「信じ続ければ奇跡は起きる」ラーヤと龍の王国 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
信じ続ければ奇跡は起きる
最近配信ばかりで、しかもディズニープラスに入会しないと見れなくなったディズニー作品。『ムーラン』も『ソウルフル・ワールド』も見たかった…。
こちら今春に久々に劇場公開!…と思ったら、
我が地元の映画館では公開せず…。ディズニーアニメなのに…。嗚呼…。
しかし!U-NEXTで発見! 早速見たね。
にしても、ディズニープラス以外で見れる/見れないの違いって…?
『ムーラン』や『ソウルフル・ワールド』は配信のみ。
以前見た『2分の1の魔法』や本作は劇場公開。
という事は、今配信されている『あの夏のルカ』は見れそうにないけど、『クルエラ』はいずれU-NEXTでも配信されて見れるかも…?(『クルエラ』もこちらでは公開されておりません(>_<))
いつもながら前置きが長くなってしまいましたが、感想を。
遥か昔、“クマンドラ”と呼ばれた国。
魔法の力を持った龍に護られ、人と龍が調和を保ち、人と人が信頼し合いながら平和に暮らしていた。
が、飲み込んだものを石にしてしまう不気味な煙の怪物“ドルーン”が世界を襲い、崇高な龍シスーは自らを犠牲にして国や人々を救う。
しかし皮肉な事に一つだった国は5つに分断され、シスーが遺した“龍の石”を手に入れようといがみ合うように…。
それから500年。再びドルーンが復活。
“龍の石”を守るハート国の長ベンジャは、皆が信頼し協力し合う為に他の4国の長たちを招くが…、石を奪い合おうとし、その最中石が砕けてしまう。
ドルーンの力は増大。ベンジャは煙に飲まれ、それを目の前で見た娘ラーヤは…。
物語の立ち上がり方、入り方、ヒロインの目的も完璧。
神秘的な大昔のアジアの世界観。恐ろしい魔物と聖なる龍というのも個人的にツボ。
ディズニーアニメとしては少々大人向けのファンタジー・アドベンチャー。
でも勿論沢山の面白味、要素、メッセージ性が込められ、万人受け。
つまり、とっても面白かった! またまたお気に入りのディズニー作品が一本。
さて、何処から語ろうか迷うが、でもやっぱり魅了された本作の主人公から。
ラーヤ。
6年が経ち、成長。
ドルーンから荒廃した世界を救う為、父を元に戻す為、砕けた龍の石を探す孤独な旅を続けていた…。
武器は剣と、大胆不敵な勇気、不屈の精神。
とにかく、強い!凛々しい!カッコいい! おまけに、美人!
私はもう完全にヤられ、これまたお気に入りのディズニー・ヒロインに♪
サブキャラもユニーク。
旅のバディのトゥクトゥク。大きな大きなダンゴムシみたいな虫?動物?で、ラーヤを乗せて身体を丸めて高速で走る。仕草も表情も愛らしい。
そして旅の中で遂に探し出したのは、サブキャラ…というより、もう“一頭”の主人公。
ラーヤは最も崇高な龍シスーを蘇らせる事に成功。これで世界は…でも、あれ?
本当に崇高な龍…? 何と言うか、何と言うか…。
実は偉大な龍はシスーの兄弟姉妹で、シスーは最も平凡な龍。兄弟姉妹の力が集まった石を託され、その力で世界を救っただけ。自分の力じゃない。何で自分がそんな“大役”を…?
でもシスーは石を手にすると、兄弟姉妹の力を発揮出来る。
つまり、それらを合わせれば世界を救える。
ここからラーヤの旅に、シスーが加わり…。
“女ケンシロウ”みたいなラーヤの孤独な旅も悪くはないが、やはりディズニーアニメは楽しくないと。
ラーヤとシスーのやり取り、掛け合いが楽しい。
まるで、生真面目とフランクな女芸人コンビのよう。
あの悲劇の時ある人物に裏切られ、以来人を信じる事が出来なくなってしまったラーヤ。
明るい性格で、人を信じる事を疑わないシスー。
バディ・ムービーであり、二人の“女性”の信頼と友情のドラマでもある。
壮大なスケール、世界観。
荒廃したとは言え、国それぞれ特色あり。
テイル。砂漠の国。
ある因縁のライバルに追われていた時、港で出会ったのが、一隻のエビ獲りボートの船長兼シェフの少年、ブーン。陽気な性格で、彼も旅の仲間に加わる。
タロン。商業の国。
商売と共に盗みなども氾濫。人を信じるシスーは危うくピンチに! ラーヤも女の子赤ちゃん詐欺師とバディの3匹の猿に騙されるも、仲間に加わる。
スパイン。氷の国。
待ち受けていたのは、大男トング。しかし実は、国の唯一の生き残り…。
そこへ急襲する因縁のライバル。
彼を信頼し、仲間の逃げ道を託す…。
仲間が一人一人加わっていく。アドベンチャーの王道。
皆、ドルーンによって愛する人を失った。目的は同じ。
各国で石も順調に手に入れた。残るは後一つ。
が、その一つが最も“難国”。
ファング。
他国と関係を断ち、それ故国の中だけは平和。美しい自然にも囲まれている。
しかしそれは、他国に無関心で、自国の事だけ。
我が国の為なら厳しい決断をも下す長。
その娘ナマーリこそ、ラーヤの因縁のライバルであり、昔ラーヤを裏切ってラーヤが人を信じられなくなったきっかけを作った人物。
各国で執拗にラーヤを追い続けるナマーリ。彼女もまた龍の石を手に入れようとしている。
何度も何度も繰り広げられる、ラーヤvsナマーリ!
テイルの荒野での逃走&追跡。
スパインでの肉弾戦。
実力はほぼ互角であったり、時々一方が勝ったり。
文字通りの“ライバル”。
アクションもスピーディーで、迫力充分。
ヒロイン・アクション・アニメでもある。
ファングで…
ナマーリがある悲劇が起こし、ラーヤは怒りと憎しみをぶつける。
アクションも作風もエンタメだったが、このシーンは悲しいものを感じた。
これも全て、人の憎悪が生み出したドルーンのせいなのか…?
人は憎しみを持つ。怒りを持つ。
人を信じられなくなってしまう。
人と人の関わりを断とうとしてしまう。
作品はファンタジー世界だが、現実世界は今も尚こんなご時世。まだ国と国で自由に行き来出来ず、人と人の距離は離れたまま。
ディズニーの巧い所は、時代背景の汲み取りや置き換え。女性を主人公にし、多様性。争い。ドルーンは言うなればコロナなのかもしれない。
しかし、人は希望を捨てない。
敵対していたナマーリ。彼女もまた本当は、龍の力を信じていた。
信じる。
これこそ、本作のテーマ。
何もそれは龍の力を信じるという事ではない。
人が人の心や絆を信じる。
それを信じた時、奇跡は起きる。奇跡は現実に。
人も、龍も、この世界も。
私たちの中に、クマンドラはある。