「どこで泣けばいいのか全く分からなかった」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 ikikagaさんの映画レビュー(感想・評価)
どこで泣けばいいのか全く分からなかった
まわりの普通のおばさんや小学生、十代の若者が3回も4回も劇場に行き、「煉獄さん!」「煉獄さんが!」「煉獄さぁーん!」「号泣」「泣いた」と激推ししてくる。アニメは視聴済みだったが全く響かず、しかし「その後が面白いから!」と言われて見てみた。
で、その煉獄さんだが、それまで苦楽をともにしてきた戦友でもなく、"見かけたことがある"程度でほとんどカラミも無い非現実的なマンガ的豪傑属性キャラが急に現れて過去語り始めて死んで、みなさんはいつどこで彼に愛着をもち、感情移入できる時間があったのかお聞きしたい。
ちなみに他のレビューにも散見されるが、煉獄の母親の言葉はアメコミスパイダーマンの(育ての)父親の言葉であり、メインテーマ。知らない世代にこの言葉を伝えてくれたのは、パクリだと責めるのではなく次の世代に広めてくれた、と評価するべきだと思う(ここに0.5点)。自分がもしスパイダーマンを先に見てなかったら、この言葉は突き刺さったはずだから。
映画のあと自分の感性がおかしいのかと思い、みんなはきっと原作を最後まで読んでるからだ、それを踏まえなければ何も言えないと考えて原作を最終話まで読んだ。が、え?これで終わり…??
とにかく全体の尺の大半を急に現れたポっと出キャラの薄い過去編に費やし、愛着も何もないのに急に過去を語られても…と戸惑い続けて読み終わった。しかもまさかの100%すべてが家族愛家族愛家族愛家族カゾクで、全部同じパターンのこすり倒しで胸焼けした。自分の生い立ちの影響もあって家族愛(自己遺伝子の保存)より友情の方がずっと尊く理性的(自己の遺伝子外への愛情なので)という考えなので、正直気持ち悪かった。
逆説的な考えになるけど、この映画(漫画)に共感できる人たちって家族愛に共感できる(家族愛に恵まれた)幸せな人たちなんだろうな、日本てまだまだ平和な国だな、と思い至った。
とにかく映画も原作も、ポっと出キャラの深掘りに必死で(しかも数が多いから結局一人一人が浅い)伏線も壮大なストーリーもなく、小さなスケールで家族愛の押し売りセール、泣き所が全く分からない漫画だった。
散々言われてることだけど、少年漫画を見たこと無い層が今の苛烈なブームを作ってる。まわりの鬼滅おばさんたちもやはり鬼滅以外のマンガ読んだことが無いそうな。まぁ、でしょうね。
3回も4回も行く時間とお金があったら、どうかこれを機に原作者が影響を受けてきた数々の映画(洋画)や漫画を観てみて欲しい。
もっと深く、熱く、すごいから。