかな色と優しさがあふれる世のなかになるのではないでしょうか。
――劇場を後にしたとき、そんなことを思わせてくれる、いま見てほしい映画だと強く実感させられました。