「むごすぎる」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
むごすぎる
炭治郎にどこまで背負わせれば気が済むのか。
一家惨殺に合い、家族を失い、助けられなかった自分を責め、鬼になった妹の立場と命を守り、生きることだけでも体力と精神力を奮い立たせている15歳だというのに。更には戦闘。
無限列車編は鬼の質も悪すぎる。家族が全員生きていた幸せな夢を見させておきながら、それを自ら斬って現実に戻ってこなければいけない炭治郎。
脚本は正気なのか?
そして、こうして大切な存在を奪われた気持ちの集まりこそ、戦争や異民族に対する無条件の嫌悪意識を産んでしまう、戦争を助長・正当化するような話にどうしても見えてしまう。
鬼と共存派も柱の中にはいるものの、戦時中の竹槍対B29の日本同様、鬼から狙われたらもう最期、生き残る術などないのが不公平極まりない。
それでも迷いなき煉獄さん。特攻隊の、1番大切な命を犠牲にしてしまう倫理観と同じよ。
特攻隊は軽さゆえ飛べたがそれは命を守るという概念で作られず何も積んでいないから。実物を見ても鉄板と椅子のみの丸腰。対策されてから全く勝てなくなったが、その精神が理解できない価値観で怖いと、アメリカからは恐れられていた。
柱は戦略を変えなければならない。
そこに美意識を感じてしまう限り、日本人は組織で団結して見せて個人の能力や自己犠牲頼りの組織であり続けてしまう。
普天間にしろ、我慢が美徳でないのに耐えてしまった結果、出てるでしょ。
15歳の子にこんなに背負わせる話が良しとされてはならないと子を持つ親としてどうしても感じてしまった。
戦闘で首や身体の部位が飛び散る描写も、子供も見る作品としてあってはならないと感じてしまう。
視覚だけでなく精神的にもむごい作品。
寂しさ悲しみを、許せないという怒りに変えて鬼狩りにぶつけて、犠牲者達をこれ以上生まないために勤しむ柱達。悲しくてならない。
勧善懲悪の話は必要だし、海外にはあまりない、心の機微が描いてあり深みがあるのはとても良い。でもここまで悲しくさせることないって。
そして、悪い鬼なら殺して良いのか、子供も見てしまう作品なのだから、立ち止まって考えさせる1クッションが欲しい。我が子には見せられない。
悲惨さの中でも諦めず、同じ悲しみの連鎖を生まないために頑張れる柱達の苦悩と強さを大人は理解ができるからこそはまるのだろうが、子供達には派手な戦闘と暴力的直接的な殺害シーンばかり脳裏に焼き付いて終わってしまう。その記憶が大人になった時どこかで、憎い感情を覚えた時の言動ベースになる可能性も秘めていると思うと恐ろしい。