「意味や結果だけに囚われず、生きていること魂で感じ楽しんで」ソウルフル・ワールド KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
意味や結果だけに囚われず、生きていること魂で感じ楽しんで
小さい頃からミュージシャンの父親の背中を、そして自分自身もジャズミュージシャンになる事を夢を見て、そしてその夢を叶える事を強く思うも未だジャズミュージシャンになれずに今を生きる49歳の主人公ジョー。
そんな中有名ジャズグループの一員として演奏できる事が決まった直後事故にあい死にかける。
魂があの世とこの世の狭間の世界に行ってしまい、そこでこれから人生を歩む事を始めようとしているみならい魂達と出会う。
その中でも生きる事を拒み長年その狭間の世界に滞在する22番と出会い、ひょんな事からこの世に戻った際22番がジョーの体を、ジョーの魂は猫の体と化しこの世の数時間を共に生きる事となる。
猫になったジョーはこの後控えるジャズバンドでの成功だけが頭いっぱいな状態であり、一方ジョーの体でこの世を生きる22番は生きる前に考えてた事と全く違う世界に驚き、そして一つ一つの行動を楽しみながら生きる。
共に入れ替わることで頭や心であれこれ考えながら生きるのではなく、自然に生きることの美しさを感じる事ができるようになる。
この作品を通して強く感じるのは、生きる事になにか強い意味を探したり結果を残す事に囚われず、一瞬一瞬を魂で感じ大事に生きる事への大切さだ。
夢を持つ事はもちろん大切であるが同時に何も夢や具体的な目標がない事もまた悪い事ではないのだ。
もちろん何もなくただただ時を過ごす事が良いわけではないが、何もない事を悲観せず、一瞬一瞬を必死に生きるから新しい発見を見つけ、そしてそれが最終的に人生の意味や結果に繋がるのかもしれない。
ジョーは幼い頃の夢の実現を必死に目指してきた。もちろんその姿はかっこいいが幸せそうには見えない。作中でも夢を実現した後幸せを実感できないジョーがいた。
一方で獣医を夢見てきたが現実は床屋で働くジョーの知人がいた。彼は小さい頃の夢は叶わなかったが今は今で幸せであり、この仕事だからこそ感じられる幸せも沢山あると語っていた。
今を生きるジョーも、これからを生きようとする22番も魂で生きることを感じる前に頭や心の中で生きる事に縛りを与えて自分の可能性を制限してしまっている。
人生とはもっと自由に生きていいのではないか。もちろん自分の人生を豊かにそして他人に認めてもらうには結果は欲しいものである。でもその結果を残したから幸せが必ずついて来るとも限らない。
本当の幸せとは自由に生き、そして生きてる事を魂で感じ、日々日常で大なり小なり多くの幸せを感じる事が豊かな人生に、そして人が羨む人生に結果として繋がるのではないか。それらの幸せは意外と身近に存在しているのかもしれない。
非常に現代へのメッセージ性が強く、また自分の心にドンピシャにはまる作品でとても心震わさせられた。
改めて今を生きている事に感謝して、そして日々日常幸せを見つけ喜びを感じることができるそんな人生を明日から送りたいと思う。
劇場公開を楽しみにしていた作品であり、この度映画館で見る事はできず残念だったが、今年見てきた作品の中で、そして歴代のピクサー作品の中でもトップクラスに好きな作品の一つとなった。