「キャラの創造力と散りばめられた工夫」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 Pegasusさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラの創造力と散りばめられた工夫
2回目を鑑賞して印象が大きく変わった為、書き直します。
初見のときは、「作画は素晴らしいものの、演出が幼稚でうるさい」という印象。
ストーリーも前半と後半で繋げ合わせた感が強く、捻りがないのが惜しいと感じた。なので純粋に楽しめたが⭐︎4.0評価でした。
2回目を観るつもりは無かったけどDolbyCinema対応にアップグレードされたと知り、特典もかっこよかったので行きました。(4/5 ミッドランドスクエアシネマ)
よもやよもやだ!!鬼滅ってこんなに凄い映画だったの⁉︎初見では演出の幼稚さにシラけたのに、2回目では心に炎の呼吸の如く熱く、どストレートに響いてくるではないか!
正直、危なかった…喉辺りまで感情が込み上げてきました。お見事、完・全・燃・焼でございます。
確かに演出の幼稚さやギャグはシラけた。Fate HFで見せてくれたようにホラー的な予兆や、とことん残酷でシリアスな作風にした方が完成度は高くなると思う。
しかしキャラクターの描き方が秀逸だ。
鬼滅ファンでも無い自分からすれば、煉獄さんはTVシリーズでちょろっと出てきただけだから全然知らない人。
それなのにいつの間にか心強い見惚れるキャラになってしまうのは何故か。
まず、「美味い!」から心を掴まれる。ギャグ的にはつまらないし退屈なんだけど、「この人は純粋で真っ直ぐなんだな」と思わされる。その後にマンガ的な作画とCGIが見事なまでに融合した炎の呼吸を目の当たりに惚れる。煉獄の兄貴の虜になる。
そして夢という精神世界を通して描かれる人物像がさらにキャラを補強する。心理描写や状況をセリフで何でもかんでも言ってしまい、しつこい部分は多いけれど重要なのはセリフではなく画面だった。
精神世界で描かれる世界はその人物の求める場所であり、その人物がありのままの姿で存在している。
炭治郎は「主人公」ではなくただのお兄ちゃんへ。
善逸は平和で穏やかな世界でデレデレ。
猪之助は独自の解釈で満ちた幼稚な冒険。
そして煉獄さんは家族での自分を通して「最強な奴」では無く「生身の人間」であると実感させられる。
この精神世界を通してキャラがさらに愛おしくなるのだ。そしてその後は息もつかぬ戦闘シーン。
今回改めて観て気づいたが、ufotable独特の上下左右、自由自在に動き回るカメラワークが少ない。
これはマンガ感を意識しているのは明白で、動きの少ないカメラワークでビシッと決まるショットが多い。
キャラが愛おしくなったところでこれを見るとハートを射抜かれる。善逸登場シーンは最高にかっこよかった!
そして鬼殺隊の活劇とも言える前半は終了。
普通ならば「めでたしめでたし」で幕を閉じるが、終わらない。
やはり前半と後半の繋ぎには無理があるように感じてしまうが、そんな思いを吹っ飛ばす激しいバトルが勃発。
いや〜あれは痺れた。
男同士の熱き闘い。
いつもなら、叫びすぎてうるさいと感じるけど、鬼滅は叫びが観客をリードする。「うぉー!」とカメラワークが回りながら自分もそのど真ん中で見ているような作品への没入感がある。
自分の推しが、頼れるアニキが白熱のバトルをしてるのは胸が熱くなる。「心を燃やせ」というか「心を燃やされた」
そして決着ー
ここで今まで作り上げてきた人物像が力を発揮する。
朝日に照らされる笑顔の煉獄さん。大粒の涙を流し叫ぶ炭治郎。感情を誤魔化そうとしても溢れ出る猪之助の叫び。
初見ではうっせぇわ!って思ったけど、キャラをきちんと自分の中で作り上げていたからか、何かが込み上げてきた。
「悔しいなぁ。強くなったと思ったらまた分厚い壁がある」というセリフはグッと響いた。炭治郎の声優さん上手すぎです。
興行収入が『千と千尋の神隠し』を抜いたときは、正直「ええぇぇ…」というのが第一印象だけど、今ではこれが1位なんだぞ!と誇りを持てる。アート要素は少ないけどやっぱり面白い物は面白いし、満足度も高い。
それにこの映画は「名作映画特有の雰囲気」みたいなのがある。上手く言葉では言い表せないのだけど、名作に共通して存在するエモーショナルな空気感がある。
今回DolbyCinema で観たこともあり、大作映画感も強かった。初見はイオンシネマの特大スクリーンであるULTIRAで観たのだが、迫力は桁違い。
技の音が左から右に、正面からはセリフ、天井からは劇伴奏、そしてあらゆる方向からの効果音。
圧倒的な明るさと色彩の表現力も素晴らしく、日本でもこれほどの映画を作れるのか!と感心した。
キャラを自分の中でどれだけ創造することができるかによって評価は違ってくる気がします。
一見子供向けアニメという感じだけど、案外工夫が散りばめられていて深入りすると面白いかもしれないです。初見では映像が凄すぎて展開に身を委ねていたところが多かったので、2回目からは面白さが倍増するような気がします。
あぁー早く続き観てー!
堕ちて行く。堕ちて行く。鬼滅沼へー