「男泣きに泣いた」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 photo visionさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0男泣きに泣いた

2021年1月18日
iPhoneアプリから投稿

男泣きに泣いてしまいました。私は50代なのですが不思議と少年ジャンプマンガに縁が薄く、今回の『鬼滅の刃』鑑賞は完全にネットやマスコミによる情報のゆえでした。
50代の私ですら「人間の生命は地球より重い」のような戦後教育を受けて育ち、私の同世代でも高い教育を受けながら「おれは死にたくない、だから戦争反対。死にたい人間はさっさと戦場に行け」のような、じつに軽薄で軟弱な思想に甘んじています。

マンガに学ぶということは一見、じつに幼稚なように見えますが、己の生命を賭して守らねばならぬ価値がある、あるいはほとんど勝ち目のない戦闘に敢えて赴かねばならないという主張は、とくに日本では社会全体から抹殺されて、かろうじてフィクションのなかに生きながらえ、逆にその存在感をましたのではないでしょうか。
「強いものは、弱いものを守る、それが当然の責務」というキャラクターの強いメッセージは、現代にも生き続けるナラティブ(説話)として強烈に響いています。
もちろん『鬼滅の刃』の個々のエピソードを見れば、本当に新しいものはないかも知れません。そのような正義感は『宇宙戦艦ヤマト』の時代からあるのだろうとはおもいます。
しかしながら、この国難の時代にあって家族間の価値、同胞の価値が綺麗事ではなく、血を流して勝ち得るものだというメッセージがあらためて国民にもたらされたことに大きな意義を感じます。
他の諸賢の方々がおっしゃっていることだとは思いますが、最初から商業的な大成功を狙った作品であれば、このような鮮烈な輝きをもつ作品にはならなかったことでしょう。

photo vision