わたしの叔父さんのレビュー・感想・評価
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叔父さんタイミング悪すぎるよー
せっかくクリスが単独行動し始めたところだったのにねー。前より叔父さんベッタリになってしまった。多感なときに亡くした父親を投影してんでしょうよね。しかし叔父さんいい人すぎる。ヘアアイロンのくだりが素敵すぎる。周囲の人たちもみんな優しくていいじゃない。なんの事件もない静かな映画だけど、数年後を見たくなる。
素晴らしい映画(ネタバレ)
エンドロールが始まって、ハッと気がつく。
最初から最後まで音は少なめだがエンドロールも一切音は出ない。
そして気がつく。つまり、毎日変わらぬ音の聞こえる日常を営むのが、この映画の結末だったのだと。
獣医への道はクリスが積極的に指向したわけではなく、ヨハネスがキッカケを作った。マイクとの出会いもクリスよりもマイクからの誘いがキッカケに乗ったのだった。
クリスが家を離れたくないのは自分達の牛のためではなく、叔父さんを理由に挙げる。
周りの人達が言うように、クリスの人生は叔父さんに縛られる必要はない。観客の中にもそう思う人は多いと思う。
でも、映画の結末はクリス側だ。
この映画の主題は、高齢化社会を含む現代社会の問題とも言える。昔であれば、ごく自然にマイクの実家のように4代も農家を引き継げる。
しかし、現代社会では難しい。優秀、有能な若者の選択を限定してしまっている。これが良いか悪いかは映画は言っていない。いや、華やかなシーンがないから、クリスも抜けたい気持ちはあるのかもしれない。
クリスがここから抜けない選択を取った事が描かれている。
或いはクリスはその選択に何の不満もないかもしれない。東京やコペンハーゲンのような大都市にいれば、公共交通機関でもみくちゃにされたり、スマホで時間を管理したり、人々と交流したり、身だしなみに気を遣ったりしないといけないが、クリスにはその方が苦痛なのかもしれない。
エンドロールが流れる直前の平和な日常が取り戻されたのを見て、観客は胸を撫で下ろすが、それで良かったのか、と考えさせられるのだろう。
音が情景を物語る作品でもある。
トースターのコイルの音が、タイマーのないトースターである事を物語る。車のシフトチェンジの音がマニュアル車で広大な大地を走る事を物語る。
一方で、マイクと景色を眺める時にも風が吹いたり、水鳥の大群が飛び交うが、風の音や鳥の声はせず、静寂が表現される。
ラジオは、物語が2018年のことである事を伝え、
デンマークの平原が美しいのも印象的だ。
デンマークは北極に近いので、夕食の後でも明るいのは白夜なのだろう。この映画はひと夏の日常であり、冬の厳しさは描かれていないことになる。
デンマークの美しい自然も描かれており、素晴らしい映画だと思う。
説明的セリフがほぼないのが、日常のルーティンを表現している。それに...
わたしの幸せは…
見たことがないような映画だった。
デンマーク映画。だからではないだろう…
自国でも最初は上映館数は少なかったらしい。でしょうね。と思う。
27歳の未婚女性クリスと その叔父さんの静かな日常のルーティンを丁寧に細やかに映像でこちらに伝えて来る。二人の沈黙を埋めるかのように、TVからのニュースが流れている…音楽もなく、殆どセリフもない。最初はどうして二人なんだろう?と思っていると、次第に二人の関係が解って来る。
クリスは14歳で親を亡くした後、ずっと叔父さんと二人暮らしで、牧場を営んで暮らして来た…そして、ある時、叔父さんが脳卒中?で倒れて身体が不自由となり、クリスは叔父さんの着替えから食事の世話、牧場の仕事を甲斐甲斐しくこなして来たことがわかる。
そんなクリスに訪れる恋の?予感。デートに誘われるが、叔父さんも着いて来る…
獣医になりたいと思ってたクリスに獣医のヨハネスが本を貸してくれたり、牧場を離れた事がないクリスを都会の講演会に誘う。好意を寄せるマイクも、獣医も、クリスの幸せを願っているからこそ…広い世界を見せようとする…
叔父さんも、そうなのだ。クリスを自分の犠牲にしたくないのだ。マッサージ師を頼んだのも、デートに付き添ったのも、相手が相応しいかを確かめたかったのだ、と思う。クリスが自由になれるように…
でも…恐れていた事が起きる!それを機にクリスは獣医の夢も、恋も…潔く捨ててしまう!
そして、やがて…穏やかないつもの静寂の中で二人の生活が、いつものように繰り返される…
でも…いつもの静寂を埋めていた物が…
壊れる。
そこで 終わる…! え?
見終わって、あれ?何だったんだろう?
私のような思慮浅い人間は観ていけない映画だったかもしれない😨と焦った( ̄▽ ̄;)
その後 思い返し思ったのは この映画は 二人が築いて来た長い年月の内の ある数ヶ月?数週間?を切り取って私達に見せていただけなのだ。
そして、クリスと叔父さんの絆が、映画では描かれていない過去で、どんな風に育まれて来たかを想像する、させる映画なのだと思った。
周りがクリスの幸福を願っているのは解る。でも…
幸福を決めるのはクリス自身なのだ。
叔父さんは傷付き寂しかった子供のクリスを どんなに深く愛して来たのだろう。そして、クリスにとって叔父さんは たった一人の肉親であり、倒れる前の叔父さんは きっと逞しく頼り甲斐があり、優しい、かっこいいヒーローのような人物としてクリスには思えていたのかもしれないと思った。だから、クリスは叔父さんが大好きだったのだ。そう思う。
叔父さんは 決して外見が良いとは言えない。でも…その瞳は慈愛に満ちて、優しい。姪の初デートの為にヘアアイロンを買ったり、髪の毛をカットしてあげたり。誕生日に獣医に必要な聴診器をプレゼントしてくれたり…
きっと 叔父さんは ずっと昔から優しかったんだろう…。
クリスにとって 幸せとは…
ずっと叔父さんの傍に居て、
叔父さんを世話し、叔父さんと共に食べ、
叔父さんと共に仕事し、叔父さんを毎朝 起こす事。
だって…大好きな叔父さんだから!
恋よりも、夢よりも、
「わたしの叔父さん」が大切だから。
クリスの選択は仕方なくなんじゃない!
彼女が、自ら望んだ選択。
叔父さんも そんなクリスと またいつもの静かな毎日を送るのを 淡々と受け入れる。
この先 どうなるか分からないけど…
いいじゃないか….。彼女が幸せなら…
東京国際映画祭でグランプリを受賞したことで、デンマークで話題になり、上映館が何倍も増えたそうだ。
こういう作品を芸術作品というのかな?
ただ、心に何かを残す 不思議な余韻の有る映画だったのは確か…。
[ 追記 ]
レビューを書いてから、その後、じわじわと映画の良さが胸に来ています。
☆ 赤石商店 土蔵映画館にて
9/30鑑賞
あー疲れた
潔いラストシーン
冒頭10分位、セリフの無いシーンが続きます。まさに淡々とした日常とはこのことで、生活音、自然音のみ。
起床、朝食、仕事、夕食、食後、就寝。
何も考えずに、全く同じことを繰り返す、変化の無い生活。
なんか凄い映画が始まった感じ。
そして、叔父と姪の日常には、関係性から生じる「笑い」があるので、とても微笑ましくもあります。
叔父と姪が一緒に生活することになった背景や将来のことなど、観客にも漠然とした不安を与えながら、少しずつ生活に変化が見え始めます。
外的な刺激が、淡々とした日常に影響を与え始めることは、希望か不安か。
そして、こんなに潔いラストシーンは、なかなか無いです。そこで終わり⁉️
さらにエンドロールで、
立ち上がれなくなりました。
印象に残るシーンが多く、お気に入りの一作になりました😊
それでいいと思う
デンマークの酪農女子
小さい時に両親を亡くし叔父さんに引き取られたクリスは、20代後半になり、体が不自由になった叔父とデンマークの田舎で酪農をしながら2人で暮らしていた。
また、彼女には、獣医になるという夢があり、勉強しながら時々獣医のヨハネスを手伝いをしていた。
そんなある時、教会で出会った青年マイクからデートに誘われ、叔父と食事に行ったり映画を観に行ったりした。
ある日、ヨハネスからコペンハーゲンでの学会に参加しないか誘われ付いて行ってる時に叔父が倒れ・・・という話。
デンマークの酪農の様子や、ラジオから流れる世界のニュースが新鮮だった。
自分の夢、叔父の心配、恋、などが絡まり、クリスの心の動きが感じられる良い作品だった。
淡々と過ごす生活
無音がもたらす効果
【淡々とした日常の中、少しの変化、心の機微の変化を的確に捉えた、静的作品。人生における”自立”とは、“共存”とは何かを観る側に静かに問いかけてくる作品でもある。】
ー デンマークの静かな農村地帯で、クリス(イェデ・スナゴー)は、下半身がやや不自由な老いた叔父(ペーダ・ハンセン・テューセン)と牛の世話をする日々。時に、夜中に子牛の出産に立ち会ったりするが、淡々とした生活を送る二人。クリスは、幼い頃に家族を亡くし(父は自死)、それ以来、叔父と暮らして来たのだ。ー
■感想<Caution! 内容に触れています。>
・クリスと叔父さんの毎朝の朝食を繰り返し描いたシーンが印象的である。
TVから流れてくる世界情勢に耳を傾ける訳でもなく、二人で語り合う訳でもなく、黙々と食事をする二人の姿。
クリスは、”数独”をしながら、朝食を摂っている・・。
定点観測のようである・・。
ー 台詞も極小で、派手な音楽が流れる訳でもない。何事もない日常。けれど、豊饒な日常の風景だと、私は思う。ー
・そんなクリスが、教会で出会ったマイクに合唱に誘われる所から、少しだけ、物語は動き始める・・。
マイクにデートに誘われたクリス。
はにかんだ表情でOKし、クリスは髪を整え、レストランで二人で食事・・、と思ったら、ナント!叔父さんが付いてきている。
そして、クリスとマイクは差し向かいに座り、叔父さんは同じテーブルの通路側に”無理やり”席を作って座る・・。
ー 何だか、ホンワカとオカシイシーン。初デートについて行かないでしょう、叔父さん!。
だが、これが違和感がないのである・・。そして、マイクは獣医師になりたいが、親に認めてもらえない・・と愚痴をこぼす。
そして、3人は別れ際に自然に握手を交わす・・。そして、車から飛び出して来たクリスはマイクにハグする・・。良いシーンだなあ・・。ー
・獣医師、ヨハネスの存在も絶妙である。
マイクの影響で、獣医師に興味を持ったクリスとの関係性が、仄かなユーモラスを交えて描かれる。
<だが、ヨハネスの講演について行ったクリスは定期的な確認の電話に出ない叔父さんの事が心配になり・・。
人生における”自立”とは、“共存”とは何であるという事を、観る側に静かに問いかけてくる静的で、詩的な作品である。
<2021年4月18日 刈谷日劇にて観賞>
■驚いた事
・ペーダ・ハンセン・テューセンは、イェデ・スナゴーの実の叔父さんであるという事。そして、役者ではないという事。
成程、二人の絶妙なコンビネーションは筋金入りの本物だったのだね。
とても良かった
土の香りがする作品
肉親の存在だけが唯一の生きる拠り所というのはなんとも淋しい限りだ。しかしそれは傍から見た他人の勝手な言い草である。人生に何が大切なのか、本人にしか決められない。
本作品の主人公クリスは、おそらくただひとりの肉親である叔父さんと農場で暮らしている。牛の世話と牛舎の維持に追われる日々は、単調に見えるかもしれないが、微妙な変化に富んでいる。時には新たな命が生まれ希望が増える。変化は確実な時の流れを感じさせる。年老いていく叔父さんを見て、過ぎていく自分の時間を振り返る。自分の将来、自分の恋愛。クリスはつらい思いをした。男は皆いなくなるだけだ。種付けしたいならするがいい。
自分自身が年老いていく前に可能性を考える。首都コペンハーゲンでの時間。それは農場だけではなく叔父さんからも離れた時間だ。クリスの選択。都会での根無し草の生活よりも、他からは頼りなく単調に見えるかもしれないが、叔父さんと農場で生きる。少なくとも叔父さんは自分からいなくなったりしない。
牛の鳴き声が聞こえ、牧草の青臭さと牛のフンのムッとする臭いが漂ってきそうだ。大地に根ざした人生。土の香りがする作品である。
映像美で語る家族の物語
デンマークの農村で家畜の世話をしながら体の不自由な叔父と暮らす若き女性クリス。二人の淡々とした日常の暮らしをとらえる序盤。
クリスは幼いときに両親を亡くしたようで、叔父さんが唯一の肉親なのだろう。
獣医になるという夢や胸がときめく男性との出会いがあるものの、叔父さんのことをほっておけない。叔父さん優先のクリスにイラつく瞬間があったのだが。
これは家族の物語だった。育ててくれた叔父さんは正に父親だった。本物の家族愛がありました。
実はチラシを見て絶対に観ようと思った作品。北欧独特のあやうい光に包まれた田舎の風景・空・海がえも言われぬ美しい映像として刻まれた。
ちなみに監督・脚本のフラレ・ピーダセンは小津安二郎を師と仰ぐとのこと。ここには笠智衆さん、原節子さんがいました。
愛しい気持ち
あるがままの世界を美しく描いた映画
Warming!
とても静かな作品ですが、本当に心温まる作品です。
クリスと叔父さんはたぶんいろんな困難を乗り越えてきたんだろうけど、具体的なことは何も示されません。
でも2人のふるまいを見てるだけでそれが痛いほど分かるところがこの作品の素晴らしいところです!
人物描写ががものすごく繊細で、ところどころクスっとするユーモアも盛り込まれていて。こういう表現のできる作品て北欧独特のものなんですかね。
前半は淡々と2人の生活が描かれてますが、北欧独特の風景や酪農業の描写も美しくてぼくは飽きませんでした。
でもマイクの病院での一言はないだろー
最後、唐突にエンディングを迎えるので、えー?ってなりますが、その後に2人がどんな選択をしたのか、視聴者の想像を描きたてたのもぼくは好きです
見終わった後、自分の家族がものすごーく愛おしくなりました☺️
ふたりの ほどよい バランス
.
今年 映画館で 最初に観た映画。
.
音楽は 一切なし。
ノスタルジーな演出もなく、
デンマークの 小さな村に住む
人々の営みを
まるで ドキュメンタリーかのように
リアルに 映し出した作品。
あたりまえの毎日を
急に奪われる 恐怖を知っているから
守りたい 今がある。
何よりも 大切なもの。
心の拠り所
それが無意識であろうとも
何気ない日常は
かけがえのないもの
その人にあった居場所
賑やかさも 色彩も
限りなく抑えられた、
映画。
人間同士の関わり方ってそんなもんだな。
台詞も少ないし、起伏もなく、淡々と映し出される叔父と姪の生活。
かかりつけの獣医や、新しく出会った若者が、 そんな生活を心配し変化をもたらそうと、
いくら試みようとも、さざ波程度で大きな波は起こらず。
みんな良い人たちなんだけどね。
なるほど、なるほど。
そうだよな…周りが何を言おうと、二人の軸はもうぶれないんだろうな…。
どちらかが発信でないと。
そんなもんだな。
現に、自分の周りでも、こうすりゃいいのにって思うことあるし、
意見してみるけど、結局、変わらないし、時に気分を害させてしまう…。
他者が長い暮らしの中で築いてきた価値観だからな。
そっか…解ったよ。
人間同士の関わり方ってそんなもんだな。
画が小津安二郎っぽいな…って思ったら、
監督がリスペクトしているそうで、そういうの嬉しい。
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