「大正コソコソ噂噺。ずっと見ないままでいた筆者は…」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
大正コソコソ噂噺。ずっと見ないままでいた筆者は…
大人気なのは知っていた。
社会現象級大ブームなのも知っていた。
国内興行を塗り替えた事には驚愕した。
でも、何となく長らくスルーしていた。
が…、この程遂に初めて、『鬼滅の刃』を鑑賞!
いつもなら劇場版だけ見てアニメシリーズは未見のままが多いが、このとんでもねー!人気の作品。せっかくだし。
それに、いつかは見ようと思っていたので。
まずはアニメシリーズ(と言ってもまだ『炭治郎立志編』だけだけど)とこの劇場版を見た。
ちょっとだけアニメシリーズの感想。
話は今更説明しなくても充分過ぎるほど知られているが、一応。
鬼に家族を殺された少年・炭治郎。唯一生き残るも鬼になった妹・禰豆子を元の人間に戻す術を探すべく、鬼と闘う“鬼殺隊”に入り、果てしない旅を続ける…。
ジャンプ漫画なだけあって、王道の展開と見せ場の連続。
鱗滝の下で血の滲むような修行。鬼殺隊に入ってからも試練に次ぐ試練。
道中出会った仲間。善逸と伊之助。彼らとのやり取りが物語にユーモアとテンポを加えた。
様々な能力を持った鬼たち。闘いはいつも死闘。ボロボロに疲労傷付き、身体の限界を超えて。
勝利する時は必ず、己の不屈の精神、仲間との絆、禰豆子や家族への思い…。
時には鬼にだって悲しいドラマがある。
設定もキャラ描写もドラマもアクションも、一つ一つが緻密に練られ、引き込まれてしまう。
さて、この劇場版は…
初めて対した“十二鬼月”の累との死闘で負った傷を癒し、炭治郎たちは新たな任務へ。
乗客たちが不審な失踪を遂げる“無限列車”の調査。
そこで彼らが出会ったのは…
鬼殺隊の“柱”の一人。“炎柱”の煉獄杏寿郎。
柱ってアニメシリーズに初登場した時、えげつない奴らだなぁ…と。
一癖も二癖も三癖もあり過ぎ、規律違反の炭治郎と鬼の禰豆子を殺せ!…と。殺意や敵意剥き出し。お館様の鶴の一声で事なきを得たが…。
鬼以上に鬼。それほど修羅場をくぐり抜けてきたスーパーエリートたちなんだろうけど。
この煉獄は“炎”をモチーフに、赤い髪、カッと見開いた目。デカイ声で、竹を割ったような性格。
弁当を一口毎に、旨い!旨い!旨い! ハッハッハッハッハ!
えっと…、柱ってやっぱりヘンな人しかいないの…?
そこに鬼出現。煉獄は炎の如く瞬殺。
さ、さすが柱~!
よッ、煉獄の兄貴ぃ!
ハッハッハッハッハ!
彼らはある瞬間から眠らされていた。鬼との闘いも夢。
煉獄さえもかかる術。
その夢を見せていたのは…
十二鬼月の魘夢。
アニメシリーズで鬼舞辻無惨による下弦鬼パワハラ粛清の中、唯一気に入られ、能力アップ。
夢を自在に操り、この無限列車である事を企む。
全て魘夢の手中。計画通り。
魘夢が見せる夢は、各々が見たい“夢”。
炭治郎が見た夢は、死んだ家族との本当だったらこうであった筈だろう幸せな日々。
いつまでもいつまでも、これが当たり前のように、深い深い眠りに落ちていく…。
が、現実世界で必死に起こそうとする禰豆子と夢の中での違和感に気付き、覚醒。
その覚醒の方法は幾ら夢の中とは言え、相当な覚悟。それをやるのが、炭治郎。
夢から覚め、走る列車の上で魘夢と決戦。
魘夢の頸を斬り、勝った。
…が、魘夢は死なない。
それもその筈。魘夢の“本体”は身体には無かった。
魘夢は、この無限列車と同化していた…!
仲間たちも覚醒。二手に分かれ、一方は乗客を守り、一方は魘夢の頸を斬る。
壮絶な攻防が突っ走る…!
夢の中と現実の行き来。
見る側もどっちがどっち?…と迷わせるほど。まるで『エルム街の悪夢』。
魘夢に使わされた人間が相手の夢の中に入り、決行しようとする。まるで『インセプション』。
魘夢は炭治郎に“悪夢”を見せる。死んだ家族から辛辣な言葉…。しかし炭治郎はその悪夢も断ち切る。何故なら、俺の家族がそんな事を言う筈がない。俺の家族を侮辱するな!
『オリエント急行殺人事件』『新感染 ファイナル・エクスプレス』『ブレット・トレイン』…走る密室サスペンスとスリル満点のスピーディー・アクションは映画映え。
本作のハイクオリティーの作画をさらに高める。
列車と同化した魘夢の造型は不気味だが独創的。
ビジュアルもアクションの迫力もテンポも、日本アニメの超レベルを改めて目に焼き付ける。
魘夢の悪夢列車を止めた。
そこに現れた、新たな鬼。
同じ十二鬼月でも、遥か格上の上弦の鬼。
猗窩座。
その強さは手こずった下弦の魘夢とは次元違い。
煉獄と一騎討ちするも、煉獄さえ劣勢。致命的重傷を負う…。
煉獄の強さに惚れ込み、鬼になれと誘う。
鬼になれば、その強さは永遠のもの。
何故弱い人間のままでいる? 弱い人間でいたら、その強さは老い、死にゆくだけ…。
それが、人間の尊さ。老い、やがては死ぬも、限られた生命を強く、熱く生きる。
煉獄の炎のような信念。
人間は何故生きるのか…?
秀でた才を持つ者がいる。その力は何の為か…?
煉獄が幼き頃、亡き母から託された責務。
答えと意味が、全てそこにある…。
死闘の果てに、煉獄は…。
何となくそうなるだろうとは予想していたとは言え…。あの伊之助でさえ身体を震わし、涙を流す。
逃げ去る猗窩座への、炭治郎の叫びは見る人全員の心の代弁。
燃え尽きた煉獄の炎。
我々は彼のように生きれるだろうか…?
四の五の言って悲しんでる暇はない。
心に刻め。
我が身に焼き付けろ。
その熱く誇り高き姿と生きざまを。
煉獄語録と武勇伝に心底しびれた。
エンディングの主題歌『炎』も彼を謳い、胸に響く。
これが、“400億の炎”か…!
自分的には“無限列車”と言うより、“煉獄燃炎編”であった。
遂に斬り込み始めた『鬼滅の刃』。
次は『遊郭編』。
そして現在放送中の『刀鍛冶の里編』に追い付くぞ~!
ここで、“大正コソコソ噂噺”。
ずっと見ないままでいた筆者は、まんまと気に入ったらしいですよ。