「『鬼滅の刃 無限列車編』が今後のアニメーション表現に与える影響の予想」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 無二村鷲美さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『鬼滅の刃 無限列車編』が今後のアニメーション表現に与える影響の予想

2020年12月14日
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まずは僕の個人的な感想から。
コロナ禍において、この様な作品がヒットするのは素晴らしいと思います。不信と分断の時代に、古臭いまでに正しすぎるメッセージを込めた映画がヒットするのは嬉しいです。

この作品は、映画ではなく漫画として評価すべきだと思います。日本で製作されるアニメーションは、映画的表現と漫画的表現に分けられると思います。以下にその歴史を端的に振り返ります。

1958年〜1963年 『白蛇伝』から『鉄腕アトム』以前まで。東映動画が映画的表現でアニメーションが作られていた時代。

1963年〜1984年 『鉄腕アトム』から『風の谷のナウシカ』以前まで。漫画原作が中心で、漫画的表現でアニメーションが作られていた時代。

1984年〜2020年 『風の谷のナウシカ』から『鬼滅の刃 無限列車編』以前まで。スタジオジブリを中心に映画的表現でアニメーションが作られていた時代。庵野秀明や押井守、新海誠や片渕須直もこの系譜です。

この様に見ると、日本のアニメーションは映画→漫画→映画の歴史を辿ってきているのが分かります。もちろん反例はたくさんあります。『ルパン三世 カリオストロの城』は1979年に製作されました。あくまで時代の最先端を走った作品の傾向です。
僕は『鬼滅の刃 無限列車編』をきっかけに、アニメーションにおける漫画的表現が再び主流になるのではないかと予想しています。2020年12月14日現在において巷では、本作は『千と千尋の神隠し』の興行収入を越すのではないかと囁かれていますが、正にそれはアニメーションにおける表現史の一つの転換点を象徴しているのではないでしょうか?映画好きからして見ると寂しさもありますが、今後の動向に期待です。

最後に、映画館を助けてくれてありがとうございます。本当に素晴らしい現象だと思います。

無二村鷲美