「煉獄杏寿郎という男」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 もりのもりさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0煉獄杏寿郎という男

2021年7月29日
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泣ける

興奮

劇場で3回、ディスクで2回鑑賞しました。
アニメは全話視聴、マンガは未読です。

TVアニメの最終話で導入され劇場版で盛り上がりがピークに達するというTVアニメの続編としては完璧な作品だと思います。
しかし単品の映画として観ると色々と雑な部分も散見されます。歴史を変えた大ヒットによって無視できなくなった映画ファンが観賞後にガッカリする気持ちもわかります。

そもそもが映画ファン向けに制作された作品なのかどうかはわかりませんが、アニメ、マンガ的な記号やサービスによって省略された人間関係や状況説明、無駄に冗長なセリフや説明しすぎるセリフなど普段アニメを視聴しない自分にも違和感を感じる部分はいくつかあります。

ただ、マンガは未読でTVアニメ版のみ視聴した自分を含め、煉獄杏寿郎という人物とほぼ初対面の鑑賞者、及び炭治郎を含めた登場人物が短時間で煉獄杏寿郎という人物に心を奪われ感服し尊敬し、鬼殺隊の柱としての在り方に感銘を受けたというのは最後に涙するに足る理由であると思います。

煉獄母が問いかける「才ある者の責務」
炭治郎が独白する「現在の自分の立ち位置」
何度観てもこれらのセリフと母の言葉を守り実行する煉獄杏寿郎の姿勢に涙を堪えきれません。

「才ある者、上に立つ者の在り方と上を目指す者の姿勢」を戦いの中で体現する煉獄杏寿郎の背中。その覚悟を目の当たりにした竈門炭治郎が感じた自分の弱さへの独白、「悔しいなあ…」からの一連のセリフは特に共感できましたし、沁みました。

自分の偉大なヒーローが圧倒的な現実に対してどうあるべきかを背中で教えてくれる。個人的にはイーストウッドのグラン・トリノの観賞後に近いものを感じました。

鬼滅の刃という作品はストレートな感情表現と、それを余すことなく、細かな心の機微を深くわかりやすく、より豊かに表現する声優さんの熱演あってこそだと思います。

序盤から中盤にかけて初見の方には半ば投げっぱなしで済ませるシーンが散見されるため、その辺りをコンパクトかつ丁寧に編集した単品映画としても成り立つような新バージョンの制作、映画ファンをも唸らせるような編集版を是非ともお願いしたいところです。
個人的には90分-100分ほどにコンパクトにしてもらえると再鑑賞しやすいです笑

TVアニメは視聴したが特にファンでもなく周りの人間が何人も感動しまくっていたため興味本意で覗いた結果、劇場に3回も足を運び、ディスクまで購入する始末笑なので映画云々はどうでもよいところではありますが笑

単品映画としては荒削りではあるけどもそれだけ魅力のある作品だと思います。

もりのもり