Awayのレビュー・感想・評価
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影とボクの寓話
輪郭線のない絵に、少し黄ばんだ色合い。
セリフなく進む物語と、そこに漂う独特の間合い。
それでいて大胆なカメラワークが静かなハズの物語を、とても迫力満点と演出している。
登場するキャラクターや道具に文化、生活の違いから来る独特のチョイスを感じる。
だからか、ファンタジー感もマシマシだった。
物語には「恐怖からの逃亡」という命題を感じて止まない。
ゆえに静けさも込みで、少し恐ろしくもあり。
しかしながらその「恐怖」が何なのかは具体的に明かされておらず、
映像の美しさと冒険物語にラッピングされた「恐怖」は
まさに寓話的だった。
映像に見ほれつつ、さらっと鑑賞することもできるが、
登場キャラクターの数も多くないだけに意味深長で、
おそらく考えれば考えるほど奥の深い作品なのではないかと感じている。
一番怖かったシーンは、飛行機の中をのぞくシーンだったかも。
トラウマとの対峙。
どうしても「戦争」という言葉が頭から離れなかった。
【"死の概念"から、離れて、新たな世界を目指し、疾走して、生きる。】
■感想
- あの、黒い実態のあるかないか不明な巨人は明らかに"死"を具現化したモノであろう・・。-
・冒頭、少年は荒野のたった一本の枯れ木にパラシュートが引っ掛かった状態で、意識が戻る。
そして、章立てで、少年の"死の概念から脱出する姿"が、今までに観た事のないタッチのアニメーションで、一切セリフなしで、描かれる。
・途中の道には、少年の"心の通過儀礼"を具現化したような半円形の門や、ドミノの形をした不可思議な石柱が、現れる。
・そして、"生の象徴"の様な黄色い小鳥。生を容易に想起させる螺旋階段の底にある、間歇泉。
<ラトビア発の独特な世界観を持ったアニメーションに一気に引き込まれた90分であった。>
<2021年3月6日 刈谷日劇にて鑑賞>
映画史に残るレベルの糞エンディング
ちょっと物足りない
輪郭線を用いない、美しい色調の絵で構成された画面は、ちょっと洒落たイラストレーションのよう。
その画面の中で展開する不可思議で暗示的なシークエンスは、興味深く、視覚や聴覚を楽しませてくれました。
けれど、映画=エンターテインメントの背骨である“物語の面白さ”という点については、物足りなく感じた。
「うん、面白い!」というふうにはならなかった。
期待して観に行ったのだけど、残念です。
今回は少々疲れている状態で鑑賞したので、眠気をともなって集中を欠いたところもありました。万全のコンディションで観たら、また感想も違ったものになったかもしれません。
まあそれにしても、これだけクオリティーの高い作品をたった独りで創り上げるとは大した才能だなと感心しました。
それから、2年前に観たアニメーション映画『失くした体』にテイストが似ているなとも思った。
ついでながら言うと、『失くした体』の方がわかりやすく、物語に入っていきやすかった。こちらの作品には、とても感動しました。
☆☆☆場内が明るくなるまで席を立たないようにしましょう運動☆☆☆
わたくし、pekeは、「場内が明るくなるまで席を立たないようにしましょう運動」を推進しています。
日本の劇場では、エンドロールの途中で早々に退場してしまう人がまだまだけっこういらっしゃいます。
せっかく余韻にひたっているのに、画面がさえぎられたり、場外の明かりが入ってきたりしては台無しです。
「映画は、エンドロールが終わり、劇場が明るくなった時点で鑑賞終了」と僕は認識しています。
トイレが我慢できないなどの理由があるのかもしれませんが、その場合もできるだけまわりの人の鑑賞のさまたげにならないようにご配慮願いたいです。
それぞれが、ほかの人の迷惑にならないようにマナーを守り、そして映画作品に敬意を払って鑑賞したいものですね😊
ラトビアのアニメとは
モーターサイクル・ダイアリーズ
ゲル状の巨人は得体が知れないし、島の生態系もナゾだし、林立している鍋釣岩みたいなものも何の説明もない。主人公は一言も発しないし(独白すらない)。確かにアウェーな状況には違いないが、ホームがどこかも定かでない。
輪郭線がない作画は絵本のようで、とりわけ鼻の表現が独特だ。
手作りと言われれば納得してしまうが、全編を通じて映像が喚起する強烈な“sense of wonder”は感じた。井戸を囲む101匹黒猫ちゃんとか。
バイクで移動するのはいいけど、途中にガソリンスタンドはあるんだろうかというのが、ずっと気になっていた。
一切言葉で語らない少年の旅に新たな才能の萌芽を見ました
少年が目覚めるとそこは木の上。現れた黒い巨人に飲み込まれそうになったところを間一髪で逃れた少年が辿り着いたのは緑豊かなオアシス。そこで見つけたのは地図と水筒とバイク。地図によると少年がいるのは小さな島。北端にある港を目指して少年はバイクに乗り旅立つがその背後には黒い巨人が迫っていた。
監督のギンツ・ジルバロディスが製作、編集、音楽他ほとんど全ての作業を一人でこなしたアニメーションだという情報だけ入れて観に来てみましたが、そのクオリティの高さに冒頭から打ちのめされました。全編一切セリフなし、少年の表情にもほとんど感情が現れないのにとてつもなくエモーショナル。少年が旅をする現実とも幻想ともつかないような世界も途方もなく美しい。黒い巨人の動きには明らかにジブリの諸作品からも多大な影響が垣間見れますが、実写映画からの影響も濃厚で、特に地下の泉へ下っていく回廊が醸す荘厳な雰囲気にはギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』へのオマージュを感じました。世界一短いと思われるエンドロールを眺めながら世界のあちこちで素晴らしい才能がどんどん芽生えている喜びで胸が一杯になりました。
一点だけ残念なのがエンドロールの後に流れる日本版エンディングと称する全くもって蛇足な映像。せっかく一切の言葉を排して作られた作品の後に別に書き下ろしたわけでもない日本語歌詞の既存曲をつけたダイジェスト映像をつけるという途方もないセンスのなさに絶句しました。日本語版スタッフのクレジットを入れたかったのなら文字だけ入れればいいだけのこと。こういうくだらないことは二度とやらないで欲しい、目障りです。
擦れっ枯らしの中年の心にも響く青春映画
見知らぬ島にパラシュートで不時着した少年が、わけも分からぬまま謎の黒い巨人に追いかけられる。隠れる場所を見つけたものの、巨人はずっと自分を見張っている。不安と恐怖に押し込められて、このまま年老いて死んでいくのか。自由を求め、少年は小さな仲間とともにバイクで逃げる決意をする。果たして少年は、謎の巨人を振り切れるのかー。
世界は不条理である。私たちは突然そこにポンと放り出される。恐怖や絶望や倦怠が常に付き纏う。そしてやがて、もしくは突然、死ぬ。その後のことは誰にも分からない。なんて理不尽。「花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ」。劇中ある動物が突然死ぬシーンではそんな言葉も思い出しました。
「もともと無理やり連れ出された世界なんだ、
生きてなやみのほか得るところ何があったか?
今は、何のために来り住みそして去るのやら
わかりもしないで、しぶしぶ世を去るのだ!」
(『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム 小川亮作訳 岩波文庫)
しかし。それが全てではないはずだ。勇気を持って世界を旅してみれば、そして仲間がいれば、残酷な世界がとびっきり美しい姿を見せることもある。人生は生きるにたるものになり得る。自分の限界を知らないがゆえの、圧倒的に巨大な力への抵抗。そしてそれが生み落とす奇跡。それこそが「青春」と呼ばれるものの、美しさの一つだと思います。(ハイヤームは老境で、酒と酒姫にのみそれを見出だしましたが、それはまた別の話。)
『Away』は、セリフ無しの80分ほどのアニメーションで、そんな普遍的な、そして青春ド真ん中のテーマを描いています。閉じこもってちゃダメだよ、外へ出よう。遠くへ。そう穏やかに、且つ力強く語りかけます。
今作での「ここから抜け出すための道具」はバイクです。少年とバイク。この映画の魅力は何と言ってもこれでしょう。巨人から逃れるために少年がバイクで駆け抜ける、というのがとても良い。巨人とバイク。どちらにも死の影がチラつき、そこに緊張感が生まれます。監督は『モーターサイクル・ダイアリーズ』や『激突!』などからの影響を挙げています。僕はブルース・スプリングスティーンの“born to run”を思い出しました(尾崎豊も)。
We gonna get out while we are young.
若い間にここから抜けだすんだ。スーサイド・マシーンにまたがって ー そんな焦燥感を、そして追い詰められる恐怖感を、しかし淡々と、ゆったりと描いているのもまた、この映画の面白いところです。わかりやすい感情的な演出は基本的にありません。昨今の日本の多くの作品ではこうはいかない。なぜか皆、叫び声や金切り声を上げるのです。直接的な分かりやすい「エモーショナルな」表現だけが、人の感情に訴えかける手段だと言わんばかりに。閉口します。(もちろん、そういった表現が必然性を持つものもあるし、好きなものも沢山あるのですが。)この少年のように、少しは口を閉じよ、と言いたくもなります。この映画の唯一とも言える笑顔のシーンは、やはり印象に残ります。
確かに、全編セリフがなく(アートアニメーションでは至って普通ですが)、少年の見開いた目の表情が何度も繰り返し出てくるなど、単調で眠くなる側面もあります。また、アニメーション映画というよりもむしろ、例えばゼルダの伝説のようなオープンワールドゲームを観ているようでもあり、キャラクター(主に動物)の造形や動き、のっぺりとしたテクスチャーなど、映画館のスクリーンで観続けるのはちょっとシンドイな…と感じる瞬間があったのも事実です。しかしながら、個人製作ということで、監督としては当然それも折り込み済みだと思います。恐らくこの人は、もっともっと先を見ているはずです。
ゆっくりと着実に追いかけてくる巨人は、進撃のそれや新感染半島などの高速ゾンビとは違ったクラシカルな趣きがあります(進撃も高速ゾンビも僕は大好きです)。もちろん、宮崎アニメからの影響も大きいでしょう。焦点の当たる人物の背後の遠景が常に意識され、いつ巨人があらわれるのか分からない緊張感を醸し出す演出も効果的。風景や音楽、効果音も良かったと思います。
しかし、やはりラストのクライマックスシーンで一気にテンションが爆上がりします。下り坂を疾走するバイク。一難去ってまた一難、いや、二難。前虎後狼。世界は不条理すぎる。でも…負けるな!行け!飛べ!・・・つい拳を握りしめ、心の中で叫んでしまいます。向こう見ずな飛躍。これこそ、青春映画の醍醐味だと思います。
監督は22歳でこの作品に着手し、3年がかりで音楽も含めてほぼ一人で作り上げたとのこと。大変な情熱、そして才能だと思います。様々な先行作品からの影響の消化の仕方にも、非凡なセンスを感じます。既に次作の製作にも入っていて、今度はチームでの作成のようです。間違いなくアニメーションとしてのクオリティは上がるでしょう。楽しみに待ちたいと思います。
新鮮!
2020年はアニメーション作品の当たり年
ようやく鑑賞できました。観たくて観たくて観たくて。
全て一人で作ったCGアニメ長編映画・・・ってだけで驚きなんですが、
この完成度、何?、演出の妙は何?、この綺麗な絵の構図は何?
と、驚くばかりです。
セリフ全くなし。唐突なファーストシーン。そして、いきなりの巨人登場。
何何何ーーーーーー?
ストーリーも「何?」だらけで始まりますが、これが、まぁよくできておるのです。
確かに、稚拙かなぁ?ってところはありますよ、あくまで技術的な部分では。
(浮遊感、重みを感じない歩行シーンとか)
けど、そんなことはどーーーーでもよくなります。
ストーリーは寓話的な物です。
人間の人生を例えているんじゃないかなぁ?と勝手に思ってます。
それも若者へのメッセージ含め。
なかなか抽象的なシーンやストーリーで構成されていますが、柔らかいタッチの
絵や色合いが優しく語りかけてくれいるようで、スーッと入ってきました。
日本公開版のエンディングが最後に流れますから、そこで流れる曲の歌詞を聴くと
あぁ、そーいうことかぁって思いますよ。
また強く特筆したいのはカメラワークです。
視点の変わっていき方、場面の構成が見事です。
「魅せる場面作り」にとても長けた作者なんだろうなぁと思いました。
カメラワーク、場面の切り取り方でなんとも豊かな作品になっています。
またセリフがなく、鳴き声、呼吸音、排気音音も極力シンプルゆえに絵が際立っているのかもしれません。
映画ポスターになっているシーンは思い出に残るシーンです。本当に綺麗です。
時々観たくなる作品だと思います。
つい見てしまう
セリフの一切ない アニメーションで綴られる世界 全編に渡る美し...
セリフの一切ない
アニメーションで綴られる世界
全編に渡る美しい色彩の情景
表情の愛くるしい動物たち
そして死を連想させる黒い影
ベタ塗りというんですかね、そういうタッチで描かれる主人公の表情はなんだか懐かしい感じもあり、動き自体は少し硬さも感じるんですが、自分はこのアニメーションが好きでした
グラデーションで描かれる数々の自然の景色が美しくてちょっと大げさかもしれませんが絵画のような印象でした。
特段の説明も無くナレーションもない中で描かれる世界観は、観ている側に様々な印象を与えてくれる作品です。個人的には少し長いかなぁと感じたのも事実なんですが、なんだか安らぎを覚える81分でした。
日本語版エンディングは歌無しのほうがこの素晴らしい世界観に浸れたかなぁ
ギンツジルバロディスさん、16歳でショートアニメを作り上げたそうで、YouTubeで公式アカウントがあって過去のショートアニメを何本か見ることができます。
ご興味あれば「GintsZilbalodis」で検索してみてくださいね
地道な3年半に及ぶ一人旅
予告編を観てキレイだなーと思った以上の感動は得られず
パラシュートで不時着した島で、不思議な巨人から逃げるように、バイクで人里をめざす少年を描いたロードムービー。
まったくセリフがないので違和感はたっぷり。それでいて表情も豊かではないから彼の心情はまったくと言っていいほどわからなかった。背景はたしかにすばらしい。特にポスターにもなっている水面を走るバイクは卑怯なくらいにキレイだった。アングルも結構工夫されてて、新鮮な感覚を味わえた。
でも、話がとにかくわかりづらい。彼の心情だけでなく、巨人についても、死の象徴?もしくは彼の罪悪感が生み出したもの?という中途半端な結論になってしまう。彼が飛行機事故にあったとき、同乗者はいたのか、彼の家族はどこにいるといった背景もまったく説明されないので深みを感じられるわけがない。最後に島に住んでいる人が現れてもあまり感動できなかった。
ついでに言うと、人物の動きがちょっとカクカクしてて若干不自然。いや、もちろん日本のアニメと比べてはいけないのだが、今の時代のアニメとしてはそのへんもう少し努力がほしかった。
大人への道
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