淪落の人のレビュー・感想・評価
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現代香港のリアル
香港の名優、アンソニー・ウォンは雨傘運動支持を表明したため、俳優活動から締め出されていた。そんな彼が、新人監督の低予算映画で、車椅子の枯れた中年男性を演じている。『インファナル・アフェア』の時のような色気は見事に封印し、落ちぶれた男になりきっている。
香港ではフィリピンやインドネシアから出稼ぎでやってきた家政婦を雇うのが一般的で、住み込みで働く彼女たちが休みの日曜日にはダンボールを敷いて広場に集まっている光景は、香港では日常的だそうだ。本作は、そんな香港の今のリアルを写し取っている。
フィリピンからやって来た家政婦に写真家になる夢があると知ると、男は全力で支援しようとする。不器用な2人の心の交流が暖かく描かれている。民主化デモに揺れる香港は、殺伐としたイメージを持たれてしまうが、そういう香港からこのような優しさに溢れた作品が出てきたのは嬉しい限りだ。香港映画の火を絶やさないように頑張ってほしい。
悪くはないのだが
すべてがすんなり行きすぎじゃないか?チョンウィンが心を開くまでも一瞬だし、そもそもそんなに偏屈でもないし。エベリンを取り巻く人もいい人たちばかり、八百屋のおばさん、妹は確かに敵だけど、関わり薄いからそんなに気にしなくていいよね。気にするべきはお母さんでしょう。あんな処理の仕方でいいか?もっと深い話すべきだろういくら何でも肉親なんだから。全体的に表面さらっと撫でエピソードの連続な感じ、大人の鑑賞に耐えるにはもうちょっと挫折や複雑な感情のあやのようなものを組み込んでほしかった。
泣ける。凄くいい話し。
フィリピン人の差別の中、健気な彼女が尽くした先は、中国人の気の難しい雇い主の心まで変えた。
暖かくて優しい素晴らしい映画でした。
凄く心が洗えました。
いつか彼女と旦那様の再会シーンが観たいですね。
色んな人にみて欲しい。
なんだこの胸の奥底から湧き上がる得体のしれない感情は・・・
号泣できる映画ではない、また苦労の末のカタルシスとも少し違う・・・人の本質に1点の翳りもないこの人間の持つ優しさを信じ通そうとするふざけたまでの力技は、こんな事はある訳ないと心の中で否定しながら見てる人すべてに、世界のすべての人が優しかったらどうなるかと言う強すぎる信念のシャワーを浴びせるこの映画、この中にそんなちっぽけな疑念を引きずり倒しながら前に進むこの作品の純粋さの前には何故かグダグダになっていく自分を発見するのは、僕だけでは無い様な気がする・・・。
テーマとしては色々社会問題の提起も織り込まれてはいるものの、それよりも何よりもこの映画に貫く信念は、全ての人が優しかったら世界のすべての問題は解決するのだと子供のように高らかに謳い上げてるこの一点に尽きるのだと思う・・・。人を信じる事に疲れ始めている方が居ましたら是非この作品、お薦めです。
アンソニー・ウォン目当て
チョンウィンは事故で下半身が不自由。家政婦を募集して、来たのがエヴリン。夢を語るエヴリンに「家政婦ごときが夢を語るなんて」と言うチョンウィン涙を流すエヴリン。酷い一言。どんな仕事をしていたって、誰だって夢はあっていいじゃん?チョンウィンも後でとても反省するのでまぁいいんだが。
日頃の感謝を込めてチョンウィンがプレゼントしたカメラ。お金に困ったエヴリンが泣く泣く売ってしまったカメラ、同じものをこっそり買って洗濯物の中に入れておいて、見つかって良かったな、というチョンウィンの優しさ。エヴリンが夢を追えるようにこっそり画策するチョンウィンの優しさが感動的。家政婦仲間の話に出てくるカルメンが登場する場面も感動的。
家政婦と雇い主、言葉も通じない出会いから、家政婦が旅立つまでの心温まる物語にほっこり。エヴリンの夢も応援したくなるし、チョンウィンにも元気に幸せに暮らしてほしいと願ってしまう優しい映画。
心温まる、優しい気持ちになれる映画
心温まるいい映画でした。
事故で半身不随となった気難しい男とフィリピンから来た家政婦の話。二人とも家族関係に問題もある、言葉も異なりコミュニケーションにも問題がある。そんな二人が一緒に暮らす中で思いやりと優しさを交わし夢を見つけていく。
外国人労働者を下に見る人達、これって日本でもありますよね。こんな思いやりを持ちたいものです。
ロールモデルとサポート
エヴリン、よかったね⭐️彼女はZ世代に入る年齢だと思う。カメラの構え方からもそう思った(年齢関係なくデジカメだったらそうなるんですね。森山大道見てわかった。失礼しました)。何よりSNSがきっかけでフィリピン出身の同じ境遇の友だちに出会えてよかった。ドレスを各々試着して買ってみんな綺麗で楽しんで、女子会終了後、ドレスは店に返品したのを見て逞しいと思いながらも涙が止まらなかった。
アンソニー・ウォン、この映画でも素敵でした。倒れて助けを求めるエヴリンの声を耳にしてすくっと立ち上がり彼女を抱きかかえるシーンはこの映画で一番の見所でした。誰よりもそうしたいのは本人でその思いが痛いほど伝わりました。そしてアンソニーは「夢を与える人」であると同時に「若い人の夢をサポートし自分も共に幸せになる人」でした。自分も若い同僚も息子も妹もhappyになりました。香港の若い人達を応援する大人として俳優としての彼の立ち位置と同様です。
鍵はエヴリンに渡したまんまだから、エヴリンは彼に会いにまた香港に来るよ!
エヴリンに女性のロールモデルが二人も現れてよかった。女性だけではないが、ロールモデルの存在がどれだけ励みと憧れと頑張りにつながるか!そして自分の介助が必要な彼に自分の夢をサポートしてもらったことがすごくよかった。
「追龍」にかまけて見ていなかったこの映画をまた上映してくれた武蔵野館様、ありがとうございます!久しぶりに広東語(全くできませんが)を聞くこともできて嬉しかったです!
おまけ
どうして「福」の文字を天地逆さにして飾るのかこの映画で知りました!新鮮!
緊急事態宣言解除後の初めての映画鑑賞
たまたま空いている時間に何かみるものがないかな、
と何気なく選んだ作品でした。
平日の昼間ということもあってか観客は私1人笑
でも見終わって1人でよかったと思うほど
泣いていました。
本来人間誰しもがもっている(もっていた)感情が
たくさん詰まっている映画です。
笑い、泣き、怒り、悲しみ、そして愛情。
昨今、差別問題や国際問題が浮き彫りになって
いますが、沢山の方がこの映画を見てくれたら、
と心から思います。
書いているだけで思い出し泣きしています。
そしてやっぱり映画館で観るという事の良さを
再認識しました。
沢山の方が鑑賞していたけますように。
親子愛に見えた
お互いに、お互いの幸せを祈って実行に移す。
素晴らしい親子愛に見えました。
近くの他人の方が、愛情表現しやすいのかも。
さすが、たくさんの賞をもらう作品。
香港のダウンタウンの生活が、垣間見えて、
そして、ここでも人種差別的問題が
あるんですね。
外人家政婦というフレーズ。。。。
『最強のふたり』よりも良かった(評価は人それぞれ)
事故で下半身麻痺となったリョン・チョンウィンの元にフィリピン人女性のエブリンが家政婦としてやってきた。家政婦とはいっても食事・掃除以外に介護もしなければならないし、最初は言葉が通じないという状況だった。元看護士のエブリンは、同じく家政婦として香港にやってきた仲間とはタガログ語で喋り、ご主人様のチョンウィンには英語で接するのだ。すぐにでも解雇されそうな状況だけれども、チョンウィンにしてみれば次の家政婦がいつ見つかるかもわからなく、エブリンとしても解雇されれば強制送還となってしまう弱みがあった。
なぜか障がい者ものの作品は裕福な家庭が多いけど、この映画はどちらかというと二人とも貧困層であり、公共住宅の各部屋も狭い3DK。主人公演ずるアンソニー・ウォンといえば、警察上層部かマフィアのボスといったイメージを持っていましたが、こうした役も意外と似合ってる。怖そうだけど本当は優しい中年男。意思疎通のために英語を勉強し始めるところもお茶目だ。
障がい者映画によくあるエピソードも散りばめながら、実は香港やフィリピンの現実や外国人差別等の社会問題をも静かに訴えてくる。世の中で成功するのは100人に1人というフィリピン出稼ぎの現状と離婚問題。しかし夢だけは失ってはいけないと、チョンウィン、エブリンがお互いに相手のことを気遣う心がとても美しいのです。絶妙に季節感も描き出しているのですが、彼らの夢の前には吹き飛んでしまいそう。
ドリームギヴァー。夢を叶えようとする人と、夢を叶えてあげたい人。最もそれが伝わってくるのがやっぱりカメラ。多分一月分の賠償金による収入くらいの金額なのだろう(想像)。
オリバー・チャン監督って知らなかったけど、フルーツ・チャンの息子なのかな?フルーツ・チャンといえば『美しい夜、残酷な朝』のオムニバスと『THE JOYUREI』でしか知らないけど、とにかく映像が妖しく綺麗だったことが印象的。満点にしなかったのは、妹の苦悩がよくわからなかったからです。
素晴らしき哉、香港現代人情譚
香港映画で、こんなヒューマンドラマは最近珍しいです。車椅子の障がい者と介護人のドラマと言うと、フランス映画の名作『最強のふたり』があるけど、こちらは外国人労働者問題を絡めているのがポイントです。始めは言葉すら通じなかった主人公二人が徐々に互いを思いやるようになる過程がさりげないタッチで描かれていて、とても好感が持てます。一つ一つのエピソードのまとめ方や積み上げかたもうまく、定石と分かっていても、ウルウルきました。
心地良い爽やかさ
原題のStill Humanは「俺(私)はまだ人生諦めていないぞ!」といったところだろうが、実際はそこまでのアクの強さはなく、むしろハートウォーミングな柔らかい話。
香港映画と言えば、派手なアクションやハードボイルドなものが定番だが、この作品はそれとは180度対極の地味な物語。BGMも日本のラブストーリーのよう。
主従関係から互いの境遇の理解を経て、ほんのりと淡い男女の感情の萌芽へと気持ちが移ろいでいくという展開は青臭さも感じさせるが、嫌味のない程良い爽やかさ。
三遊亭小遊三そっくりなアンソニー・ウォンがところどころで見せる物憂げな表情が不思議と味わいを感じさせるし、家政婦エヴリン役のクリセル・コンサンジの健気でありながら知性も感じさせるイメージも役柄の設定に合致していて、いい人選だと思った。
ただ、上映館が少ないのが勿体ない。
新作の公開延期が相次いでいる今ならば、もっと多くの映画館が上映に踏み切っても良いのでは? と思わせる良質な作品。
夢は第一優先
評価が良かったので、鑑賞。
予告は1.2回見るくらいで、あまりあらすじは見らずに。香港映画は初めて映画館です。
感動した...。
ありがちな話な気がするが、若い人は特に見るべき映画だと思う。
元看護師のフィリピン女性は、家族のために夢を諦め出稼ぎとして、肩から下は不自由で車椅子生活の人生に絶望した中年男性の家政婦となった。
言語の壁ってのは、ホントに高いもので何も伝えることが出来ない。イライラするのは当然だ。
壁を乗り越えるべく、お互いにお互いの言語を知ろうとするその姿勢に憧れを感じた。こんな人でありたい。
もちろん、体が思うように動かせない本人も大変だが家政婦も相当大変。かなりの重労働。
しかも、お金もないとなると考えながら食材を買ったりしないとやりくり出来ない。
こんな状況で夢を叶えようなんて思いもしない。
この世のすべては金。金がなければ何も出来ない。
だが、それ以上に命が大切。たった一つの命を生きるために使ったって意味が無い。
夢は諦めるな。って言ったって叶えれる状況じゃなければ諦めたくなくても諦めないといけないよ。
そんな彼女を意地でも救ってくれる雇い主は根っからの善人なんだな。
ただ、この二人の過去を映像で見たかった。
過去にはどんな家政婦が居たのか?
看護師として働いていた時は?
普通に生活出来ていた時は...?
四季と同時進行で心情が変化していき、自然と共に心が動いていった。雰囲気も見応えもいい。
あっという間に終わってしまった
最後に感動したってよりか、じわじわと涙が出てきて最後に一気に来た感じ。非常に美しくて笑えて感動する面白い映画だ。何時間でも見たい。
どんな人だって100人に1人。
人生のあらゆる面で必要となることを教えてくれるいい映画です。ぜひ劇場で、、、
こんな映画作ってくれて、クソありがとう。
凄い、凄い、凄い‼︎‼︎
香港に家族と離れて住む半身不随、車椅子暮らしの壮年男性と、フィリピンから来た家政婦の話。
すごくでかい字で「希望」とだけ書いて、レビューを終わりたい。それくらい、希望と光に満ち溢れた映画。
ライトサイドオンリーのストーリーです。ダークサイドに落ちません。
車椅子と言えば「最強のふたり」だが、ちゃんとオマージュ(モノマネ?) も入ってます。
-------- ごめんなさい、この先、ネタバレかもしれない。観てから読んでもらった方がいいかも ------
夢の実現がテーマで、「写真家になりたい」という彼女の夢が焦点。だが、実は、怪我をして何の夢も希望もなくなった彼に与えられた、というか彼が発見した、「彼女の夢を後押しし、実現する」という夢こそが、本作最大の夢であり、それが実現するからこそ、俺たちはこんなに涙があふれるのだろう。
いやあ、泣いた泣いた。気持ちよく泣いた。劇場じゅう鼻をすする音ばかり。
ハートウォーミングなだけの浅薄な作品
映画に“意味”なんてものが有るのか分からないが、もしも有るとすれば、この映画はハートウォーミングなだけの、“意味”に乏しい作品に思えた。
最初の方の、4人のフィリピン人の本音トークや、市場の“ぼったくり”のシーンでは、香港の実情を描いた社会派映画なのかと期待させた。
しかしその後は、チョンウィンとその家族、および、エヴリンの物語に矮小化されてしまう。
フィリピン絡みの話には生々しさがあるが、いずれも詳しいことは描写されない。
むしろ、エヴリンの幸せはお金で買えてしまったという、ぶっちゃけた現実が描かれているとさえ言える。
香港ならでは、の話とは言えない。
かといって、世界に普遍的な深みのある人間ドラマとも言えない。
等身大の話のわりには、妙に出来過ぎという、矛盾した印象の“ふんわり”した映画だった。
優しい体温のような物語
事故で半身不随となった台湾人チョンインの元に来た新しい家政婦は、フィリピン女性のエヴリンだった。広東語が解らず意思疎通も困難な彼女に、最初は苛立ちを感じていたが、家族とも疎遠なチョンインに情深く接するエヴリンに、次第に親身な想いを抱き始める。互いに広東語と英語を学び、片言で心を通わせる二人。彼女の夢が写真家になる事だと知ったチョンインは、夢を応援したいと考えるようになり…。
筋だけを見ると、『最強のふたり』『あなたの名前を呼べたなら』などの類似作品が幾つか思い浮かぶし、実際に似たシチュエーションが見受けられたりもするのだが、そのどれとも異なる柔らかい感触を持った作品だった。
二人の間には、自分より相手の幸せを願うような強い愛情が培われるのだが、その感情は、恋愛、友情、親子の情、どれとも明確に表されず、カテゴライズされない。ただ、人と人との間に育った深く温かい情として描かれ、こんなものが存在するのならば人間でいるのも悪くはないなぁと、酷く救われる思いにさせられる。
作品中には、二人の間だけでなく、チョンインと親友、妹、離婚した妻との息子との関係、エヴリンと同郷の出稼ぎ家政婦友達の関係など、複雑な感情や困難な現実に少しばかり歪められようと、確かに存在するものとして、様々な愛情の形が描かれる。
それらが全く嫌みなく、優しく頭を撫でる手の感触のように、するすると心に染み透ってくる。
エピソードや心の変遷は、季節の移り変わりと共に順を追って語られる。ちょっとした台詞の端に仄めかされた伏線も、後々丁寧に拾われているし、登場人物の背景も、詳細に追う事はしないが、合点がいくようにさらりと説明され、難解な部分がない。
時折挟まる、夢か妄想のような情景が、より深く観客をキャラクターの心象に潜らせていく。
現実的ではなかろうと思われるような都合のいい展開もあり、リアリティに欠けるという評価もあるだろうが、厳しい現実を容赦なく突き付けるばかりが正解でもあるまい。理想であろうと、偽善であろうと、唱わなければ意味はない。
夢想にばかり耽るのは無為かも知れないけれど、磨り減らすばかりでは魂が疲弊する。何かとギスギスした現代、時にはこんな優しい物語に癒され、救われ、善意や希望を信じる気持ちにさせられたいのだ。
心が荒んだり、傷付いたりしている時は、こういう作品で心の重みを洗い流したい。
人間は弱く脆いけど、強くなれることを忘れないで
香港にやって来た、広東語の通じない外国人家政婦、エヴリン。「一番重要なのはバカのふり」と、同朋が言う。聡明である彼女は、自分の働き方、居場所、この先の人生、、、どう行くべきか虚空をさまようような心持ち。
事故で車いす生活を余儀なくする老人、チョンウィンは、家族との距離が微妙。
「家族にそばにいて欲しいんだけど、家族は俺たち以上に他人だ」とチョンウィンは言う。他人の関係から始まった二人が、徐々に相手を労わり、敬っていく心情の描き方が素敵だった。「車椅子に乗るしかないけど、心持ちは自分で選べる」と励ますチョンウィンに触発されて、自分の夢を追うことを始めるエヴィリン。
「やれることをやれる人は少ない」と背中を押し、「夢を与える人」と感謝を示す。その心が、昇華するラストは心地よい涙が流れた。
原題、”still human”。そこに、この二人の矜持が表れている。優しさに包まれている映画だった。
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