劇場公開日 2021年3月5日

「荒廃した東南アジアを旅する女木枯し紋次郎」ラーヤと龍の王国 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5荒廃した東南アジアを旅する女木枯し紋次郎

2021年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公のビジュアルは、もう一度浮かんでしまったら木枯し紋次郎としか思えない。実際、荒涼とした土地をさすらっていて、キャラクターもどことなく被る。まあそれはビジュアルだけの話だが、アジア全般を一本の映画に詰め込もうと、さまざまな要素や文化的モチーフがてんこ盛りで、ストーリーの粗はどこかに消し飛んでしまった。

例えば自分は『ブラックパンサー』を観て、アフリカの人たちはこの描写によく怒らないものだなあと思ってしまうのだが、意外や日本やアジアがモチーフだとそこまで気にならない。キツネ目のキャラが出てきたりすればまだこんなことやってのかとは思うが、近しいからこそ余裕があるのか、どうぞ好き勝手に遊んでくださいという気持ちで、ビジュアル的に面白ければ楽しめてしまう。

かろうじてディズニープリンセスという括りの中には入るのだろうが、ついに完全に恋愛要素を排除してみせた潔さは、新しい時代のディズニーアニメという気がするし、一方でこれからディズニープリンセスというコンセプトはどうなっていくのだろうと興味も湧く。到達点というより過渡期の面白さだなと思いながら、興味深く観ました。

ただ、字幕版の上映館の少なさには閉口した。オークワフィナを愛でる映画でもあると思うので、やっぱりオークワフィナの声で聴きたいし、彼女の演技に聞き惚れて欲しいので、半々とは言わないが、せめて一日一回くらいはどの劇場も字幕版もやってくれないか。

村山章