悪なき殺人のレビュー・感想・評価
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ありふれた5人の、ありえない事件
奇妙な偶然とつながりにより、思いもよらない人生の結末を辿る5人の男女。各々の環境やそこで起きる夫婦関係や振り込め詐欺など、現実問題としてよく俎上にのりそうな出来事がうまく絡み合い、実際に起こりえなさそうでいて、起こりそうだとも思わせる。
とはいえ、死体に性的興奮を覚えることを自覚してしまう男が一連の発端なので、その点だけはいかにもフィクションめいている。
一応、騙された田舎者の男が詐欺グループと直接対峙し、奇妙に絡まった糸を理解するのですっきりはするが、もしかしたらこの糸をほぐさないままの方が、映画的には面白かったのかも。
最後、始まりの場所に降り立つ女は、死んだ女の穴埋め。運命の輪は閉じて終わる。うまい。しかし実際の未解決事件は、案外こういった奇妙な偶然で起きているのかもしれないと思うと、怖い。
坂道を転げるかのよう
最初は小さい悪事が坂道を転げるかの様にそれぞれの人生を大きく左右する。
人の思い込みの怖さを上手く繋ぎ合わせ、1人の女性の失踪の真相を描いてます。ただ失踪した女性を捜査する警察の視点はなく、関わる5人の視点より描く物語。
キャンパスをいろいろな色(視点)で塗ることで完成させる絵の様でした。また物語は淡々と進むので好みが分かれると思いますが私は好きな感じでした。
ただ日本語タイトルがこの物語に合ってるのかは疑問ですが。
もう少し違ったタイトルの方が良かった気がします。
「よこしまな動機」みたいな。
輪舞(ロンド)の形式で展開する、「誰も幸せになれない」歪んだ愛のフーガ(遁走曲)。
雪に覆われた片田舎を舞台にとる、欲望に歪んだ人間が織り成すサスペンスといえば、ぱっと『シンプル・プラン』『ファーゴ』、それから『ヘイトフルエイト』あたりが思い浮かぶ。
ただし、この三作は、なぜかいずれも「カネ」にまつわる欲望を描いた物語だ。
雪の農村が舞台のフレンチ・ミステリといえば、ちょっと古いが『燃えつきた納屋』なんてのもあった。
シモーヌ・シニョレのキモったま婆さんが、イケメン判事のアラン・ドロンと対峙するアレだ。
あちらのテーマは、「家族」と「村落」だった。
今回の『悪なき殺人』のテーマは、「愛」である。
より正確にいえば、恋愛、性愛のたぐいの「愛」である。
世の中から必ずしも肯定的に扱われない異形の愛。
浮気、ネクロフィリア、レズビアン、ネット恋愛(相手がじつはネカマ)。
本作は、これらの「報われない愛」を楽章のように配したうえで、
(AB)-(BC)-(CD)-(DE)といった感じで、登場人物を順繰りに入れ替えていく。
何人もの視点で物語を語り直して、次第に真相が明らかになっていく(最近だと出色だったのは『フロッグ』とか)パターンのバリエーションである。
いわば、1950年にマックス・オフュルス(および1964年のリメイクでロジェ・ヴァディム)が『輪舞』で試したような、「ロンド」の舞踏のごとく相手が順番に切り替わって、次のフェイズに進んでいく構成だ(最後は一応円環を成す)。
まずは、アリスとジョゼフ(浮気)。
それからジョゼフとエヴリーヌの死体(ネクロフィリア)。
エヴリーヌとマリオン(レズビアン)。
マリオンとミシェル(ネット恋愛)。
で、アリスとミシェルは夫婦で、一応話はひとめぐりしている。
ここにアルマンというネカマ詐欺師が絡んで、「エヴリーヌの死」という特異点が発生する。
だれがエヴリーヌを殺したのか?
フーガのような構成をとりながら、この謎を明かしていくのが本作の主眼である。
総じて面白い映画だったし、脚本の精度は高い。
とにかく、なかなか先が読めないし、伏線の出し入れが巧い。
前の視点の話で残った疑問が、絶妙のタイミングで明かされていく。
日本でいえば、泡坂妻夫や連城三紀彦あたりのよくできた小説でも読んでいるようだ。
そもそも、原作をほぼ忠実に映画化している気配があって、もとの小説もよくできているのだろう。
いっぽうで、この美しいロンド構図を成立させたうえで、殺人事件の真相が意外な形で明らかになるように組み上げることを最優先にして物語を構築しているため、結果としてかなりの「偶然」が導入されているのも確かだ。
で、それを「人間は、『偶然』には勝てない――」と謳うことで、まるごと根底から正当化するという、なかなか小狡い戦略をとっている(笑)。
要するに、たとえば謎解きミステリだと、「AとBが実は知り合い」みたいな「偶然」があまりに複数回重なってくると、それは結局「ありえない話」になるし、ひいては「フェアプレイで推理することが不可能な駄作」の烙印を押されてしまう。
ところが、本作では「偶然の連鎖がこんな恐ろしい事態を招来したんですよ」と、最初から思い切り「居直る」ことで、いくつもの偶然が重なる物語をわれわれに「あり」だと認めさせようとするのだ。
結果として本作は、イレコ細工のような複雑で巧緻な脚本を織り上げているにもかかわらず、意外なほどに「謎が解ける瞬間のミステリの醍醐味」は希薄である。
たしかに「ああ、そうだったのか」「あれが伏線だったのか」と感心させられるシーンは多い。
でも、その秘密の暴露は、「犯人が仕掛けた隠蔽工作の打破」によって得られるものではない。
秘密はあくまで「監督によって隠蔽されたもの」であって、見せ方として「真相を明かす順番を加減」しているだけなのだ。
謎が解ける瞬間というのは、それを知られると都合の悪い人によって仕掛けられた狡知なトリックがあるからこそ、解けたときに「世界が反転する」ような快感が脳天を突き抜けるものだ。
それが今回のように、各人が考えなしに衝動的に動いているだけの話を「語り口」だけで面白く見せている場合は、観客はナラティヴに引きずりまわされる面白さはあっても、謎が明かされたからといって「世界が反転する」快感には見舞われない、ということなのだろう。
冒頭の悲鳴の正体が背中にかつがれた山羊(鹿? 羚羊?)だったり(かなり面白い絵柄だ)、ネット恋愛をしているオッサンの外見やチャットの文体が去年観た『SNS 少女たちの10日間』に出てきたモノホンの変態たちとそっくりだったりと、監督のいかしたセンスは随所で発揮されている。
テーマである「愛」にしても、さまざまな偶然の連鎖のなかで、判で押したように「全員が不幸になっていく」あたり、なかなかシニカルというか、ビターな感覚をもった監督さんだ。
ほんと、みんなそこそこ一生懸命生きてるだけなのに、びっくりするくらい浮かばれてないよなあ(笑)。とくに、ラスト近くのミシェルとアルマンの絡みは、ちょっとパトリシア・ハイスミスの小説みたいで、素晴らしい余韻を残した。
そういや一点、ちょっと怖かったんですが。
実は僕はこの映画をビョルン・アンドレセンのドキュメンタリー映画『世界で一番美しい少年』とハシゴして観たのだが、前の映画で「ビョルンの少年時代」として登場したのとたぶんおなじ写真が、この映画のなかでも過去の写真としてしれっと出てきたような……。
ちょっと衝撃的すぎてにわかには信じがたいのだが、極端に左に寄って立つ母子の不穏な写真なので、おそらく見間違いじゃない気がするんだけど……もしかして観ながらうたた寝して、ごっちゃになるような悪夢でも見たかなあ? パンフで確認したくても売り切れだったし。
これを確かめるだけの目的で、ぜひCS放送されたらもう一度録画してどっちも見直さないと思っております(笑)。
最後の最後に、余計な事をやってしまい後悔した事はありませんか?的な。
最後が、ぶっ壊しに近い蛇足。だと思うんですよね……
Only the Animals が英題。動物(達)だけが知っている真実。みたいな意味でしょうか?
死体のありかを知っていた犬。アマンディーヌが使っていたアバター(アイコン)も動物。エヴリーヌが持っていた動物のキーホルダー。などなど。秘密を知っていたのは動物さんでした。みたいな?で、どんな秘密も必然も、偶然には勝てない、と。
コートジボワールから始まり、フランス中部の片田舎、パリなどなど。バラバラに登場してくる人物たちが、どこでどんな偶然でつながって行って、殺人に発展するのか?と言う観衆の興味には、ちゃっかり応えてくれます。それはそれで良いとしてですね。でも、正直言うと最後の蛇足感も半端なくw
「アリス」⇒「ジョゼフ」⇒「マリオン」⇒「アマンディーヌ」⇒「ミシェル」と言う登場人物のリレーです。「アリス」でネタを貼り「ジョゼフ」で回収するも「この死体はなんやねん?」の謎を残し。「マリオン」で更にネタを張って、「アマンディーヌ」と「ミシェル」で回収。と言う構成の面白さの中に、ジョゼフと言う猟奇的変人の不可解な行動があったり、ストーカーのレズがあったり、大陸をまたぐサイバー犯罪があったりと、この動的な展開にはワクワク。雪景色の田舎の密室感、コートジボワールの貧困生活の閉塞感、モービルの中のマリオン、と言う「閉じている」個々の要素。この対比が、結構面白かったです。
って事で。最後が、むっちゃ残念。
あれが無ければ「偶然」と言うか、つながりの交差点は、一点に集約できてたのにw
ぐるりと繋がっていたのでした
映画が始まったとたん、なんとも言えない叫び声がしたので、あぁ、確か女性が殺される話しだったなあと思いきや、自転車に乗る男の後ろ姿には、ヤギみたいな動物を背負っていて「キェ〜ッ」って鳴いてるし、正体はコレか。
映画のポスターにもなっていたけど、別の男が背負っていたのも殺された女性だった。
寒々しいフランスの雪景色の農村と、暑苦しい夏の不衛生なコートジボワールの街並み。
5000キロも離れているけど、SNSならすぐそこ。
ミシェルがネットの女性と思い込んだマリオンを見つけて、「やった!会いに来てくれた!」と思い、そりゃもうウッへーてな感じで、今まで無愛想だった妻に車の中で、キスをする。妻のアリスも「え?何を今さら、ど、ど、どうして?」みたいな感じで受け入れる感じが滑稽でした。
ラストシーンも、ああ!なるほど!って、なんだかストンとうまく繋がって◎
暑い国から来たアルマンの元恋人モニークが、車から降りてあまりの寒さに衿を立てて街を見回す。なんとなく薄ら寒い空気が漂っていたのかも、、、
エンドロールで流れた男女の歌の雰囲気も良かったです。
無いものを愛させる。
フランスの雪山の中の田舎で女性が行方不明となる事件が発生。その事件の真相が様々な登場人物の視点で明かされていく話。
事件を比較的中立に見る最初のアリスの視点ではダークなサスペンスのトーン。『ファーゴ』とか『ウインドリバー』のような社会派サスペンスなのかと思ったらコメディでした。
でもアリスの不倫相手ジョゼフの視点になると死体を愛する変質者映画になるし、被害者と関係を持つ少女の視点になると年の差がある女性同士の上手くいかない恋愛映画になるし、アリスの旦那マリオンの視点では急にコメディ(笑)(これは完全に今年見た『SNS 少女たちの7日間』の犯罪バージョンではと思ったね)
全く考えてることも行動も違う登場人物達には共通点もあって、皆どんな形であれ、誰かを愛しているということ。そして皆"無いものを愛している"。
アリスの場合は、全く見当違いな推理をしているように、旦那と不倫相手が自分のために争っているという状況に酔っていてその自分を1番愛してそう。ジョゼフは死体の人物を全く知らないのに勝手に空想で恋してるし、被害者を若さゆえに愛しすぎる少女もまた相手の気持ちより自分の愛する気持ちが全て。
"無いものを愛した"最大級がマリオンなのだが、これ写真が美人じゃなくておっぱいも見せてなくてもここまでするのだろうか。この映画から学んだのは本当の自分を愛してもらうより、幻想の自分を愛させるのが勝ちなんだなと。
真相が徐々に解き明かされていくのも爽快で、ここからは個人的などうでも良い話なのだが、最近「真犯人フラグ」で伏線ばっか散りばめられてフラストレーション溜まってたし、あな番も全然伏線回収って感じの映画じゃなかったので、ここでその溜まったものが解消された(笑)
アンジャッシュのコントか
途中までは、一癖ある登場人物のキャラ、そして彼らの複雑な関係性がなかなか良くて、話がどう繋がるのだろうとスリルがあった。けど、ミシェルがヒッチハイクをぶっちぎったシーンの時に、「まさかメインキャスト同士(8人)が濃厚に繋がって完結というオチじゃないよな」と思ったら、そのまさかの展開。アンジャッシュのコントを2時間見せられた気分で、残念ながら自分の好みの作品ではなかった。
愛って何なんだろう?
まずオープニングの画が美しく心を奪われる(水色の車が行き交う町を同じく水色のTシャツを着て自転車を走らせるロレックス)。サヌーの住むビルの壁紙はチェック柄で珍しいなーと上映開始早々にしてストーリー外の部分に興味津々。
ストーリーはと言うと序盤から謎が散りばめられていて今後の展開に期待は高まる一方。しかもチャプターが変わる度に謎が増えてきて、自分の予想とその答え合わせをしながらまるで映画と追いかけっこしているように鑑賞。途中、サヌーが出会い系詐欺を成功させるコツをスピリチュアルに真顔でアドバイスするシーンはコントかよと内心笑っていましたが、「偶然には勝てない」という言葉で状況は一転。それ以降まさにその言葉通りになっていき、「脚本にやられた」という感じでした。ミシェルとマリオンのやり取りはお互い「次はどんな一手で来るのか?」という緊張感の高まりを加速させ、チャットというコミュニケーション方法の特性を上手く活かしている。
より個人的な感想になりますが、ミシェルには他人事ではない虚しさを感じた。綺麗な女性と親密な関係になると冷静でいられない心理状況は痛いほどわかる(この場合実際は男なのですが)。ミシェルに限らずどの登場人物にも愛が欠落しているわけですが、じゃあ自分は愛を知っているのか?と自問自答するとコレというモノが体感的になく、自分も彼らと同じなのだなとしみじみ思った。2021年は「これが愛なのかな?」と思える日が来ることを夢見るのでした。
最後に余談的な感想ですが、マリオンとエヴリーヌが身体を重ねるシーンはエロを通り越して美しく感じました。ミステリーを楽しむだけでなく様々な気付きを得られた映画体験となりました。
ヴァレリア・ブルーニただ好き
見ようかどうか迷っていたのだが、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが出ていると知って、背中を押された。フランソワ・オゾンの映画で初めて知ってから何本か見てきたが、この映画出演時には彼女も早55歳。これからは配役の傾向も変わってくるんだろうなとは思う。
登場人物たちそれぞれの視点で各章つないでいく構成は良いが、最後の“アマンディーヌ”のパートが、(全体のネタばらしもあるからいたし方ないのかもしれないが)長いしダレる。殺人に至るまでの錯綜した因子の組み立て方はなかなかうまいと思った。複数視点と言えば、同じテデスキさんが出ている「人間の値打ち」も似たような作りの映画だった。
邦題は意味不明。“悪”がないわけないし。原題は最初の方で、ジョゼフについてアリスが言及した「動物だけを話相手にしている」に由来しているのかと私は解釈したが…?
構成が良かった。
・冒頭のシカ?は何だったんだろうと思った。
・詐欺?のチャットで使った画像の人物が実際に目の前に現れるっていうのが、とても面白かった。
・マリオンの画像や動画はどういうとこから見つけたのかなぁと思った。ウェイターじゃなくて娼婦だったのかなぁ。
・ミシェルがアフリカ?に直接会いに行って怒りをぶつけるのが面白かった。マリオンもだけど行動力が皆凄い。最後、チャットしてきてのは誰だったのかな、と思った。
・アフリカ?の暮らしの栄枯盛衰の感じがすっごい切なかった。今も好きな前妻が外国の金持ちに囲われてる?のも、絶望的な気持ちになるなぁと思った。ラスト、マリアンの夫がフランスの家に連れてきてたとこで幕が降りたのが、えっ?ここで?と思った。
・皆、成就しない片思いの果てって感じと冬の景色も相まって寂しくなった。両思い以外に片思いって何であるんだろう、と思った。
・各チャプターの構成がとても良かった。因果関係がわかった時、なんかスカッとした。特にジョゼフとミシェルの感情の乱れが面白かった。
簡潔にして完結。
他の方が十分にレビューしているので、主観的感想と疑問で。
ポスターが姥捨山やん。
死体なき殺人事件?死んだおばさんは誰なの?
ヤギを飼ってるジョセフと牛を飼ってるミッシェル、なにかの隠喩かな?
いきなりのフリン。それと、目が合ってのレズビアンの関係になるまでの早いこと。これはフランスだから?日本人のおっさんには分からない感覚だなあ。
ネカマには注意。特に写真や動画を送ってきてお金の話を持ち出すやつ。寂しいおっさんが簡単に釣れる。
マリオンと写真の女が私の目には同じには見えなかったけど、可愛かったのにやってることがペケペケ。
死んだおばさんの犬はどこへ?
ジョセフが身を投げた穴は?
最後のチャットの相手はアルマンなのか?
大筋では伏線回収がきちんとされて後味のいいサスペンスホラーでしたね。
マリオンを演じたナディアテレスヴィッツは可愛かった。
【優れた脚本と設定。ワンシーンを複数の人物の視点から描き出し、偶然の積み重ねで必然的に人を殺めてしまうスタイルに魅入られる作品。シニカル極まりないラストにも唸らされた作品である。】
ー 舞台はフランスの寒村。吹雪の夜、”富豪の夫”を持つエヴリーヌ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)が行方不明になり、翌朝遺体で発見される。
エヴリーヌが、夫の別荘に行く途中で出会ったマリオン(ナディア・テレスキウィッツ:東京国際映画祭で、最優秀女優賞受賞)と別荘で愛し合った後、彼女はマリオンを”一夜限り”と言って別れるが、マリオンは別れがたく、彼女を追って行く・・。-
◆感想
1.今作が秀逸なのは、舞台が吹雪舞うフランスの寒村が舞台のスケール的には狭い範囲の物語と思わせながら、後半描かれる現場から5000キロメートル離れたコートジボアールでインターネットを使って、世界中で詐欺を仕掛ける若者グループが絡んで来るという、設定の秀逸さである。
更に、物語は時系列ではなく、主たる出演者5人の視点で描き出されている点である。
2.フランスでは、殺害された女性を発見した孤独な男ジョゼフ(ダミアン・ボナール)と、彼を気遣い肉体関係になるアリス(ローラ・カルミー)の姿。
そして、インターネットの嵌るアリスの夫、農場主ミシェル(ドゥニ・メノーシュ:「ジュリアン」で狂気の父を演じた姿は忘れ難い)の姿が描かれる。
ー 二人は夫婦だが、恋愛関係が残っているとは思えない・・。ー
3.一方、コートジボアールでは、アマンディーヌ(マリオンの写真を利用している)を語るアルマンが、ミシェルと、チャットをしながら巧妙に金を巻き上げて行く姿が描かれる。
- こういう話は、嘘だろう・・、と思っていたのだが、結構あるらしい。そして、アルマンは前から気があった”フランス人の富豪の夫”を持つモニークに入れあげていく・・。-
4.アマンディーヌに金を送金し続けるミシェルが”偶然”見かけたマリオン。マリオンと言い争うエヴリーヌを見たミシェルは、マリオンが仮宿にしているトレーラーハウスを出た彼女を追って、凶行に及んでしまう・・。
<「偶然の連鎖」が惹き起こした必然的な殺人。
そして、殺された”富豪の夫”を持つエヴリーヌの後釜にやって来た”フランス人の富豪の夫”を持つモニークと娘が、エヴリーヌが滞在していた別荘にやって来るシーンのシニカルな事。
重ねて書くが、優れた脚本と設定に唸らされた作品である。>
けっこうよかった
点と点が線になっていく感じが面白いのだけど、最終的に黒人の女の子が、被害者の旦那の愛人であの家に来るのはちょっと話ができすぎた。全体的にストーリーがダイナミックで面白い。また、フランスの山奥の酪農での暮らしぶりがリアルに感じられる。
アフリカの特殊詐欺集団が、大金を得て散財している様子がとてもピュアだ。黒魔術で偶然を司るのも面白い。だからこそ、黒人の彼女がフランスに行くのがしらける。
ネカマに熱を上げる、主人公の旦那さんが哀れ。
原題 動物だけが知っている
原題 動物だけが知っている
とある場所で殺人事件らしき事が起き、関係する何人かの男女の事件前後が描かれてゆく。
最後にこの事件の真相が明かされるのだが、その真相を知る者は無く、彼らの近くに居た家畜やペットだけがその真実を見ていた・・・
と言うお話。
ん?いや、動物以外にも真実を目撃した者が居るじゃないですか。
そう、私たち客ですよ。
つまりは、この映画を見て、この事件の真相を知っている私達もペットや家畜なのだ!
と言う社会性とファンキーなメッセージを込めた深みの有る一作。
って、やかましいわ!wwwwwwww
ラストはゾクッときた
ラストで最後のピースが埋まったとき、ゾクッときた。死体を偏愛するジョゼフの行動は、ちょっと無理があるから割と冷めた目で見ていたんだけど、バシッと決まったままエンドロールが流れる作品が好みだから結果オーライかな。
パズルを完成させるために形が合わないピースの形を変えた不自然さはあるが、国際ロマンス詐欺もからめて偶然が必然に変えていく手品は見事だと思う。黒魔術師が「愛とは、無いもの与えること。快楽とは、在るものを与えること」と語っていたのが印象に残った。
一方的に愛を求めたミシェル、アリス、マリオンとは対照的に打算的・現実的な生き方をするアルマンの元恋人モニークが幸せを掴む。現実はそうなんだよね。
予測不能
冷え切った会話、寂しさを埋めようと温もりを求める、寒々とした白い世界、吹雪の夜…。
虚しさがまとわりつく。
人の寂しさを埋めるものについて…思いを巡らせている。
※ポスター、あの場面だったとは。
映画館での鑑賞
タイトルなし
Filmarksオンライン試写会にて鑑賞
2019年の東京国際映画祭で公開された時から気になっていたので、当選は嬉しい限り。
その時は「動物だけが知っている」という邦題だったが、このままの方が良かったのではないか。
登場人物それぞれの視点で真実が炙り出されていく構成は最近だと「最後の決闘裁判」があるが、この悪なき~の方がより多視点の構成が功を奏している。
有るものを与えるのが快楽
無いものを与えるのが愛
という劇中の言葉がキーワードになっていて、この映画の登場人物それぞれが愛に飢えている。愛を渇望し、誰かが行動を起こすと、連鎖的に偶然が重なり、悲劇が起きる。映画として観ていると悲しいものがあるが、世の中の人間模様も端的に表せばこれと大差ないのではないか。
見応えがあったが目につく部分も少なくない。ポスターにも写っている男性ジョセフの描写は正直イマイチ。病んでいる人という設定の大枠だけしか観客には読み取ることができない。折角魅力的なキャラクターなのに、物語の辻褄を合わせるためだけの存在となってしまっている。
そして肝心の殺人のシーンもなんだかリアリティに欠ける。映画はリアリティが全てな訳ではないが、説得力は大事だ。
果たしてあんな軽率に事を起こすだろうか。
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