わたしの叔父さんのレビュー・感想・評価
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クリスと叔父さんは共依存の沼に首までどっぷり浸かっています。
この際叔父さんはどうでもいいですが問題はクリスです。どうすれば抜け出せるか。そもそものきっかけはやはり自分を残して長男の後追い自殺をした父親でしょう。まだ幼かった彼女はこの出来事を理解するにあたり、自分のことを価値のない存在、愛されるに値しない存在だと解釈してしまったようです(マイクの前で下着を下す行為もそのせいでしょう)。きっと彼女には自分のことをかけがえのない存在、他者と交換不可な存在であると認めてくれる誰かが必要だったのでしょう。そうでないと今にも自分が消えてなくなりそうで、バラバラになってしまいそうで怖かったのかもしれません。
彼女は酪農の仕事は好きですが、獣医にも興味があるし教会の合唱もやってみたい、自分に好意をよせてくれるマイクとのデートも楽しみたい。でも優先順位がどうしても下がってしまう。何故なら先ずは自分の存在だから。周りの人がいろいろ応援してくれてるのはわかるが怖くてもう一歩が出ない。この泥沼から脱出する具体的な方法は何だろう?やはり週に一度でも叔父さんから離れて外の世界に触れること、マイクとのデートやDr,の助手もいい。自分の内面ばかり見つめていた目を外の世界に向けること。過去の忌まわしい記憶と未来の不安は念の力で思考の外に追いやって今この瞬間に意識を集中すること、何故なら過去も未来も今この瞬間には関係ないし、そもそも存在すらしないから。
優しいクリスが救われんことを。
自然を映し出すカメラは固定、たった一度だけ、カメラは彼女と一緒に動く。
2021.2.12午前中に武蔵野税務署へ確定申告書類を提出。これで今年も税金の還付が受けられる。午後はUPLINK吉祥寺へ。
デンマーク映画「私の叔父さん」を観る。2019東京国際映画祭東京グランプリ作品。
脚の悪い叔父と27歳の姪が二人でやっているデンマークの乳牛農家の生活を淡々と描く。ただ淡々と描く。
朝5時30分起床。叔父を起こして着替えさせ農作業に着く。多くの牛の世話、搾乳、牧草の刈取り、機械の手入れ。そして食事。TVからは世界のニュースが流れている。叔父に文句を言いながらもどこか楽しい。そんな毎日が続く。デンマークの自然風景が美しい。
彼女の趣味は数独。毎日食事をしながらも数独をやっている。そんな彼女の父が死んでから12年も続く生活に、少しだけ波風が立つ。姪が教会で出会ったマイクにデートに誘われたのだ。しかし、・・。
デンマークの自然を映し出すカメラは固定だ。たった一度だけ、カメラは彼女と一緒に動く、走る。彼女の心の動揺を現す。
結局、いつもの日常生活が戻る。そして、また淡々とした叔父に文句を言いながらもどこか楽しい生活が繰り返される。
叔父さんと姪を演じた二人は、実の叔父と姪だとのこと。自然だった。
クレジットタイトルは無音だった。
もったいない
開始から何分くらいだろう…セリフがないまま、淡々と2人の日常生活が映し出される。
起こして着替えを手伝い、朝食を用意する。
テレビのニュース番組(音声のみなのがまた心憎い)から、時代背景が少し垣間見ることが出来る。
家畜の世話をして、手を洗うクリス。
慣れた手つきで洗剤を移動させる。
そこへ叔父さんがやってくる。
もう全て阿吽の呼吸が清々しいほど。
ヌテラ好きの叔父さんは身体に障害が残っているが、内臓は丈夫らしい。
とにかくよく食べる。
夜はリビングでソファで横になりながらお菓子を食べる。そして咽せる。(叔父さん、それやめなさい)
そしてまた朝が来る。
少し過保護過ぎるかなと思えるクリスの介護。
自分を犠牲にし過ぎるし。
ヘルパーさんが来た時も、寂しそうではあったけど、もう少し行政に頼ってもいいのでは?と思ってしまう。
自分のやりたい事も恋も犠牲にしなくても、もう少し出来ることがあるのでは?と。
獣医さんの善意をもあそこまで無にするのは少し意固地な気もする。
歩み寄れる余地はあるのに、もったいないな、と。
叔父さんも、マイクに自分のやりたい事をやるように言っていたけど、現実問題クリスがいなくなったら困るわけだし。
ブツっと切れたようなエンディングだったが、それぞれの幸せを願わずにはいられなかった。
叔父さんはつらいよ』
『叔父さんはつらいよ』
日本には『PLAN75』があるからね。
2年くらい前に見て、今回が三回目だが、結論よりも、男の本性を見抜く女性の毅然とした態度が良かった。
兎も角、あの日本映画の『男は○ら○よ』が良いと言う方、こんな爺さんいたら、大変でしょ。
この表現だと、ヨーロッパでは賞取れないでしょうね。少なくとも!宗教観からヨーロッパては普通だと思う。先ずは、親族の二人が自殺している事に目を向けなければ駄目だ。そこが分かれば、彼女の行動が分かる。
日本の酪農映画の様に『子牛の誕生』て大団円を迎えるなんて臭い真似はしない。
一昨年のNO1だった。
追記
生き物と車を断捨離しなければ、自由に生きる事が出来ない。勿論、爺さんも。
ブレ無い単調さ・・・
酪農王国デンマーク、両親を亡くし叔父と暮らす若い女性クリスの牧場生活を只管、淡々と描写、セリフも少なくまるでドキュメンタリーのような映画だが、二人を気遣う周りの人々も温かい、ヒューマンドラマと言う点では昔の小津安二郎監督の作風を彷彿とさせるので日本でも東京国際映画祭のグランプリを受賞するなど受けたのでしょう。
感心するのは同じことの繰り返しをブレずに描き続ける作風、映画ならもっとドラスティックな事件とかロマンスを絡めて山谷を付けそうなものだが、迷いはするが芯の強い女性、クリスの生き様にリスペクトの念さえ起こさせるから恐れ入りました。
素晴らしい映画(ネタバレ)
エンドロールが始まって、ハッと気がつく。
最初から最後まで音は少なめだがエンドロールも一切音は出ない。
そして気がつく。つまり、毎日変わらぬ音の聞こえる日常を営むのが、この映画の結末だったのだと。
獣医への道はクリスが積極的に指向したわけではなく、ヨハネスがキッカケを作った。マイクとの出会いもクリスよりもマイクからの誘いがキッカケに乗ったのだった。
クリスが家を離れたくないのは自分達の牛のためではなく、叔父さんを理由に挙げる。
周りの人達が言うように、クリスの人生は叔父さんに縛られる必要はない。観客の中にもそう思う人は多いと思う。
でも、映画の結末はクリス側だ。
この映画の主題は、高齢化社会を含む現代社会の問題とも言える。昔であれば、ごく自然にマイクの実家のように4代も農家を引き継げる。
しかし、現代社会では難しい。優秀、有能な若者の選択を限定してしまっている。これが良いか悪いかは映画は言っていない。いや、華やかなシーンがないから、クリスも抜けたい気持ちはあるのかもしれない。
クリスがここから抜けない選択を取った事が描かれている。
或いはクリスはその選択に何の不満もないかもしれない。東京やコペンハーゲンのような大都市にいれば、公共交通機関でもみくちゃにされたり、スマホで時間を管理したり、人々と交流したり、身だしなみに気を遣ったりしないといけないが、クリスにはその方が苦痛なのかもしれない。
エンドロールが流れる直前の平和な日常が取り戻されたのを見て、観客は胸を撫で下ろすが、それで良かったのか、と考えさせられるのだろう。
音が情景を物語る作品でもある。
トースターのコイルの音が、タイマーのないトースターである事を物語る。車のシフトチェンジの音がマニュアル車で広大な大地を走る事を物語る。
一方で、マイクと景色を眺める時にも風が吹いたり、水鳥の大群が飛び交うが、風の音や鳥の声はせず、静寂が表現される。
ラジオは、物語が2018年のことである事を伝え、
デンマークの平原が美しいのも印象的だ。
デンマークは北極に近いので、夕食の後でも明るいのは白夜なのだろう。この映画はひと夏の日常であり、冬の厳しさは描かれていないことになる。
デンマークの美しい自然も描かれており、素晴らしい映画だと思う。
Warming!
とても静かな作品ですが、本当に心温まる作品です。
クリスと叔父さんはたぶんいろんな困難を乗り越えてきたんだろうけど、具体的なことは何も示されません。
でも2人のふるまいを見てるだけでそれが痛いほど分かるところがこの作品の素晴らしいところです!
人物描写ががものすごく繊細で、ところどころクスっとするユーモアも盛り込まれていて。こういう表現のできる作品て北欧独特のものなんですかね。
前半は淡々と2人の生活が描かれてますが、北欧独特の風景や酪農業の描写も美しくてぼくは飽きませんでした。
でもマイクの病院での一言はないだろー
最後、唐突にエンディングを迎えるので、えー?ってなりますが、その後に2人がどんな選択をしたのか、視聴者の想像を描きたてたのもぼくは好きです
見終わった後、自分の家族がものすごーく愛おしくなりました☺️
最優先事項
すデンマークの田舎の農村で、足の不自由な叔父と二人、酪農と麦作の農家を営む20代後半の女性の話。
あらすじには27歳とあるけれど、両親を亡くし14歳で叔父さんに引き取られ15年?言葉を交わさず共ナイスコンビネーションで日常生活を送る二人。
介助をしつつ働き続ける主人公と叔父さんのやり取りは、ちょっと口煩く心配性な娘と、好きな様に生きて貰いたいと願う父親という、本心で互いに想い合う本当の親子の様。
感情表現があまり得意ではなく、極端に感情が振れる主人公が、変化を恐れつつも、思いを行動に起こす方法を模索したり、それを察した叔父さんが背中を押したり、すっ惚けた様なやり取りを時々ぶっ込みつつみせられて笑ったり、もどかしくも胸がほんのり熱くなったり。
フラット、というか振り出しに戻る的な終わり方で、もう少し兆しでもみせてくれたらとは感じたけれど、欧州映画らしいといえばらしいのかな。
牛舎の牧草の上で電話をするシーンがなんだかわからないけれどお気に入り。
そして、モブキャラだけど猫のかわいさが神がかっていて、声が漏れそうになったw
静かで確かな愛情
舞台はデンマークの片田舎、茫洋とした景色が広がる静かで薄暗い町。展開するストーリーも実に静かだけれど、心が温かく締め付けられ、しばらく席を立てなかった。
序盤はクリスと叔父のつつましく単調な日々毎日がサイレント映画のように繰り返され、言葉の少なさから最初はクリスが生活に不満を持っているのかと思ったが、徐々にその生活と、何より叔父を愛していることがひしひしと伝わってくる。
そして、叔父さんもクリスを心から愛していることが静かな画面から溢れるように伝わり、その様子だけでぐっときてしまった。
中古の聴診器やヘアカットのくだりでは、温かく姪の背中を押す叔父さんと複雑ながらはしゃぐ気持ちを隠せないクリスの様子が特に愛おしい。
デートに付いて(連れて)行っちゃうところなんかは、全体的に重め雰囲気な分クスッと笑えてとても良かった。
愛しているからこそ単調な生活から送り出したい叔父(親)と、愛しているからこそ留まりたい姪(子ども)の関係は普遍的なテーマかもしれないが、その心の機微を鮮やかに描き出してくれていたと思う。
誰かの目線というのがあまりなく、常に引き気味のカメラワークも、ドキュメンタリーのようで作品の魅力を見事に閉じ込めていたように感じた。
他のキャラクターを含め、登場人物が皆温かいことがより顛末を切なくさせる。
ちなみに祖父母っ子の私は叔父が愛おしすぎて見るのがつらいまでありました。
ふらりと見た作品だったけど本当に良かった。何度でもじっくり味わいたいです。
とても好きな空間、そしてありがとう恵比寿ガーデンシネマ
主人公のクリスは農場を営む叔父と田舎で生活している。叔父は足が不自由であり半ばクリスは介護も担っている状況である。
なぜ叔父と暮らす事になったのかというとクリスが14歳の時に兄弟を失いそれを追う様に父親が自殺をし独り身になったところ叔父が引き取ってくれたそうだ。
その背景もおそらく作品が始まって30分くらい経ったくらいで叔父の知人の獣医がそのまた知人との会話で知る事となる。
この作品はクリスと叔父が必要以上に会話をしない為中々彼女らの情報が入ってこない。
ただしその描写がこの作品の最大の魅力でもある。
両者とも口数が少ないため、会話が一方通行であったり、時には問いかけに対して返事がない事も多々ある。
ただ次のシーンではその問いかけ通りの行動描写に移っており必要以上の言葉を発しなくても互いに理解し合いそして尊重しあっているのな伝わる。
またクリスの生活は毎日が決められた時間に、同じような行動を淡々と繰り返す日々である。
表情が変わらない為それらも序盤には不満があるようにも勝手に思ってしまったが、ストーリーが進むにつれて彼女自身がその生活を望み、そしてちょっとした変化に不満を覚えたりストレスを感じたりする姿が見受けられる。
もちろん今の生活を送る事で彼女自身他にもやりたい事を犠牲にしているのも見受けられたが、それをひっくるめて彼女は今の生活を望み、そして叔父を愛しているのが伝わる。
叔父も叔父でクリスに事細かくあれこれ言われ行動を制限され、時にはストレスに感じている所もあったがそんな口うるさいクリスの姿もひっくるめてクリスを愛し信頼しているのが伝わる。
この2人は言葉数は非常に少ないが互いに愛し信頼しあってるのがストーリーが進むに連れて感じ取れるのがこの作品の美しさでありとても魅了された。
この"静"なる空間を個人的にもとても好きな空間であり、その空間を大切に美しく描いてくれるこの作品は自然と好きな作品となってしまった。
この"静"なる空間は僕だけではなく日本人が好む空間ではないか。であれば自然と日本人ウケの良い作品になるのではないかと感じた。
クリスがここまで叔父を愛し、自らが犠牲になっても叔母に尽くすのは父親を失った時に、そして引き取られた時に余程親切にしてもらい嬉しい気持ちがあったからなのかな想像しながら観賞しそして作品が終わる。
エンドロールも音がなく静かに終わりとても温かい気持ちで劇場を後にすることができた。
改めて振り返ってもこの2人の関係性は素敵であり、とても憧れる関係である。ただこの関係性は余程の信頼関係がないと成り立たない関係でもある。だからこそ美しくそして魅力ある描写であった事が改めて感じる。
この作品を持って僕がよく利用する恵比寿ガーデンシネマの新作公開は最後となり、2月末にて一旦休館となる。再館の時期は現時点では未定であり、好きな劇場の一つのため寂しく思うが最後にこの様な素敵な作品を観ることができとても感謝の気持ちでいっぱいだ。
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